演奏は人のためにしかならない ~バジル先生の講座を見学して~

昨日は午後からアシスタントという名目でバジル先生のレッスンを見学しに、山梨県立谷村工業高校へ行ってきました。
部員はわずか3人。しかも統廃合の関係で最後の3年生だけ。そのうちの一人がアレクサンダーテクニークに興味をもっていて顧問の先生を動かし、今回のバジル先生の出張レッスンがかなったそうです。すごい熱意だと思うし、それで動いた先生もとても行動力があると思うし、生徒の「何とか上手くなりたい」という気持ちと、先生の「何とかしてあげたい」という気持ちがかみあっていて、いい関係がつくれている部活なのだなと感じました。
レッスンはゲームで頭と脊椎の関係を確認してから、個々の悩みに応じた形での公開個人レッスン方式という贅沢な2時間となりました。というわけで、今日のブログはその備忘録です。
1.やりたいこと、教えてほしいこと
初めに一人ずつ、今日やりたいこと、教えてほしいこと、教えてもらえると思ったことを出してもらいました。
すると、「力みのない吹き方」と「人の前に出ても緊張しないで吹くにはどうすればいいか」という2つのことがあがりました。
これに対してバジル先生は、
「人の前に出て吹くのは誰でも緊張するよ。でも、緊張してもいいパフォーマンスができるようにするにはどうすればいかということを考えていこう」
とおっしゃいました。
どうしても取り除けない、考えても無理なことは素直に受け入れて、その上で納得のいくパフォーマンスができるようにするために何をすればよいのかを考えること。改めて大切な考え方だなと思いました。
2.ウォームアップ
下図のように、左手の親指と人差し指でわっかをつくり、相手のわっかの中にテンポに合わせて右手の人差し指を入れるというゲームをしてみました。

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はじめ「1、2、3、入れる」くらいのテンポではそんなに慌てることはなかったのですが、「1、2、入れる」「1、入れる」「入れる、入れる」のようにだんだんテンポが速くなってくると、やりづらくなってきて(逆に遅い方がやりづらいという意見もありました)、上手く動かなくなっていきます。
その時、自分の体はどうなっているかを観察してみます。
すると、上手く動かなくなったときは、頭と首が固まった状態になってしまうことが傍から見ていてもわかりました。頭と脊椎が固まってしまうと、全体の動作に影響が出てしまうということをゲーム感覚で学べるいい方法だなと思いました
3.アクティビティ
①どうしたらいい姿勢になるか?(Bsx)
・自然にマウスピースが口の中に入ってくる高さになるように、エンドピンやストラップの長さを調整してあげる。
・口がマウスピースに向かっていくのではなく、マウスピースを口に持ってくる、と考える。
⇒息の吸い加減、腕の使い方はどうなっているかを観察する。
⇒地面に接する楽器は、楽器自身の高さがかなり影響する。
・「体はひねっていいもの」と考える。
⇒上体のひねりのみで他に力を入れずとも鳴らせる。
②力んで吹きづらい(Asx、Tsx)
・譜面台の高さ、角度、距離が合っていなくて、近くによらないと目がピントを合わせるのが難しい状態になっていた。そのため、体全体が縮こまってしまっていた。
⇒今日一番吹きやすいセッティングはどれかをいつも探ってみることが大切。
・息は思っているよりも思い切り出してもいい
⇒顎を開けて、「頭と首、背骨全体が動けて」、マウスピースを口に運んできて、吹いてみる。
・体のどこがどのように動くかを知っておくこと
⇒体の可動性を確認していく
  →無理のない範囲で、頭を前後左右上下に動かす。
    このとき、目をリードに使うといい。
  →足首、ひざ、股関節がどのように動くことができるかを確認する。
③立っては吹けるのに、座ると吹きづらい(Asx)
・座り方にミソがある=腰を使うわけではない。
⇒足やお尻の筋肉で座ってあげる。
⇒おしりの方向に斜め後ろと考えると固まりやすい。
④吹いているとだんだん腰が痛くなる(Asx)
・(その子の場合)首を傾けているのが原因のように見える
⇒首を「傾ける」から「ひねる」という動作に変えることで解決。
⑤タンギングが上手くできない(TSx)
⇒舌を強くつくというよりも、舌を離すための圧力を増して、音を大きくするつもりで吹いた方がはっきり聴こえる。
4.新しいことをするということはどういうことか
誰でも新しいことをするときには、それまでの習慣を上書きする必要があるため、新しいことを常に考えながらやっていく必要がある。うまくいかなくても、その都度新しいことを自分に向けて言ってあげることでだんだんできるようになる。
新しいことを始めてすぐのうちは、脳が混乱してしまい、覚えていたことさえできなくなることもある。あとは、新しい方法を言い聞かせて慣れていくしかない。
5.緊張すると吹けなくなることについて
震えを止めようとすると、かえって力を入れて変になってしまうことは多い。だからこそ、緊張したら震えるのは当然のことなので、震えは止めようとせずに放っておくこと。放っておいてしばらくすれば震えは止まる。
本番で失敗しても誰にも迷惑はかからないから大丈夫と考える。演奏は人のためになっても害になることはない。

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シャイで無口な高校生たちが、みるみる自分本来の力を発揮するようになって表情も明るくなっていって良かったなと思いました。3人ともサックスだったので、逆に自分の気づかないことをいっぱい学べて勉強になりました。
今回もなんだかんだいろいろな疑問に対して先生が答えていく中で、「頭と脊椎の関係(Primary Control)」「方向性(direction)」の大切さを実感しました。本当に貴重な機会、ありがとうございました!

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