表現力をどうやって高めるか?

昨日の部活は生徒が中心になって行うアンサンブル合奏でした。アンサンブル合奏は、木管と金管が向かい合わせになって、互いの表情を見ながらアンサンブル力を高めようという目的で取り入れています。よく私も自分の合奏で取り入れますが、それまで自分の殻に閉じこもって“譜面だけがお友達”になってしまっている状態の時に、他パートがどんな動きをしているのかを意識したり、自分たちで合わせようとする意識を高めたりするのに非常に効果的だと思っています。
昨日の練習では、自由曲と課題曲のそれぞれについて、より情感を高めようという目的でアンサンブル合奏が取り入れられていたように思います。自分たちで自由に「ここは人魚が泳いでいるように」「流れ星が輝くように」「黄色のようなイメージで」など様々な意見を出し合いながら進めていくと、明らかにどんどん表情が豊かになっていく様子が伝わってきました。
しかし、コンクール本番一発で、みなさんが伝えたいと思う音楽を審査員の先生方や聞いて下さるお客様に届けるためには、もっともっと大げさに表現していくことが求められます。では、どのようにして表現力を高めていけばよいのでしょうか。
①ダイナミクスの幅を広げる
これはただ「デカい音」を鳴らせばいい、ということではありません。ppからffまで、様々な音量をコントロールできるようになることを指します。これはいきなりできるようになるものではありません。ブレスコントロールやアンブシュア、様々な要素が絡んできますから、地道に少しずつ自分の限界を広げていくしかありません。まずは、毎日「自分が出せる一番大きい音」と「自分が出せる一番小さな音」を必ず出してみるようにしましょう。このとき気をつけたいことは、大きな音が力任せにならないことと、小さな音が真のないカスカスな音にならないことです。常に「音は振動」ということを意識し、唇やリード、弦や太鼓の皮がしっかり振動していることを確認しながら練習してみましょう。
また同じffであっても、「突き抜けるような鋭い音」なのか、「雄大で堂々とした音」なのかで表現は変わってきます。そうした多様なダイナミクスをつけられるようになってくると、表現の幅は大きく広がります。こうしたいろいろなダイナミクスをつける練習は、何も曲だけでなく、基礎練でも取り入れることができます。ぜひ、ロングトーンや音階練習の時にも、ただ何となく出しやすい音量だけで練習するのではなく、1回1回イメージを変えてやってみるようにしましょう。
ちなみに、今のみなさんの演奏では、まだまだf方向のエネルギーが不足しているように感じます。かつてほどコンクールで「しっかり楽器を鳴らすようにしましょう」とは言われなくなってきていると思いますが、みなさんが演奏している姿を見ていると、まだまだもっと楽器はなってくれるのになぁ~と思ったりします。楽器は正しい奏法で、しっかり鳴らしてあげると自然とピッチもよくなるものです。ピッチを合わせようとして音を引っ込めてしまうくらいなら、思い切って鳴らしてあげた方がかえって音程も合ってくると思います。慣れるまでは疲れるかもしれませんが、出し惜しみをせず、本来の楽器が持っている「いい音」を引き出して上げられるように頑張りましょう。
②イメージを共有する
これはまさにみなさんが昨日やっていた練習だと思いますし、みなさんの得意分野でもあると思います。ただ、たとえ一人ひとりが曲に対して「こういう表現をしよう」という思いを持っていたとしても、それがバラバラなもので全然違った方向にそれぞれが向かっていたとしたら、まとまりのある音楽にはなりません。そういう意味では、一人ひとりがイメージを出し合い、実際に音を出しながら徹底的に話し合いをし、みんなが納得いくイメージに集合していけるようになるとよいなと思っています。
③イメージを具体化する方法を考える
イメージが共有できたら、それを具体化する方法をよく考えて練習することが大切です。例えば、「人魚がゆったりと泳ぐように」演奏するためには、音量はどのくらい必要でしょうか。音色はどんな音色がふさわしいでしょうか。フレーズの頂点はどこにもっていけばよいでしょうか。そのためにはブレスをどれくらいとる必要があるでしょうか。こういった細かい一つ一つのことを詰めていって初めて、イメージは具体化していきます。せっかくイメージができていても、それを具体化する方法が分からなかったら表現のしようがありませんよね。
イメージを具体化していくためには、どうしても技術的なところを詰めていくことが必要になってきます。「軽快に」だったら、スタッカートを軽く、でも中身のある音で吹けるようになる必要があるし、「遠くで鳴っているように」だったら、繊細なppが出せるようになる必要があります。
逆にいえば、イメージができることで、必要な練習も具体化してきます。みんなでイメージを共有するということは、必要な練習は何かを全体で確認し、次の合奏までの課題を明らかにする意味でも非常に効果的なわけです。
④イメージを具体化するための練習をする
ここまでわかったら、後は練習をするだけです。このとき大切なのは、“できるようになったことに気づくこと”です。ついコンクール前になると、自分たちの演奏にストイックになってしまい、自分にも相手にもどんどんダメ出しをしがちになってしまうものですが、ダメ出しばかりしていると、気持ちも後ろ向きになってしまうものです。
しかし同時に、自分たちで表現していることを客観的にとらえ、改善するためにはどうすればよいかふりかえることも大切です。そのためにも録音をして、自分(たち)の演奏を聴きながら練習を進めることも大変意味のあることだと思います。録音はかなりシビアに聴こえますから、客観的に「ヨイ出し」もできるだろうし、また新たな課題を見つけて次の練習に生かすこともできるだろうと思います。ぜひやってみましょう。
最後になりましたが、「表現expression」という言葉を辞書で調べてみました。
●ベネッセ表現読解国語辞典(Benesse)
 考えや感情など、内面的なものを、表情・身振り・ことば・文章・音楽・絵画などで
 表し、見えたり感じ取れたりする状態にすること。

これを見てみると、表現するためにはまず、「考えや感情など、内面的なもの」を深め、磨いていくことが必要だということが分かります。身の回りにあるものや出来事に敏感になって、五感を研ぎ澄ませて「感じる」ことを大切にして欲しいと思います。と同時に、「見えたり感じ取れたりする状態にする」ためにどうすればいいか、考えながら練習に臨んで欲しいなと思います。これらは誰かに頼っていてもできるようになるものではありません。一人ひとりが「かけがえのない一人」として、自分にできることを積極的にやっていきましょう!
(部内通信より)

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