自分と音楽の関わり

今でこそ”No Music, No Life”な私だが、ずっとそうなわけではない。
自分は母がピアノを教えている関係で、生まれる前から散々クラシック音楽を聴かされて生きてきた。だからといって、小さいころから楽器をやることを強制された覚えはなく、自然とピアノをいたずらして触るようになり、何となく幼稚園生くらいから習うことになった。
でも、とにかく地道に毎日練習することも、ピアノの前で座り続けることも、幼いころの私には拷問に近い位のことで、それでも練習しないで先生のところに行こうとすると母に怒られ、音楽にあまりいいイメージは持っていなかった。
音楽にいいイメージを持っていなかったもう一つの理由は、音楽(ピアノ)に母を捕られたという感覚があるのだろう。当時はバブル期で生徒数も多く、平日も帰ってくるのは遅かったし、土日もホームレッスンで、なかなか相手をしてもらえなかった記憶がある。仕事なのだから仕方がないわけだが、独りで取り残される寂しさは、今もどこかで引きずっている気もする。
そんな私だが、小学校のクラブ活動は鼓笛隊に入った。運動会などで演奏している姿がかっこよかったのと、友達に誘われた、というとても単純な理由なのだが、これが自分にとっては大きな転機となる出来事だった。下手な部活ではあったけれど、3年生は中太鼓、4年生からはコルネットを担当し、とにかくみんなで曲をつくる楽しみをここで知ることができた。なんとなく、移調楽器のこともわかってきて、楽譜を切り合わせてメドレーをつくったりして遊ぶようになったのもこの頃のことである。
中学は一瞬運動部に惹かれたが、ここでも友人の誘いに負けて、吹奏楽部に入部。ここから私の吹奏楽人生がはじまる。40人にも満たない、コンクールにも出ない弱小クラブだったが、当時のコーチの熱血指導「吹奏楽部は体育会系だ!」「上手くならなきゃ面白くない!」「言い訳は口答え」「愛と勇気と気合」という言葉は、今も私の土台にしっかりと刻まれているような気がする。このころから部活一色。部活のために学校に行くような生活がはじまった。
高校では迷わず吹奏楽部に入部。中学とのレベルの違いに驚く。後にプロのトランペット奏者として活躍されることになる2つ上の先輩や、トランペットのコーチに丁寧に教えていただくと同時に、ものすごく上手い同級生にどうしても負けたくなくて、高1の6月から月2回ペースで個人レッスンに通うことにした。初めてのレッスンの時、先生に「音大に行きたいの?」と聞かれ、「プロになる気はありません。でも、アマチュアで一番うまくなりたいです」と、今思えば恐ろしいことを言った記憶がある。高校時代はとにかくラッパと音楽にかけた3年間だった。でも、もっとかけられたかもしれないんじゃないか、といまだに思う部分もある。
きっとラッパをやっていなくて、音楽にぶつかっていく生活を送っていなかったら、間違いなく自分は不登校になっていたのではないか、と思うくらい、勉強そっちのけで部活の事ばかりしていた。そして、将来は教師になって、吹奏楽部の顧問になるのだ、という漠然とした夢を持つようになった、
大学は理系に進学し、オーケストラ部に入った。今までの吹奏楽での常識が通らないことも多かったが、逆にいろいろな視点から音楽と向き合えるようになったし、エキストラなどでいろんなところに連れて行かれる中で、人脈を広げることができた。
今、運よく教員になり、吹奏楽部の顧問として子どもたちと音楽づくりをできる立場にいることは、とても恵まれていると思うし、感謝すべきことだと思う。
でも、母に昔言われた「1番好きなことは仕事にすると辛いわよ」という言葉の通り、時々音楽と向き合うことから逃げたくなる時もある。ラッパを吹いても思うように吹けなくて、このまま辞めてしまった方がいいのではないかと思ったことも何度もあった。
しかし不思議なことに、その度に自分を音楽の世界に引き戻す出来事が起こる。
やってみて、熱くなる自分がいて、やっぱり音楽が好きだって体全身で感じる。

音楽との関わり方は人それぞれあると思う。
自分は自分の置かれた環境を楽しみながら、子どもたちも音楽を楽しいと思って、決して「音が苦」にならないようにやれる環境づくりに励みたい。だって、音楽って人の心をどんな風にでも再現して、いつも自分に共感いてくれる、唯一無二の大親友だから。その親友を大切にしたいと思うから。
こんな風に思うまでに10年以上かかった。
10年後、また自分と音楽の関わり方はどのように変わっていっているのか、それとも変わっていないのか楽しみだ。
アプローチの方法はいかにでもある。
本当に好きかどうかわからなくなったら、本気で一度やめてみるのも悪くない。
そこでやりたくなったら、好きってこと。なくてはならないってこと。
そこでもういいやって思うんだったら、それだけのこと。
そんな風に思う。
今の人間関係も、仕事も、自分の人生は音楽が切り拓いてくれたといっても過言ではない。
これからも気持ちが揺れることもたくさんあるかもしれないけれど、末永く付き合っていきたいと思う。

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