重力とやさしく付き合って、自由に奏でるアイディア

先日のブログにも書きましたが、今日も重心について考えてみたいと思います。
これまで楽器をやってきて、「重心を下に」「お腹に力を入れて」「丹田を意識して」という言葉を何度もくり返し浴びてきたように思いますし、自分自身も指導をするときに同様の言葉を使ってきました。もちろん、そうすることで踏ん張りもきくようになりましたし、力一杯演奏をすることはできるようになった面も大きいように思います。
でも、アレクサンダー・テクニークのレッスンを受けるようになってから、その「重心を下に」という意識が過剰なあまり、頭や脊椎が固まってしまい、「力任せの演奏」になっていたことに気づきました。私が本格的にアレクサンダー・テクニークのレッスンを受けようと思ったのも、体験レッスンの時「頭を自由にして、体全部がついてくるようにして…」と先生に手を触れて頂いたことで、自分自身がふわっと軽くなって、その分音も遠くに響くように感じたことがきっかけです。それほど、自分自身の体を縮みこませ、固めていたのだと気づかされた出来事でした。
レッスンでもいわれたように、地球上の物体には必ず下向き(地球の中心に向かう向き)の重力がはたらいています。と同時に、それと同じ大きさで上向きの垂直抗力がはたらいています。この重力と抗力がつりあっているからこそ、人は地面にめり込んでいくこともなく、地面から突き上げられることもなく、静止していることができるわけです。

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つまり、わざわざ重力に手助けをしてあげなくても、放っておいても自分の身体は下(地球)に引っ張られているわけで、夜になると足がだんだんむくんでくるのと同じで、どちらかというと身体は重力の影響を受けやすいとも考えられるわけです。だから逆に、抗力のはたらきに協力してあげて、身体全体を上向きに持っていくことは、重力に妨げられているエネルギーを演奏するためのエネルギーにうまく変換させるための一つのアイディアになるように思います。
例えば、息を吐く時を考えてみましょう。
息を吐くときは、横隔膜が上がり、肺が押されて空気が気管を通り、上に向かって流れていきます(下図)。

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りかちゃんのサブノート(http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/kokyu.html)より

このとき、確かにお腹に力を入れて、内蔵を上に持ち上げるようなイメージを持つと、息を送り出すための圧力を補助してあげることができるように思います。でも、ただ踏ん張るようなイメージでお腹に力を入れたり、お腹をふくらませる方向に力を入れてしまっては、実際に身体がやろうとしていることと逆行してしまい、うまく息を送り出せないように思います。
実際、息は上に向かっているのです。特に、口の中の上顎のかたいところ(硬口蓋)に向けて真上に息を吐くつもりで演奏してみると、驚くほど息の抜けがよくなります。
また、「のどを開いて」と言われることも多いかと思います。これも硬口蓋より少し奥側にある柔らかいところ(軟口蓋)を少し上に上げるような意識を持ってみると、その部分で響きがつくられ、頭蓋骨にまで響きが伝わるくらい豊かな響きが得られます。
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このように、身体も息も上に向かっていき、「操り人形が上から糸でつられている」ようなイメージで、全身が頭について上に引っ張られるような感覚をつかむことができると、意外と楽に演奏できるものです。
これまでどうしても椅子にどっぷり座り、足を広げて、重心を落とし、力一杯吹いていた私ですが、今日は少し重心を上に意識して、「息を上に」をイメージして練習をしたら、いつもより高音や難しいパッセージも楽に吹くことができました。
これからは、重力にからだを自然に預けながら、抗力のはたらきをお手伝いするというプランを使ってしばらく練習していきたいと思います。
まだ本格的には学び始めたばかりで、言葉足らずであったり、不勉強な点もあるかもしれませんが、何かの参考にして頂けたら幸いです。

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