BJ12月号 『「吹奏楽に特有の変なこと」の背景』を読んで

Band Journal 10月号に作曲家の後藤洋氏が「吹奏楽に特有の変なこと」として記事を書かれていました。それに対しては私もブログ(http://rapparapa.at.webry.info/201410/article_10.html)の中で感想を書きましたが、今回改めて後藤氏が『「吹奏楽に特有の変なこと」の背景』と題して、Band Journal 12月号 p.44に記事を書かれていたので、今日のブログはその感想をつぶやいていこうと思います。
後藤先生は今回の記事の中で、BJ 11月号の支部大会における出場団体の演奏についての講評を引用して、コンクールで見られる「変なこと」を具体的に指摘しておられます。
例えば、姿勢、打楽器のパフォーマンスめいた動き、ブレスの雑音、鳴らし過ぎ…など。
まさに後藤氏が10月号で述べられていた「コンクールのステージでしばしば目にするアマチュアバンドの不思議な風習」と合致していることがとても多いことに気付かされます。
それでは、講評でそのように書かれているのにもかかわらず、なぜそういうアマチュアバンドが多いのでしょうか。
そのあたりのことを、後藤氏は次のように述べられています。
「変なこと」をしているバンド、大音量のバンドがコンクールでは高い評価を得ているではないか、評価されたかったらそれを真似るのは当たり前ではないか、と。そのとおりなのだ。問題は吹奏楽そのものではなく、コンクールにある。限られた時間にほかの団体よりも強く自分たちの演奏を印象付けるためには、さまざまな側面で―選曲で、見た目で、インパクトのある表現で、場合によっては音量で―目立つことは大きな戦略になるだろうし、その戦略にまるめこまれてしまう審査員もいないとは限らない。音楽を評価することに徹する、という意味で審査員の責任(審査員を選ぶ側の責任も)きわめて重大であり、支部大会や全国大会に出場するバンドとその指導者も、「お手本」としての責任の重さを肝に銘じる必要がある。
また、後藤氏は私がブログ内で紹介した“とある全国バンドの先生の発言”を引用して、次のような問題提起をされています。
音楽的ではない演奏が「勝つ」のだとすれば、それは音楽のコンクールではない。指導者が納得できないことを生徒にやらせているとするのだとすれば、それは教育ではない。それでよいのだろうか?
私は、コンクールに出るからには「できるだけいい結果を残したい」と望むことは当然のことだと思います。でも同時に一番大切なのは「賞」という結果ではなくて、そこに至るまでにどんなことに気づき、どんな成長を遂げることができたかなのだと思います。
しかし、高い目標を持つからこそ、いろんな気づきがあり成長があります。だからやはり「金賞を目指したい」「上位大会進出を目指したい」という気持ちを持つことも大切なことのように思います。
その上で思うことは、「音楽的に奏でること」と「コンクールで”勝つ”」ことが同義にならないのだとすれば、やはり今のコンクールのあり方自体を考え直していく必要はあるのかもしれないということです。”勝つ”ために音楽が犠牲になり、”勝つ”ことが目標となってしまうことはどうしても避けたいところです。
確かに「音程が合っていない」「縦がそろっていない」という状態は、音楽を語る以前の問題だと言われてしまえばおしまいだけれど、何のために音程や縦が合う必要があるのか、それはやはり音楽を奏でるために必要な要素の一つにすぎません。
常に奏でたい音楽が先にあって、その為に何が必要かを考えること。
それが一番大切なことなのではないでしょうか。
音楽を奏でることが、上官の命令には絶対服従、勝つだけのために機械的に練習をこなす軍事訓練のようになってはいけないと思います。
それは練習でも本番でもコンクールでも同じことです。
先日のブログでも紹介しましたが、指揮者の大井剛史先生が、オケの練習の中でおっしゃっていたことを思い出します。
「みんなが学生時代どんな風に音楽をやってきたかわからないけれど、みんなからは生徒臭がする、生徒臭をさせないでくれ」
確かに日本の音楽教育は指導者が一方的に指示を出して、奏者(特に学生の場合)は受け身であることも多いのかもしれません。そうすることがコンクールで“勝つ”ことにつながるからなのかもしれません。でも、それでは本来作曲者が曲に込めた想いを自分たちの感情と結び付けながら表現することができるはずの音楽が、ただの勝敗をつける競技に変わってしまいかねません。
吹奏楽が音楽の入り口になる子どもたちがたくさんいる以上、教育的にどうか、という視点は忘れずにいたいものです。そもそも部活動の役割というのは、それを通して普通の授業では学べないことを学び、身に付けて、子どもたちを健やかに育てるのが目的だと思います。ここまで吹奏楽が発展してきたのにコンクールの影響は大きいと思いますが、また一つ発展が必要なのかもしれません。
最近ではコンクールやコンテストと呼ばれるものも多様化してきましたし、だんだん時代は動いてきているようにも思います。それだけに一番の老舗である全日本のコンクールも新しい”音楽表現の場”になっていけるといいように思います。
時間はかかるかもしれないけれど、「音楽を奏でることが最大の目的」ということがスタンダードと呼べる時代を若い世代の指導者たちがつくっていけたらいいなと思うし、自分もその一員として活動していけたらと思います。
(Twitterまとめ)

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2014-11-10

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