吹奏楽部員なら知っておきたい中学理科 ②音の速さ

吹奏楽部員向け中学理科、前回は「音の伝わり方」について書きました。「高校物理まで踏み込んでくれると面白いんだけどな~」というご意見も頂戴いたしましたが、今回はとりあず中学理科の教科書で学ぶことを利用して、引き続き書いていきたいと思います。いずれ「高校理科」シリーズもやってみようかなと思いますので、深いところまでご所望の方は、それまでお待ちくださいm(_ _)m

さて、第二弾の今回は「音の速さ」についてです。「速さ」というと、「あ~、計算いやだ~」と思う人も多いかもしれませんが、ついてきてくださいね。

 

音の速さを見てみよう!

音が伝わる速さは『秒速340m』と言われていますが、本当なのでしょうか。これを実際に調べた実験のVTRを見てみましょう。

◎音の速さを見てみようNHK大科学実験より)
このVTRの中で行われていた実験の結果を表にまとめてみました。

このように、音(発音体)の種類、音が届いた距離、届くのにかかった時間がそれぞれ異なっていたとしても、音が伝わる速さ(音速)は「1秒間に約340m」であることが分かるかと思います。

人が歩く速さは平均的には時速4kmと言われていますので、340m歩くのにはだいたい5分くらいかかる計算になります。そのように考えると音は1秒間でかなり遠くまで届くとも考えれるかもしれません。

一方で、光の伝わる速さ(光速)は「秒速30万km」と言われています。

30万kmとは、地球を7周半する距離です。日本列島の長さが約3000kmと言われていますから、1秒間で日本を50往復できるような速さで光は進むと考えることができます。

このように光と比較すると、音の速さというのは意外と遅いのかもしれません。

よく比較対象として取り上げられるのは、「雷の稲光と音の関係」です。雷が「ピカッ」と光ってから、「ゴロゴロ」と音が鳴るまでには時差があることが多いと思います。これは、光の速さがとても速いのに対して、音が伝わる速さが遅いために、雷が落ちた場所から光が届くまでの時間と、音が届くまでの時間に誤差が生じることが原因です。

例えば、稲光を観察してから5秒後に「ゴロゴロ」という音が聞こえたとします。光速はとても速いので、雷が落ちたのと同時に目に入ってきたと考えられますが、音速から考えると、
340m/秒 × 5秒 = 1700m
となり、自分のいる場所から1.7km離れたところに雷が落ちたことが分かります。

このように、光ってから音が聞こえるまでの時間を測ることで、雷が落ちた場所までの距離を知ることもできます。

 

メトロノームは音を聴く? それとも動きを見る?

上に書いたように、音が伝わる速さというのは、光が伝わる速さに比べるとかなり遅いということがあります。

私たちが目で見て情報として取り入れているものは、光によって伝わっている情報ですから、視覚情報というのはかなりオンタイムで伝わってくるものだといえます。しかし耳からの情報は、どうしても目で見て入ってくる情報よりはかなり遅れて入ってきてしまうものです。

一定のテンポをキープする練習をする時に、メトロノームはテンポを示す指標として便利な道具です。

個人練習の時には、音が鳴る間隔を体で感じることで、一定のテンポ感覚を身につけるのに有用な道具だと思いますが、合奏練習でメトロノームを使う際には、「音が聞こえてから入る」だと、奏者の場所によって誤差が生じてしまい、結果としてタテの線は合わなくなってしまいます。

たとえば、音楽室の一番後ろと一番前ではだいたい5mくらいの距離があるかと思います。5mの距離を音が伝わるには、
5m ÷ 340m/秒 ≒ 0.015秒
かかることが分かります。

指揮者の横でメトロノームを鳴らしているとして、一番後ろの列に届くまでの時間が0.015秒、音が聞こえてから脳が判断をして音を出すまでの時間が0.15秒、音を出してから指揮者のところまで音が届くための時間が0.015秒とすると、合計0.18秒かかることになります。

 

0.18秒というとかなり瞬間的な時間のように感じるものですが、実際0.18秒違うと次に示すくらいはタテがずれて聴こえます(「ピ」という音がだぶってきこえるはずです)。

 

このように、メトロノームを使って練習することは決して悪いことではありませんが、合奏練習の中で、ハーモニーディレクターのメトロノーム機能を使って、ひたすら「ピコピコ」鳴らして、その音に合わせて練習するというのは、あまり効果的ではないような気もします。

それよりは、メトロノームの振り子運動を見たり、指揮者がいれば指揮を見て、それに合わせていった方が、よほどタテを揃える練習にはなるように思います。もちろん、そうするためには指揮者がきちんと一定のテンポで振れる力を持ち合わせることも必要なわけですが・・・。

 

広めのホールでは、舞台の最後列と客席の後方の距離は約40mだと言われています。つまり、音がとどくためには、
40m ÷ 340m/秒  = 0.12秒
もの時間がかかる計算になります。最前列だとその距離が約35mと考えて、
35m ÷ 340m/秒  = 0.10秒
となりますから、最後列にいるトランペットやトロンボーン奏者は、最前列のフルートやクラリネット奏者に比べて少し前のめりに演奏する必要もあるのかもしれません。

周りの音を聴いてバランスをとったり、音程を合わせていくことは大事なことである反面、すべての場面において、音を聴いてから自分が何かしようとすると、少しずつ遅れてしまいます。それを演奏者一人ひとりがやっていたら、タテがそろうことはとても難しいことだと思います。

道具に踊らされずに、その機能を十分に生かしながら、でも自分たちの感覚を研ぎ澄ませたり、空間をどのように音が伝わっていくかを意識して、みんなで合わせていけたらいいのかなと思います。

 

まとめ

  • 音速は秒速340m
  • 光速は秒速30万km
  • 視覚情報の方が聴覚情報よりも882倍速く伝わる

 

連載の最終回は、「音の高低と大小」について書きたいと思います。

 

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