部活に求めていることは、一人ひとり違うかもしれません。
同じ吹奏楽部であっても、何がモチベーションになっているかは少しずつ違うものかもしれませんし、違うことが悪いこととは思いません。
例えば、
- 純粋に音楽が好きで楽しみたい
- 楽器が吹けるようになりたい(吹けたらかっこいい)
- みんなでまとまって何かをつくりあげていきたい
- コンクールでいい成績を残したい
- 中高時代の思い出をつくりたい
- 他に入りたい部活がなかった
など、入部の動機も人それぞれだと思います。
本来ならば、「音楽」をメインに考えて活動できたらな、と自分は思いますが、いろいろな形があってもよいかとは思います。
ただ、「部活動」も「教育活動」の一環である以上は、目先の利益ではなく、生徒が将来にわたってどう成長していって欲しいかというビジョンを持って指導する必要はあるかと思います。
今日は、そのあたりのことについて、つぶやいていきたいと思います。
|部活で求められるのは即戦力?!
トランペット奏者の高垣智さんが、次のようなツイートをされていました。
部活の指導に伺ってよく思う事の一つは、そこで求められている技術的指導は、一般に、とりあえずすぐに(それなりの)音が出るようになる事であり、その子がその後仮にもっと高いレベルの事をしたいと思った時にその吹き方では実は無理だと気づく事になるかどうかには必ずしも関心がないという事…。
— 高垣 智 (@SatoshiTakagaki) 2016年9月4日
僕の個人的な勝手な思いは、楽器の演奏を学ぶというのは一生続ける事のできるもの(一生かけて上達していくもの)だから、どこかで限界を向かえるけどとりあえず即席の結果が出て例えば部活の範囲内で使い捨てというような方法で教えたいとは思えず。
— 高垣 智 (@SatoshiTakagaki) 2016年9月4日
力任せにうりゃーとやったり、局部的に腹の筋肉や舌とか唇とかを操作させれば、とりあえず限られた範囲の事は比較的早くできるようになるかもしれない。一方で、丁寧にコーディネーションを養いながら可能性を広げるには、時間がかかる。でも最終的にはその方が強い。
— 高垣 智 (@SatoshiTakagaki) 2016年9月4日
本当に同感だなと。
部活で燃え尽きさせるのではなくて、中高生の時には、楽器が一生の相棒になるような土台づくりをじっくり時間をかけてやっていくのがベストだと思います。
しかし一方で、すぐに結果が出ないと、生徒自身も保護者も不満に感じることもあるし、即戦力を求めたがる現場の思惑もあるのは事実です…。
例えば、「コンクールに1年生を出さなければ」と急いで育てようとするバンドもあれば、「うちの子を早く本番に」と思う保護者もいます。基礎が大切だと分かっていても、それだけではつまらなく感じることもあるでしょうし、せっかく部活に入ったのにいつまでも本番のステージに立つことができなかったら、やる気をなくしてしまうこともあるかと思います。
しかも、中学・高校それぞれで部活をやれるのは実質2年~2年半です。その間に一定吹けるようになって、しかもコンクールでもそれなりの結果を出そうとしたら、成長を急がせようとするのも分からなくはない話です。
このように、実際の現場では「即戦力養成所」のような役割が求められていることも事実だと思います。
|子どもたちの気持ちはどうなのでしょう?
子どもたちが「早く吹けるようになりたい」「早く本番に出られるようになりたい」と思うのは当然のことです。そのように思うことは向上心の表れですし、決して悪いことではありません。
しかしだからといって、早く曲を吹けるようにすることだけを目標にして根性論で迫ったり、焦って無理に難しい曲を吹かせて、その場しのぎの癖が身に付いてしまうと、その後でもっとやりたいと思う意欲を失わせたり、もっとやりたいと思った時に遠回りをすることにもなりかねません。
また、「部活なんだから、中高の時だけ楽しめればいい」という考えもあると思いますが、それは個人的にはもったいない気もします。続けなくてはいけない義務はありませんが、続けていくことで得られるものはたくさんあると思いますし、続けたいと思ったときに無理なく続けるための技術が身につけられているかどうかは、とても大切なことだとも思います。
だからこそ「できた」という思いを積み重ねながら、じっくりこの成長の度合いに合わせて前向きに育てていくことを考える必要があると思います。そうやって育てていけたら、自然に「もっとやりたい」という気持ちがかきたてられていくような気がします。
子どもたちも、ダメ出しをされて強制的に努力させられるよりも、自分の中から自発的に湧き出てくる思いを大事にしてもらえた方が、やる気につながっていくのではないでしょうか。
|結果をすぐに求めたがる現代社会
最近は、結果をすぐに求める傾向が強くなっている気がします。
ちょっとやってみて、できなかったらすぐ諦めてしまったり、すぐに(他人にも自分にも)ダメ出しをしてしまったりということが、音楽に限らず増えてはいないでしょうか…。
指導のシーンでも、例えば
「1回言われたことは、その場でできるようにしろ!」
と言われることもあると思います。
確かにそういう気持ちでやってみること、理解しようと集中することは大事ですが、必ずしもすぐにできなくても、きちんと理解して身に付けることの方が大切な気もします。
もちろん、結果は大事です。結果が出たら嬉しいと思いますし、自身にもつながります。自分の目標とする結果のために、日々努力していくことは大切なことです。
でも、結果を出すためだけにやっていることでもないと思いますし、結果を出すためにはある程度時間がかかるものです。伸び悩む時期だってあるのだと思います。そこでどうしても投げ出したくなったら辞めることもありですが、少しでもその先に成長している自分を見出すことができるのだったら、もう少し工夫しながら頑張ってみることも大切なように思います。
自分で試行錯誤しながら上達を楽しんでいくことも楽器を演奏する喜びの一つです。
答えがすぐに見つからないものだからこそ、ずっと探究を楽しんでいけたりもすると思います。
目先ではない目標を持って、それを実現するための努力は惜しまずにやっていきたいものです。
|まとめ
確かに部活をやっている数年間で「できるようになった」「吹けるようになった」「もっとやりたい」と思うことができるような、目に見える結果や手応えを得ることは大切なことだと思います。
しかし、それは決して小手先のテクニックで何となくできるようにすることではないし、必ずしもすぐに結果が出ないことかもしれません。
いろいろな考え方があるとは思いますが、私は「生涯にわたって音楽を楽しむことができるような子どもたちを育てていきたい」というのが求めたい結果だったりします。
とはいえ、まだまだ自分は指導力不足で、生徒のモチベーションを上げることも、基礎的な力を高めるための指導も全然できていません。それこそ、試行錯誤の毎日です。
でも、それはただ辛いだけでもありません。少しでも生徒ができるようになったら嬉しいし、そのために頑張れているのだろうなと思うこともあります。
まずは自分自身の指導力をもっと磨いて、一人でも多くの生徒が笑顔で音楽を奏でられるような、そんな部活にしていきたいと思います。
口だけにならないように、頑張ります。