「ヨイ出し」と「やり残す」ことでやる気を引き出す!

待ちに待ったバジル先生の新刊本「吹奏楽部員のためのココロとカラダの相談室 吹奏楽指導編」がついに刊行されました。
じっくり読んでみると「吹奏楽指導編」と名は打ってありますが、吹奏楽関係者に限らず、多くの教員、指導者が読んで実践していけたらいいなと思う内容だと思いました。「悪いところに注目して直していく」教育から「良いところを見つけて伸ばしていく」教育へ。そうすれば日本の吹奏楽の、部活動の、果ては教育のスタンダードが少しずつ変わっていくようにも思います。
◎「ヨイ出し」の必要性
これは自分の経験ですが、教える立場になってからというもの、教えるよりも学んだことの方が多いような気がしています。でもだからこそ、やりがいを感じているようにも思うのです。教育とは、生徒を教え育てるだけでなく、教員も教えられ育てられ、共に成長していくことなのかもしれません。そう思うと、教員・指導者たるもの「上から目線」でダメ出しをするのではなく、「同じ目線」に立って、一緒に良いところを見つけていくような心づもりでいることが大切なように思います。
音楽でも何でも、突き詰めていけば限界はありません。だからこそ本当の意味では永遠に「技術的にも音楽的にも未熟」なままなのかもしれません。でもその中で、自分が一番大切にしたいことは、やっぱり聴き手の心の底に伝わる音楽を奏でていきたいということです。
しかし、望んだ結果がいつも必ず得られることなどありません。むしろ、自分の望みが高ければ高いほど、望んだ結果とは程遠い結果に終わることも多いかもしれません。でも、誰にでもその時やれるベストを尽くすことはできます。自分のベストを尽くすことを繰り返していくうちに、少しずつ望みに近づいていけるはずだと思います。
そう考えてみると、少しでも望みに近づいているのだから、ベストを尽くせたらそれで「善し」とすることは非常に大切なことのように思います。自分にも他人に対してもダメ出しをするのではなくて、「ヨイ出し」をしてあげることで、自信を失わずに前進していくこともできると思うのです。自信過剰もマイナスになるけれど、自己否定はもっとマイナスになるように思います。
◎「やり残す」ことの重要性
JBCの合奏指導法で、小澤先生が「小学生のうちはあまりガツガツやりすぎずに少しはやり残すことも大切」と話をされていましたが、確かに発達段階に合わせた要求というものは大切なことだと思います。もちろん初めからゴールを低く持って、可能性を低く見積もる必要はないと思うのですが、目の前の子どもたちが、「~するって楽しい」と思えるような指導の仕方を常に考えて、「嫌いにさせない」ということはとても大切なことです。
「やりたい」という自発的な動きをどう引き出し、保っていくのか。
その方法はいろいろあると思います。その一つとして、好きな物を最後までとっておいて食べるように、楽しみは少しずつ先にとっておく方法もあるように思います。楽しいことが先に待ち受けてると思うから頑張れることもあると思うのです。
中には人から褒められることで疑心暗鬼になる人もいるかもしれませんが、「ヨイ出し」されたら普通は「嬉しい。もっと頑張ろう」という気持ちになると思います。その気持ちをもっている状態で、その日の練習を終わらせてみると、次の練習が待ち遠しくなるはずです。そして、待ちに待った練習だからこそ、また一生懸命楽しみながら頑張ることができて、プラスのサイクルが形成されていく。そのような指導ができたらいいなと思います。
これからコンクールシーズン。
コンクールで評価されるような基本的なことが上手くできている演奏、というところまでレベルを上げていくためにはどうしても時間もかかるし、たくさんの壁があるかと思います。でも、その壁を乗り越えるための原動力は「音楽が好き」「音楽が楽しい」「だから上手くなりたい」という素直な気持ちだと思います。一人ひとりの中にあるそんな気持ちを引き出しつつ、人間として大切なことを「賞」という一つの価値基準だけに惑わされずに貫いていけたらいいなと思います。どんなときでも、聴いている人が「この演奏を聴きに来てよかった」と思えるような、奏者が「この仲間たちと音楽できてよかった」と思えるような、そんなバンドをつくっていきたい。そう思うのです。
そのためにも「ヨイ出し」「やり残し」を上手に組み合わせて、“やる気”を継続させていけたらなと思います。
(Twitterまとめ)

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