肉食系○○奏者のすすめ

最近は楽器の奏法についてもネットで調べたらたくさんの情報が出てきますし、メールなどで気軽に相談することができるようになりました。本当に便利な世の中になったなと思います。
しかし新たな課題として、溢れた情報をどう選びとっていけばいいかということも考えていかなければいけないということもあります。
自分も発信したり、相談に乗ったりする立場になることもあるわけですが、もちろん自分でやってみて良かったこと、自分としてはこのように考えているということをお伝えしているつもりですが、万人に当てはまるとも限りませんし、その人にとってはもっとよい方法があるかもしれません。つまり、私たちが得ることのできる情報というのは「考えるためのヒント」に過ぎず、決して「絶対に守らなければいけない掟」のようなものではないのだと言えます。
例えば、楽器を吹くために「必要な力」がどの程度なのかは、理屈で教えてもらうことではなく、自分でいろいろ試してみた結果、だんだんと身についていくことのように思います。いろいろ試すためのヒントはもらうことはできたとしても、最後は自分で探しに行かないと見つけることはできない気がします。
力を入れすぎても響きの少ない硬い音になる上にバテやすくなりますし、力を抜きすぎても芯のない通らない音になり結局吹きすぎて疲れやすくなります。初めから「正しい」力の入れ方を探すのではなくて、音で判断して、より響く音に近づいていくためにどうすればよいのか考えられるといいように思います。
さらに言えば、響く音で奏でるためには、響く音がどんな音か知っている必要もありますし、自分の音が今どのような状況にあるのか観察することも必要です。そして、それを客観的に伝えるのが指導者の仕事のようにも思います。まずどんな音で吹きたいのか、一人ひとりがイメージして演奏できるように促せたらいいのかなと思います。
音楽は根性や忍耐でやるものではないと思いますが、「こんな風に吹きたい」という思いを実現するための精神力(=気持ちの強さ)は必要だと思います。それが自分の中にある向上心や探究心を支え、楽器や音楽との付き合いをより楽しいものへと導いてくれるような気がします。逆に言えば、「やりたい」「もっと吹けるようになりたい」「これができるようになりたい」という気持ちが少しも沸かなくなってしまったら、自ら考えて練習しようという気持ちにはなかなかなれないものでもあります。
しかし難しいのは、その精神力というものは自分自身が生み出すものであるということです。以前のブログにも書きましたが、「やりたい」という気持ちは自分の中で沸き上がってくるもので、誰かに強制されて産み出されるものではありません。部活など集団で何かに取り組もうとする時、よく「気持ちを一つに」と言われるかと思いますが、本当の意味で「一つに」なることは限りなく不可能に近いように思います。同じ方向性を持っていたとしても、一人ひとり感じ方や考えも違う分、気持ちの強さは少なからず違いがあるものですし、それを分かった上でまとめようとしないと、どこかで強制力が強くなり、結果として一人ひとりが窮屈さを感じてしまうこともあるように思います。
人の心を動かすことはそうそうできることではありません。生徒や後輩のモチベーションを上げようと思っても、一筋縄ではいかないことの方が多いかと思います。そんな時は、まず自分がどんな風にやりたいかを全力で示すことが大事なのかなと思います。たとえ顧問の先生が忙しくて部活に顔を出せる時間が限られていたとしても、ちょっとした時に部員に声をかけたり、合奏の時に一人ひとりのことを気にかけて指導するようにしてみたり、少し気を付けてみるだけでも、生徒との関係性は変わると思いますし、それが生徒のモチベーションにつながることもあり得ます。先輩がコンクール前で合奏ばかりになり後輩の面倒をなかなか見ることができなかったとしても、練習メニューを必ず渡すようにしたり、練習日誌を交換してみたり、少しの時間でも一緒に練習してあげることで、後輩は嬉しく感じたりするものです。このように関わり方一つで「やりたい」と思う気持ちを支えることは可能だと思います。
その上で、やはり一人ひとりが「人任せ」「受け身」になるのではなく、「自分からつかみとってやろう」というくらい肉食系○○奏者になって日々の練習に向き合えるといいような気がします。上達のためのヒントをいくらもらっても、自分がどうにかしようと思わなければ上達することはありませんし、どんなに素晴らしい先生のレッスンに行っても「何かを教えてもらえるだろう」くらいの気持ちだったら、受け取れるものもわずかになってしまいます。
音楽は表現。
だからこそ、自分から積極的に前に出ていくことが求められます。私はラッパ吹きのくせに、前にガンガン出ていくのは元々あまり得意ではありません。ですから、つい周りに埋もれながら隠れて音を出している人の気持ちは分からないでもありません。でも思うのは、思い切って自分から攻めていった時の方が得るものも多いですし、結果としてもよい結果に結びつくことが多いような気がします。
アンパンマンの歌ではありませんが、音楽を「愛」する心と、積極的に自分の気持ちを出していく「勇気」は上達していくためには不可欠だと思います。
自分の中にある向上心を大切に、自分の力で試行錯誤を繰り返しながら探究し続けることで、誰でも今より上達することができます。その自分の底力を信じて、新しい年度も頑張っていけたらと思います。

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