生徒の気づきを大切に合奏を進める!

全国の吹奏楽部はいよいよコンクールシーズンの到来です。
私が顧問をしている部活も例外ではなく、現在コンクールに向けて練習に励んでいるところです。
とは言っても、初めてコンクールに乗る下級生は右も左も分からない状態だったりもしますし、上級生も「頑張らなきゃ」という気持ちが空回ってしまい、なかなか本来の子どもたちのキャラクターを発揮できないまま時間が過ぎてしまいました。
私自身も、いつも「生徒主体で」と言っている割に、どうしても「何とかしなきゃ」と思うあまり、合奏でも自分が中心となって進めることが増えていきました。
そして、気づけば合奏中も生徒たちの思考が止まっている状態が多くなっていきました。その結果、なかなか生徒が自分で考えて「演奏をよくしよう」「自分たちで何とかやってみよう」という雰囲気がつくれずに、練習も何となく活気のないものになってしまいました。外部講師の方にレッスンして頂いてもその状況は変わらず、「毎日一緒にいる先生がもっとチェックしてくれないと困ります」「生徒たちは本当にやる気があるのですか?」と言われてしまう有様でした。
生徒のリーダーたちからも
「前で仕切っていても、みんなが反応してくれなくて困っている」
「雰囲気が暗くて、あまり良い状況だと思えない」
「どうしたら、みんなが意見を出してくれるのか分からない」
「もっとみんな真剣にやってほしい」

というような意見が集まるようになり、そのような状況まで生徒を思い詰めさせてしまったことに本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。コンクールではやはりできるだけいい演奏をさせてあげたいし、結果にも結びつけてあげたいと思うのは指導者の心理です。でも、それが自分自身を追い込み、しまいには生徒たちを追い込んでしまっていたことに改めて気づきました。
そこで、やはり自分の原点である「生徒たちの力を信じよう」という思いに立ち返って、今年のジャパンバンドクリニックで北斗市立上磯中学校の中條淳也先生が取り組まれていた方法を取り入れて合奏に臨んでみました。
それは次のような方法です。

① それぞれの楽器がだいたい半々になるようにA,Bのグループに分かれる。
② Aグループが演奏し、Bグループは前に出てきてスコアを見ながら演奏を聴く。
③ Bグループのメンバーが、聴いていて気になったことをAグループのメンバーに個々に伝える。できるだけパートや学年の壁も越えて、気づいたことを率直に伝えるようにする。
④ アドバイスをもらったことを活かして、再びAグループが演奏する。
⑤ 互いにフィードバックをした後、今度はBグループの演奏をAグループが聴くというように、②~④を繰り返す。
⑥ 最後に全員で演奏し、どうだったかを話し合う。

これまでも学年ごとや、セクションごとなどはやってきたのですが、ランダムに2つに分けてみるというのは初めてやったので、どうなるかは正直心配もありました。
すると、どうでしょうか。
今まで合奏中に意見を求めても沈黙していた生徒でさえも、どんどん気づいたことを仲間に伝えに行き、活発に意見交換が行われるようになりました。自分も途中で気になったことは伝えたりもしましたが、演奏をする度に状況も改善していきましたし、何より集中力や表情が断然良くなっていきました。
練習後に書いてもらった練習日誌にも、

「A,Bグループに分けてやるのが楽しかった」
「いつもは自分の音があまり聴けていなかったけれど、人数が少なくなってよく聴くことができた」
「人が吹いているのを聴いて、自分の音がどう聴こえているのか考えられた」

というように、とても肯定的な意見が並んでいました。
子どもたちには、気づく力があります。
その力を活かして音楽づくりをしていくことができるか。
それとも、指導者の言いなりにさせるのか。
自分はやっぱり前者を大切にしていきたいなと改めて思いました。
気づくことができれば、
「もっとこんな風に演奏したい!」
「ここをこうやって演奏するためにはどうすればいいのか?」

という望みが湧いてくるものだと思います。そこまで意識が高まってきたとき、子どもたちだけでは行き詰まってしまったら、大人がいくつかの道を示せたらいい気がします。
教育に特効薬はありませんし、今考えていることは時間はかかる方法かもしれません。でも、自分たちでつくっていこうとする気持ちが、生きている音楽を生み出していくような気もします。そして何より、長い目で見たときに、子どもたちの中に残るものも多いようにも思います。
教員をやっているとつい、伝えたいことが多くなってしまって、一方的になってしまいがちですが、生徒の気づきややる気を大切にして、その望みに手を差し伸べられるような指導をしていきたいなと思います。
まだまだこれから。頑張ります。

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