「振動が先」か「息が先」か ~トランペットを吹くに当たって考えたいこと~

アレクサンダーテクニーク教師養成コースに在籍されているサトウトクヤさんがブログに次のような記事を書いておられました。
「息の音だけでも良い!」音(振動)を求めすぎる指導の問題点。
– サトウトクヤの知ってトクするアレクサンダー・テクニーク~トランペットを誰もが楽しめる楽器に~

この記事を読んで、なるほどなと思うところがたくさんあったのですが、ずっと「振動が先にきて、息はそれを支えるためにある」と習って信じて疑ってもこなかったので、改めていろいろと考えるきっかけになりました。
確かに音の正体は振動です。振動がつくられなければ音が鳴ることはありません。でも、唇と唇の間を息が通ることがなければ、振動することもありません。
ではなぜ、「振動が先」と言われてきたのでしょうか。それは、トクヤさんがブログでも触れているように「絶対に音を出せ、外すなよ」というプレッシャーをかけられたり、自分自身でかけてしまっているところにも起因しているような気がします。
また多くの吹奏楽部で行われているように、初心者にまずバズィングを教え、次はひたすらマウスピースのみで練習をさせるという教え方も関係しているように思います。
バズィング練習、マウスピースのみでの練習の是非はいろいろな見解がありますが、今まで自分が習ってきた先生方のお話を総合して考えると、「楽器と同じ音程で鳴らせるようになる必要も、大きな音でひたすらやる必要もない」ということは言えるかと思います。
ウォームアップの時に、血液の循環を良くするという意味でのフラッタリングや低音ppでのバズィングは有効だと思いますし、唇とマウスピースを馴染ませる程度にマウスピースだけで軽く吹いてみることも必要なことだと思います。
でも、忘れてはならないのは、唇という発音体の先にマウスピースがあり、さらに楽器という振動を増幅させるものがその先にあるということです。楽器をつけることで抵抗感は全く違ったものになりますし、唇だけで同じ音程をつくろうとしたら何倍もの負担が唇にかかることは明らかです。そして、振動させるために唇を必要以上に固めてしまい、力が目一杯入った状態で息を吹き入れたら、口を壊すことは明白です。
何より、音楽を奏でるときには楽器を使うわけです(マウスピースだけで吹く曲もありますが)。だからこそ、そのことを忘れずに軽くバズィングやマウスピースでの音出しをするだけで良くて、あとはじっくり楽器を用いたウォームアップをするのが一番効果的なのかもなと思います。
しかし「とにかく息を入れろ!」という指導もまた問題です。かつてマ○オシステムという奏法が流行ったとき、無理矢理息を通して唇を半ば強引に振動させることで口を壊してしまった人も多かったという話を聞いたことがあります。
ここでも問題になってくるのが「唇を固めてしまうこと」です。「~しろ!」という命令は、時として人の体を硬直させます。その結果、固まった柔軟性のない状態の唇を無理に振動させようとして、余計に力が入り、かえって振動しないどころか、口を壊してしまうことさえあります。
要はどちらも程度の問題であって、息も振動も奏でるためには必要なものです。息と振動のバランスがとれてこそ美しい音が生み出されるのだと思います。だから、「振動が先」か「息が先」かということを考えることよりも、それらが同時に始まるポイント探しをゆっくりしていき、だんだん慣らしていくのが日々のウォームアップであるのだと思います。
そういう意味ではトクヤさんがブログに書かれているように、「息の音だけで良い」のかもしれません。「鳴らそう」とするあまり、力が入ってしまってはウォームアップにはならないわけですから。
ため息をつくくらいの息でも振動をつくりだすことはできます。そうやってそっとつくりだした振動が後続の息によって支えられ、マウスピースを密着させることで振動数を上げ、さらに楽器によって増幅されて輝かしい音色をつくりだしていくのだと思います。
あくまでアマチュアラッパ吹きの戯言ですが、自分はそんなアプローチで楽器を吹いていこうかなと思います。
トクヤさん、貴重なネタふりありがとうございました!(^^)

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