マウスピースの選び方③ ~バックボアについて~

PIPERSの7月号の記事の中に「音程の良くなるTrpマウスピース選びのすすめ」というものがあったので、読んでみました。その中でTp奏者の築地徹氏は、特にバックボアに注目してマウスピースを選定することの大切さをお話しされていました。ということで、今日のブログでは少しバックボアについて書いていこうと思います。
バックボアについて、YAMAHAのHPには以下のように書いてあります。
バックボアは吹込管の内径に対応して複雑な広がりを持ち、特に、高音域の音程に影響します。また、バックボアの太さによって音色と抵抗感が変化します。一般にバックボアの細いマウスピースは、明るめの音色になり抵抗が増し、高音域の演奏が容易になります。逆に太いものは、暗めの音色で抵抗が減少し、低音域の演奏が容易になります。
私自身、バックボアにこだわり出したのは最近のことで、それまではスロート拡張くらいしか改造はしたことがなかったのですが、気に入って使うようになったV.Bach Artisan 1-1/2Cのマウスピースのバックボアがスタンダードマウスピース(#10)よりも太めの#24に近いということを知ってからこだわるようになりました。Artisanのマウスピースは、口当たりが好きだということはともかくとして、とにかく音色がよく、息もしっかり入る感じがしていたので、「これはバックボアの影響だったのか」と思ったわけです。
それ以来、ストークのDバックボアや、ワーバートンの☆10バックボア、V.BachやYAMAHAの#24バックボアなど各社のマウスピースで太めのバックボアにしたものを試してみました。しかし、Artisanに勝る吹奏感のものがなく、結局Artisanを使い続けていました。
ただ、スタンダードなArtisanモデルは少し抵抗感が強いと感じたので、4月にBrassProでV.BacnのArtisan 1-1/2Cのスロートを#27から#25に拡張してもらいました。そして、これでいくぞという決意を固めたことをこのブログでも宣言しました。
しかし浮気性な癖はすぐに治るはずもなく、実は今は違うマウスピースを使っています。きっかけとなったのは、ネットオークションでV.Bach 2C #24/87という珍しいモデルを手に入れたことです。これが非常に吹きやすかったこともあって、でもリムとカップはArtisanがいいということで、Toshi Tp Atelierの亀山さんにマウスピースを製作していただくことになりました。
製作していただいたのは、V.Bach Artisan 1-1/2Cをベースに、スロートを#24、バックボアを87番に拡張したものです。

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87バックボアは、Brass ProのHPでは「豊かな音量」、Bach社のHPでは「big, free blowing」と書いてある通り、非常に息の通りが良く、響きも豊かな感じがします。それに大きめの#24スロートを組み合わせることで、しっかりとした太い音が鳴らせるようになった気がします。スロートとバックボアを拡張して抵抗感が減った分、バテやすくなると思う方もいらっしゃるかもしれませんが、自分はその逆で、長時間吹いていても以前よりバテにくくなりました。それだけ今までは唇が抵抗に負けてしまっていたのかもしれません。確かに若干コントロールするのが難しい感じもありますが、ある程度トランペットを続けてこられたオケプレイヤーの方にはおすすめできるバックボアのように思います。
ただ残念なことにこの87バックボア、一般販売されている型番にはないので、Brass Pro経由でBach社に直接オーダーするか、亀山さんのような方に製作依頼をするくらいしか入手経路がないのが現状です。でも、一度吹いてみる価値はある型番だと思います(もちろん個人の趣味だと思いますが…)。
 ※Brass Pro: http://www.nonaka.com/actus/brasspro/lineup/mouthpiece/index.html
 ※Toshi Tp Atelier: http://www.toshi-tp.com/cgi-bin/WebObjects/118362a7160.woa/wa/read/11836314470/
とここまで「87バックボアが好きである」ことをとにかく言いたい放題書いてきましたが、少しPIPERSの記事の内容に話を戻していきたいと思います。
バックボアは上でさんざん書いてきたように音色にも大きく影響しますが、築地氏によると音程にも影響があるそうです。太いバックボアほど高音域の音程は高くなり、低音域の音程は下がっていく。細いバックボアほどその逆になるということです。確かに87バックボアにしてからその傾向は若干ですがあるように思います。当たり前のことですが、マウスピースを選ぶときには音色や吹きやすさだけでなく、音程の良いものを選んでいく必要があるので、単純にスロートやバックボアが太ければよい、というわけでもありません。自分でコントロールしきれる範囲で吹きやすいもの、音色の良いものを選んでいくことが改めて大切だと思いました。
また記事の中で築地氏は、「57番バックボアがロータリー用としてもっと認知されてもいいように思います」と述べておられます。57番はBrass ProのHPには「鮮やかなハイトーン」、Bach社のHPには「lively, helps raise pitch on some notes, good high register」と書いてありますが、以前Brass Proの店員の方にも「ロータリー用にいいですよ」と勧められ、私も現在ロータリー用はV. Bach 1-1/2C #25/57を使用しています。決してハイトーンプレイヤーのためのマウスピースという感じはなく、しっかりとした響きで鳴ってくれます。
今回の記事で特に興味深かったのは、自分自身が吹いてみた吹奏感を裏付けるデータとして、V.Bach社が出している10種類のバックボアについて、築地氏が独自に形状を測定した表が掲載されていたところです(下記参考)。

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※PIPERS 2014年7月号 p.28-29 表2より一部抜粋して作成

これを見ると、シュミットボアと呼ばれロータリー用として有名な7番よりも、シンフォニックモデルの24番の方がわずかながら太いということや、57番はかなり開きのはやい番号であることがわかります。また、標準の10番と24番は太さは違うけれど開き方が似ていることや、87番は24番と出だしは似ているものの、途中の開き方がはやいことが分かります。このように、BachやBrass ProのHPを見ただけではなんとなくしか分からないバックボアの違いが手に取って分かるような感じがします。
このようにマウスピースを見ていくと、リム、カップ、スロート、バックボアの組合せは無限で、自分の趣向に加え、曲やジャンルに合うものを探していくと本当にきりがないなと思います。
最終的には、自分の腕が物を言うわけですが、道具についてもいろいろ考えていけるとよいかなと改めて思うのでした(^^;

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