「合わせる」ために必要なこととは…

コンクール地区大会まであと約1ヶ月。練習にも力が入ってくる頃だと思います。ここで一番使われる言葉の一つとして、「合わせる」という言葉が上げられるように思います。「音程を合わせる」「リズムを合わせる」「心を一つに合わせる」など、吹奏楽の現場では「合わせる」という言葉が使われることは日常茶飯事です。
では、「合わせる」ためにはどのようなことをすればよいのでしょうか。
①「音程が合わない」というときには?
「周りの音をよく聴いて合わせて下さい」との指示に対して、自分の音量を下げて、周りに“埋もれるような”音で吹いてしまうことはないでしょうか。
確かに、「周りの音を聴く」というと、自分の音量は下げたくなるのは人間の常というものかもしれません。でも、その“恐る恐る吹いた音”で実際に曲を演奏することはまずないかと思います。「合わせる」ために吹き方を変えてしまっては、「曲中で音程が合うようにする」という本質と大きなずれが生じてしまいます。
また、チューナーに合わせるというのも考えものです。チューナーは出している音を確認するためのものであって、チューナーに無理矢理合わせようとして、奏法が変わってしまっては元も子もありません。
チューニングの際には、実際に曲中で使うであろう「自分が出せる一番美しく、響きのある音」をしっかり鳴らすことが大切です。はじめはなかなか合わないかもしれません。でも、きちんと楽器のツボで鳴らすことのできた音は音程も響きもよく鳴るものです。普段からしっかり鳴るツボを押さえて練習をすることで、音程も自然に合ってくると思います。
あとは、倍音を聴き取る耳を養い、倍音を感じながら演奏していくことで、自分の音をしっかりならしながら周りの音も感じられるようになるかと思います。
②「タテが合わない」というときには?
タテが合わないとき、「メトロノームに合わせて下さい」という練習をすることも少なくないかと思います。確かにメトロノームは大切な道具ではありますが、メトロノームの音を聴いてからそれに合わせようとすると、ズレが生じてしまいます。
それは、「音速が遅い」というところにあります。空気中で音が伝わる速さは約340m/秒です。たった0.01秒であっても、3.4 mのズレが生じてくるということです。ですから合奏中にメトロノームを鳴らしながらそれに合わせようとすると、「聞こえてくるまでにかかる時間+音を出してから指揮者に届くまでの時間」という大きなロスタイムが生じてしまうわけです。
メトロノームはからだにそのテンポを刻むためには非常に大切な道具です。でも、「メトロノームに合わせる」と考えて練習するのではなく、自分がメトロノームになったつもりで、テンポとノリを自分から作り出せるようにすることが大切なように思います。
③「意識が合わない」というときには?
前にもブログで書きましたが、コンクールに向かっていくと、多かれ少なかれ気持ち(モチベーション)の差が問題になることがあるかと思います。自分では頑張っているつもりでも、「何でもっと頑張ろうとしないの?!」と責められたり、逆に「何でもっとやってくれないの?!」と仲間に対して感じることも少なくないのではないでしょうか。
意識を合わせていくためには、一人ひとりがどのように感じ、考えているか、しっかり話し合いの場をもつことが大切です。それも一方的に責め立てたりするのではなく、率直に自分はどのように頑張ろうとしていて、相手に対してどうして欲しいと思うのかを具体的に伝えられるかが大切なように思います。
それができるようになるためにも、「自分を出しても大丈夫」「相手のどんなところも受け止める」という信頼関係を普段から築いていく努力は欠かせません。自分が出せないということは、表現できない=音楽をやれないということにもつながります。
音楽はコミュニケーションツールの一つです。だからこそ、音楽を奏でようとするならば、仲間と直接コミュニケーションをとることを大切にし、本当の絆をつくっていきたいところです。
このように、個性を引っ込めて恐る恐るやっていたら音程もリズムも気持ちも合うはずがありません。合わせるという目標を共通に持っていく中で、ぶつかり合ったり、支え合ったり、助け合ったりすることを学び、結果として自分という存在が確立していくような気がします。
コンクールという場が、自己を確立し、互いに支え合い、協力し合いながら音楽を創り上げていくための一つの成長の場になることを祈るばかりです。
(部内通信草稿)

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