金管楽器をどう鳴らすか ~初めての音出し~

今まで初めて楽器を手にする生徒に金管楽器が鳴る原理を説明するとき、私は次のように説明してきました。
「2枚の紙の間に息を吹き込むと振動して音が鳴る。でも、ピンと張りすぎていても鳴らないし、緩めすぎていても鳴らない。ちょうどよい間隔になっているとき、自然と音は鳴ってくれる。金管楽器を鳴らす原理も同じ。上唇と下唇の間隔がちょうどよくて、そこに息が通れば自然に音は鳴ってくれるものだ」
確かにアンブシュアやバズイングのことを考えることも大切なことです。でも考えすぎるあまり、余計なところに力を入れたり、不必要に口の回りを固定してしまうのも考えものです。調子が悪いと感じたら、まず音の出る原理を考えてみること。そして自然に音が出る状態を探ってみることも大切かと思います。
でも、初めて金管楽器を吹く子どもたちにはどのように教えればよいのか、正直なところ迷いもありました。そこで昨日のベーシックコースの授業中に、思いきってバジルさんに質問をしてみました。
すると、バジルさんは実際に金管楽器を吹いたことがない参加者の方をモデルにして次のような実験をしてくださいました。
吹いているのを見せる

楽器を渡して吹かせてみる

出なければ、口を閉じて息を出さない練習(息圧を感じさせることができる)

少しだけ息を出してみる(アパチュアの形成につながる)

口で「オナラ」を練習(バズイングの練習になる)

楽器でやってみる

この手順で5分くらいでしょうか、やってみたら見事に音が出るようになりました。
考えてみたら、自分が小学生のとき、コルネットを渡されて、何も教わらずに息をひたすら吹き入れているうちに、初めて音が出たことを思い出しました。その間30分はかかった気がしますが…。それから初心者を教える立場にたって四苦八苦していたけれど、この方法は使えそうだなと思いました。
今、初めて楽器を手にした子や、これから始める子たちも多いと思うけれど、しばらくはマウスピースでしか吹いちゃダメとか、ひたすらバズイングとかじゃなくて、先輩がいい見本を示しながら、自然と吹ける状態をつくっていけるといいのかと思います。
理論も大切だけど、まずは実践!
どんな仕組みで音が鳴っているかを考えた上で、噛み砕いて説明することができれば、子どもたちも楽しく楽器を鳴らすことができるようになるのだろうなとこの実験を通して感じました。
あとはプレス。確かに息圧に対して過剰なプレスをすることは唇が鬱血し、口を壊す原因にもなります。でも、唇でつくられた振動をちゃんと楽器に伝えてあげなくては楽器は鳴ってくれません。せっかくつくられた振動を、唇を密着させることで楽器にしっかり伝えてあげること。これだけでも楽器の鳴りは変わるものです。
つい調子が悪いと焦る気持ちが優先して、基本的なことを忘れがちになるけれど、そういうときこそ基本を見直して、自分と楽器の付き合い方を考え直すいいきっかけだと思って地道に取り組んでみるといい気がします。
楽器は敵じゃない。最高の相棒だからこそ、自分の気持ち次第で鳴り方は変わると思います。
初めて楽器を手にする子も、調子を崩してしまっている人も、初めて音を出すときのことを思い出して、焦らずラッパライフを送っていけるとよいような気がしました。

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