“やらされている練習”では上手くならない!

下のメモは、私が高3の時の生徒手帳の1ページに書かれていたものです。

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私の高校では、コンクールの直前に夏合宿を行っていたのですが、その前日にコーチ(指揮者)から電話がかかってきて、「自由曲、全然さらえてないじゃないか!お前らどんな練習してきたんだ!こんなんでコンクールに出るなんて恥だ。やめちまえ。俺が合宿に行ったらすぐ一回暗譜で通す。そこで、全員暗譜で来てなかったら合宿もコンクールも取りやめだ」と言われたときの走り書きです(学生指揮だったもので…)。
先日実家に帰った時に偶然発見したのですが、このメモを見ただけで、その時の恐怖感がよみがえってきました。合宿の行きのバスの中はみんな譜面と見つめ合って凍り付いた雰囲気で、本当にその夜の合奏までは、自分たちにとって最後のコンクールに出させてもらえるのか不安で、「頼むからみんな間違えないでくれよ」と願うばかりでした。結局、何とか間違えることなく通り、合宿は継続され、コンクールに向けてみっちり絞られ、泣きながら練習をし、ようやくの思いで前年と同じA組銀賞に滑り込むことができました。あの喝がなかったら、きっとみんな本気にならなかったと思うし、良かったといったら良かったのかもしれません。
でも、自分が顧問として吹奏楽に関わる時には、生徒に「恐いから練習する」という思いはできるだけさせたくないと思っています。それは、怒られないように練習しても、それは「失敗をしない演奏」になるだけで、「人の心を動かす演奏」にはならないと思うからです。もちろん、時には厳しさも必要です。緊張感も必要です。でも、それで委縮してしまった演奏は音楽の本質とはかけ離れてしまったものになると思うのです。
ここでもう一つ、自分の高校時代の体験をお話ししようと思います。
高1の秋、吹奏楽コンクール全国大会出場のために上京していた愛知工業大学名電高校の前日練習を見学する機会がありました。課題曲は「ラメセスⅡ世」、自由曲はアメリカの作曲家・コープランドの代表作の一つでもある「エル・サロン・メヒコ」、いずれも難曲として知られている曲です。全国大会の前日とあって、練習場所の中はただならぬ緊張感に包まれていました。
当時の自分からしてみたら全然ダメ出しするところなんてないくらい上手なのに、何度も同じところを確認し、完璧にそろうまで徹底して練習する姿を見て、本当に自分たちの練習の甘さを痛感しました。中でも一番驚いたのは、指揮者の先生が合奏を止めた後、次どこからやるか、なぜ止めたのか、何の指示もしていないのに、次に先生が棒を振り始めると、誰一人間違えることなく、同じ場所から吹き始め、それがまたさっきより確実に良い演奏に生まれ変わっていったことです。これが何時間も続くのです。誰一人、集中力を欠かすことなく…。本当に同じ高校生か、と圧倒されました。さらに、先生が「これから10分休憩!」とおっしゃると、誰もダラッと休もうとせず、パートリーダーが「トランペット、集まって。ここ合わせるよ!」と指示を出すと、さっとパートで集まって、合奏でやりきれなかったところを詰めていく練習を始めたのです。課題曲も自由曲もトランペットは無茶苦茶きつい曲で、あれだけ合奏で吹いたらバテて音が出なくなりそうなものなのに、休憩もとらずに自らの意志で練習をする光景を見て、何て自分は甘かったのだろうと完全に腰が抜けてしまいました。
もちろん、普段からの鍛え方が違うからできる技だと思うところもあるのですが、ここから私は練習を進めていく上でとても大切な意識を学んだ気がします。それは「自らの“上手くなりたい”、‟いい演奏をしたい“という意志を貫き、使える時間を無駄にしないように集中して練習に臨む」ということです。本当に、演奏者一人ひとりが妥協せずに「自分たちの音楽」を追い求めて練習に向かっていくと、みるみるうちに上手くなっていくのだなと、たった半日の練習見学でしたが、心が奮える体験でした。愛工大名電吹奏楽部は、翌日普門館で行われた全国大会で、金賞を受賞しました。あれから18年。今でもその年の全国大会のCDを聴くと、練習を見学したときに感じた熱い想いを思い出します。
「やらされている練習」は楽しくないし、上達の効率もあまり良いとは言えません。もちろん、「自分たちの目指す音楽」を実現していくためには、時にはつらかったり、きつかったりする練習にも取り組んでいかなければいけないことがあるかもしれません。でも、それが『自分の意志』によるものだと、意外と頑張れたりするものです。勉強も同じ。どうしても入りたい大学があって、絶対にその夢を叶えたいと思ったら、つらくて先の見えない勉強に対しても、最後まで諦めずに立ち向かっていくことができるのだと思います。そして、夢の大きさが大きければ大きいほど、叶った時の達成感と感動は計り知れないものがあります。みなさんは、小さな夢で満足しますか?大きな夢のために頑張りますか?
(部内通信より)

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