言葉の使い方次第でイメージは変わる ~相手に合った言葉を選んで使う~

トロンボーン奏者の福見良朗さんが、次のようなツイートをされていました。
この言葉を聞いたら気をつけましょう!!『腹式呼吸』,『息のスピード』,『純正律』,『前に(遠くに)飛ばして』,『のどを開いて』…。気をつけなければならない,むしろ弊害になる可能性のある言葉は,指導現場にほかにもまだまだたくさんあります。それよりも観察する,意識を向けることが大切。
自分もよく使ってしまう言葉がいくつかあったりします。
確かにこれらの言葉を使うことで改善されることもあります。でも逆に余計な力がかかってしまうこともあるし、それだけでも解決しないことがたくさんあります。指導者が自分の経験と感覚だけに頼って言葉にしたことが弊害になってしまうことは少なくないことです。
たとえば『腹式呼吸』
これは吹奏楽をやるからには必ず耳にする言葉だと思います。私自身も「お腹に息を入れて」「お腹で支えて」「丹田を意識して」「重心を下に」など、腹式呼吸にまつわる指示をたくさん受けて育ってきました。
「腹式呼吸の練習」をトレーニングに入れている学校も多いのではないでしょうか。それ自体は否定しませんし、「ブレスコントロールの練習」というものは確かに必要な練習だと思います。でも、それを実際に生徒にやらせるときに、上に書いたような言葉で指示を出してしまうと、変に力が入ってしまい、不自然な呼吸になってしまうことがあります。
実際に、お腹に息が入ることはありません。当然のことながら、息は肺に入るわけですから、胸のあたりが動くのは当然のことです。それを「腹式呼吸」という言葉のせいで、無理にお腹を動かそうとしたり、胸のあたりが動くことで結果として肩が上がるなどの状況が出てくることを悪とみなしたりすることは多々見られることです。
夏に南魚沼音楽村でエリック・ミヤシロさんのレッスンを受けた時にも、「お腹よりも“みぞおち辺り”を意識して」ということを言われました。確かに思っていたところよりも少し上を意識した方が、楽に演奏できることが自分自身でも、他の参加者の方を見ていても明確でした。
このあたりのことについての詳細はバジル先生のブログにとても分かりやすく書かれているので、私が改めて変に書くことはやめておこうと思いますが、自分自身が「重心を下に」を意識しまくった結果、演奏に弊害が出てきていることもまた事実であるということを書き添えておこうと思います。
呼吸の誤解を大掃除 〜これできょうからもっと吹きやすくなる〜 http://basilkritzer.jp/archives/1470.html
あとは『姿勢を正しく』という言葉も危険です。
「楽器を演奏するのに適した姿勢」というものと、「軍隊式直立不動の姿勢」というものは全く異なるものです。
自分自身かつては、「いすの前3分の1に座り、背筋をピンと伸ばして座る」のが最も正しい姿勢だと信じて疑わなかった頃もありました。でも大学でオーケストラに入り、トレーナーの北村源三先生に「深く座って背もたれの力も使って吹く」という方法を教えて頂いたり、アレクサンダー・テクニークのレッスンに通うようになって「とにかくリラックスして胸の辺りをゆるめて吹く(=結果として少し猫背になった感覚があるが、客観的には真っ直ぐ座って見える)」ということを教えて頂いたりする中で、生徒に姿勢のことを言う時には気をつけなければいけないなと思うようになりました。
結果として演奏していて楽にいい音が出せる姿勢が、その人にとって一番よい姿勢だということができるかと思います。だからこそ、見た目を重視して無理な姿勢で吹かせるのが音楽的かと言われたら、それは違うと思うのです。
そんなことをいろいろ考えていると、やはり部活という一定の枠の中ではありますが、できればプロの演奏家の方に、個人個人を定期的に見て頂ける環境があるというのが理想なのかなと思ったりもします。
大切なのは、相手がどの程度その言葉の真意を汲み取ってくれるかをよく考えて伝えていくことのように思います。それだけに相手の状況をよく観察して理解していることが必要なのかもしれません。また同時に、同じことを説明するにしても噛み砕いて伝えたり、他の言葉を使って表現したりできるように引き出しを増やしておくことも絶対に必要なことだと思います。
自分自身もトランペットやアレクサンダー・テクニークを専門的に勉強したわけではないので、どこまでできるか分かりませんが、子どもたちを指導する時にできるだけ一人ひとりを見て、一人ひとりの状態や理解度に合わせた言葉の使い方を選択していけるようになりたいなと思います。

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