1番ラッパを吹くということ ~本番を終えて思ったこと~

昨日、無事に(?)今シーズン最後の本番を終えることができました。
昨日の本番は、大学時代から気心の知れた仲間に加え、さらにその仲間たちへと広がっていったオケで、いつも互いに思っていることを出し合いながら1つの音楽をつくろうという雰囲気があって、練習に行くとどこかほっとすることのできる、ホームグラウンド的なオケの本番でした。
自分はなかなか練習に参加することができなくて不安も残りながら本番の日を迎えてしまいましたが、全体としては1つの音楽をみんなでつくろうといういつもの雰囲気の中で、音楽の流れに乗ることができ、お客様にも喜んでいただける本番となりました。まずは、ご来場いただいたお客様と、素敵な仲間たちに感謝したいと思います。
さて、前置きが長くなってしまいましたが、今回の本番で特に感じたことは「1番ラッパを吹くこと」でした。
最近はめっきり練習時間が減ってしまい、1番ラッパを吹かせていただく機会はほとんどなかったのですが、今回久々に吹くことになり、やはりその重圧を感じずにはいられませんでした。
以前、Twitter上で、1番ラッパの素質として次のようなツイートをされている方がいました。
「1番ラッパ」の素質
集団で吹く場合、
トランペッターが目指すのは
やはり「1番ラッパ」。
では、「1番ラッパ」の素質とは?
私が思うに「ナルシスト」であることだ。
そして、「精神力」が強いこと。
「1番ラッパ」は、トランペットパートの看板として、
ほかの「1番ラッパ」と戦わなくてはならない。
やっぱり、「自分が1番」と思えるくらいの
高音をぶち当てる決定力、
決して音を外さない安定感、
そしてほかのラッパーをまとめる統率力。
「ボス」であること。
そこにいたるには、
ひとつ、「今」この瞬間にすべてをかけて音を出す。
ふたつ、音を外してしまっても次に必ず当てる。
そして、出来たときは「自分、サイコー! 神!」とつぶやく。
これらを繰り返すだけ。
(たなちゅー ‏@tanatyuu_taru さんのツイートより)

確かにプレッシャーに負けてしまうようでは、1番ラッパは確かにつとまらないポジションだと思います。その重圧をはねのけるくらい、自分に自信が持てるように練習を重ねるしかないのかもしれません。でも、それで自分を追い詰めてしまったら逆効果になってしまいます。気負わず、少しでもできるようになった自分を褒めていくことも、大切なような気がします。そして、1番ラッパを務めさせてもらえるときには、ただどっしり構えてナルシストな演奏をするのではなくて、本当の意味で仲間を束ねられるように、仲間から信頼されるボス的な存在でありたいものです。
さて、昨日の私はそんなボス的存在になれたか、というとなれなかったようにも思います。でも、そこで改めて1番ラッパを吹くときに必要なことを考えさせられました。いずれも当たり前と言っては当たり前だし、何も1番ラッパを吹くときに限って意識しなければいけないことではないのですが、今後忘れないためにもここに3つのことを書き留めておきたいと思います。
1.失敗を恐れずに思い切り良く吹く
トランペットは音を外しやすい楽器でもあります。中学生のころから「絶対外すんじゃない!」と育てられてきた自分としては「絶対外してなるものか」ということを思いすぎて、逆に力が入って外すことも少なくありませんでした。そして、だんだん大人になってくると外すことが怖くなってきて、思い切りよく吹けなくなってしまうこともありました。
でも、音を出さないことには音楽は始まりません。音を外したからといって、そこで人生が終わってしまうわけではありません。失敗はしたあとのフォローが大切です。外した後にその気持ちを引きずって、音楽自体が止まってしまっては意味がありません。
昔、大学の後輩が、「展覧会の絵」の冒頭のソロを外してしまったのですが、その後はノーミスで、さらにはだんだん調子をあげ、「キエフの大門」では伸び伸びと音楽をしていたことがありました。このように、1度の失敗を引きずらずに、次に向かっていける心を整えることができるかということも、大切なことだと思います。
また、自信をもって吹くことで、タテもあうようになってきます。少しでも恐れてしまうと、出だしの勢いがなくてずれてしまいます。特に1番ラッパは周りにザッツを出して「自分についてこい」くらいの自信が必要だと思います。それによって、周りの不安も解消され、結果としてタテがそろったりするものです。
今回の本番でも、ちょっとでも自信なく吹いたところのタテはばらついてしまいましたが、2nd奏者と呼吸を合わせながら、自信をもって吹いたところはタテもハーモニーも比較的そろっていたように思います。改めて、自信を持てるまで練習することの大切さを痛感させられました。
2.頭の中で音楽の流れをつくる
これも最近のブログで書いたことですが、本当に大切なことだと思います。
今回の本番は、普段使い慣れていないC管ロータリーを使ったのですが(というと言い訳になるのですが)、やはり次に出す音のイメージが頭の中にないと、音は外れてしまいます。頭の中で全体の音楽が流れていて、その中で自分がどの音を出すのか、きちんとイメージさえできていれば、基本的には音を外すことはないと思います。もちろんバテなど他の理由で音を外すことはあると思いますが、その際も、音楽の流れに乗っていれば、ひどい外し方にはならないと思うのです。
自分ではたくさん外したつもりであっても、録音を聴いてみると、そんなに目立たないということがあります。そういう時を振り返ってみると、ちゃんと自信をもって音楽に乗れていて、「当てに行こう」という邪念をあまりもたずに、音楽の流れの中で残念ながら音が外れてしまっているなと思います。
確かに外さずにノーミスで演奏できれば一番いいのですが、野球でも、スケートでも何でも、プロ選手というのは自分のコンディションに合わせてベストのパフォーマンスができるように調整した上で、それでも失敗したら、次に切り替える力というか、試合全体を見て、次に自分がすべきことを考え、全体として仕上がりの良いものをつくっているような気がします。
1番ラッパは野球で言えばエースピッチャー。本当は支えてくれるバックがたくさんいるけれど、マウンドの上で自分の一投が試合にどれだけ影響するかを知っていて、時に孤独を感じるポジションです。だからこそ、一球入魂、一音入魂しすぎるのではなくて、全体の流れの中での自分の役割を「打たせて取る」くらいの気持ちでやっていくのがよいのかもしれません。
3.感謝の気持ちと楽しむ心を忘れない
1番ラッパを吹かせてもらえるのは、とても光栄なことです。
だからこそプレッシャーがかかるわけですが、同時にそのポジションを吹かせていただけることに感謝の気持ちをもつことは絶対に必要だと思います。感謝の気持ちを持ってこそ、音楽を丁寧に、大切に演奏することができると思うからです。
その上で、自分を追い込みすぎてもいけません。とにかく、誰よりも音楽を楽しむこと。音楽に乗ってしまうこと。「みんな、楽しく音楽やろうぜ!」くらいの親分肌でありたいものです。
1番ラッパが重圧に押しつぶされそうになっていると、周りにもその緊張感は伝わってしまいます。そして、全体としてかたまった音楽になってしまうことさえあります。
「絶対にこうしなければいけない」ということはないけれど、とにかく仲間を信じ、みんなで音楽を楽しもうとする気持ちが一番大切なのだと思います。
そういう意味で、昨日の本番は本当に楽しかったし、冒頭にも書きましたが、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。また1番ラッパを吹く機会に恵まれたら、もっと自分から音楽をつくっていけるように頑張りたいと思います。

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