チームづくりに大切なこととは?!

吹奏楽もオーケストラも、一人ではできません。大編成、小編成など人数の違いはあれど、考え方も感じ方も異なる複数の人間が、いろいろな楽器を持ち寄って、それぞれ自分の持ち味を出しながらつくっていく「チームの音楽」だと思います。

それだけに、意見が食い違ったり、モチベーションが違ったり、目指すものや大切にしたいものが違ったりすることはよくあることです。

そうした「違い」が互いを奮い起たせたり、高め合ったりできるもののうちはよいのですが、逆に足の引っ張り合いになったり、音楽そのものに嫌気がさしてしまう原因になってしまったりすることも少なくないような気がします。

今日は、そうした「チームをつくっていく上での問題点」について考えてみたいと思います。

 

違いが生まれるのは当たり前!

日本人は農耕民族で定住生活を送ってきたせいかどうかわかりませんが、「人と違うことはしない」「自分だけが目立たないようにする」ことで、周囲との調和をはかろうとする気質があるような気がします。それは、他の攻撃から身を守るという自衛本能によるものかもしれません。そのため、学校教育においても、「みんなで同じことを目指す」「みんな仲良くする」という風潮が強いように思います。

そうした謙虚さも、みんなで頑張ることも、仲良くすることも、もちろん大切なことです。しかし一方で、「みんなと同じでなければならない」という思考が強すぎると、そこから外れてしまった子を仲間外れにしたり、いじめの対象にしたりということも起こってくるように思います。

この世の中には、誰一人として同じ人間はいません。

遺伝学上まったく同じである一卵性双生児でも、よく見ると顔つきも違いますし、性格も違います。これが家庭環境も生育環境も異なる全くの他人同士であれば、考え方も感じ方も大きく異なってくることは当然のことです。逆に一人ひとりが違うからこそ、困難な状況でもそれぞれの力を出し合って生き延びることができてきたようにも思います。それは、生命が誕生して40億年、種を絶やさずに子孫を残していくために考え出された一つのシステムであるともいえます。もし全員が同じ個体であったとしたら、困難な状況に対応できなかった時に絶滅につながってしまうからです。

違いがあることは、当たり前。

一人ひとりが違う個性を持っているからこそ、それぞれの役割を果たしながら、社会が動いていくように思います。個性がぶつかることはあるでしょう。でも、まずは「違いがあること」を受け入れることができるか。「みんな一緒に」という考え方が度を越えてしまうと、その違いを認めることができず、「自分と同じ考え方以外は受け付けない」、しいては「自分が絶対」という感情に結びつき、憎しみや争い事を生み出すような気がします。

 

「伝えたい」という気持ちを出していくこと

しかし、「一人ひとり違った個性を持っているのだから、人それぞれでいいじゃん!」と割り切りすぎてしまうのも考えものです。もちろん「人それぞれ」であるわけなのですが、「互いのことに干渉しない」ということが度を越えて、「互いのことに興味を持たない」になってしまうと、チームで何か活動をしていくことは難しくなります

先日、吹奏楽指導者としても活躍されている山下篤さんが、次のようなツイートをされていました。

何でもかんでも言うのがいいとは限らないですが、黙って察してくれるのを待っているだけでは、気持ちがすれ違ったままです。自分から察しようとしたり、言葉を発して伝えようとしたり、何らかのアプローチをお互いしていかないと、相手には自分がどんな人なのか、どんな考えを持っているのか、どんな気持ちでいるのかは分かりません。

互いに自分の思っていることを吐き出して、ぶつかり合うことになったら怖かったり、辛かったり、面倒臭かったりすることも当然あるでしょう。思いを率直に伝えるあまり、嫌な思いをしたり、逆にさせてしまったりした経験がある人も少なくないのではないでしょうか。関係がこじれて面倒くさい思いをするくらいならば、そっと自分の思いを心の中におさめてしまった方がいいと感じる人も多いかと思います。

私自身、元々の性格は割と言いたいことを真っ直ぐに言ってしまう方なので、それが原因で失敗したこと、人を傷つけてしまったことがたくさんあります。失敗を繰り返していくうちに、自分を抑え込んだ方が上手くいくのではないかと思い、昔より感情を表に出さなくなったようにも思います。それを「成長」と呼べばよいのかもしれませんが、逆に「何を考えているのか分からない」と言われることも多くなったように思います。

今はSNS全盛時代。直接であってもSNS上であっても、言いたいことを率直に言ってしまった結果、ネット上で炎上したり、ネットいじめが起こったりということもあるかと思います。また匿名で何でも発信できてしまうため、わざわざ直接相手に伝えなくても、自分の言いたいことを発信して、周りに共感してもらうということも簡単にできてしまう時代にもなっているように思います。子どもたちも、そうした環境の中で育っているため、知らず知らずのうちに直接相手と本音でぶつかり合うということを避けるようになってきているようにも感じています。

このような状況の中で難しい面もあるかもしれませんが、やはりコミュニケーションを積極的にとり、互いのことに興味を持って、直接伝えようとすることは絶対必要なことです。特に音楽を演奏するということは「人に伝える」ということでもあります。それだけに、音楽を奏でようとする集団であるならば、互いに「伝える」ということに貪欲である必要もあるように思います。

誰かに自分の思いを「伝えたい」という望みは、誰の中にもあるものだと思います。そして、それを音楽という手段で表現して実現していくのが“演奏する”ということだと思います。「伝えたい」がなかったら、奏でる音楽もただ音符を並べただけのものになってしまいます。そこに思いがあるからこそ、「伝わる演奏」になる気がしてなりません。まずは「伝えようとすること」から始めていくことが大切なように思います。

ただし、「伝えること」は「分かってもらうこと」「自分と同じ考えになってもらうこと」とイコールではありません。相手に「受容」ではなく「理解」まで求めてしまうと、苦しくなることもあるような気がします。相手の思考や思想を自分の力で変えることはできません。

ただ「伝える」だけ。そして、相手の考えを「そういう考えもあるんだ」と受容すること。そこからチームづくりの土台となる関係性ができてくる気がします。

 

「伝える」ことに積極的になれる環境づくりを!

「伝える」ことが得意な人もいれば、苦手な人もいます。誰もが同じように「伝える」ということができないかもしれません。でもそこで「自分は伝えるのが苦手だから黙っておこう」と諦めてしまったり、「あいつは何も言わないから意見がないんだ」と決めつけてしまったりするのではなく、一人ひとりそれぞれが、自分のペースでいいから自分の思いを伝えることができるような環境を、集団のリーダーとなる人は意識的につくっていくことも必要な気がします。

特に学校現場においては、教員となるような人の多くは自分の思いを伝えることが得意だったり、好きだったりする人が多いように思います。ともすると、「何で自分の思っていることを言えないのだ!」「自分の思っていることくらいはっきり言え!」と思って、生徒を頭ごなしに叱ってしまう教員もいるかもしれません。でも、伝えるのが苦手な子どももいるということを理解して、一人ひとりの性格や状況に応じて、自分を出せるような環境づくりを考えていくことも私たち教員には求められているような気もします。

自分自身、子どもたちが安心して自分の気持ちを発することができる環境をつくれているかといったら、実際にはできていません。まだまだ子どもたちも互いにけん制し合いながら様子をうかがっていたり、できれば自分の意見を言わずに済ませたいと感じているように見えたりすることもあります。そこは自分の力不足。もっと一人ひとりと関わって、安心感のある環境をつくらなきゃなと思っています。

難しいところではありますが、吹奏楽部の顧問を務めるにあたり、音楽をやる部活、人に何かを伝えようとする部活だからこそ、一人ひとりが「伝えたい」という気持ちを大事に育て、発信していけるような環境づくりをしていく必要はあると思います。その上で、一人ひとりの思いを出し合って、建設的に音楽づくりのできるチームに育てていくのが目標です。

 

まとめ

みんなが同じである必要はありません。でも一人ひとりが違う自分を持っているからこそ、一人ではできないことが、みんなの力を出し合っていくことで実現できることもありますし、自分だけでは思いつかないようなことでも、他の誰かの気づきによって引き出されることもある気がします。

もし「ただ完璧に吹き方も解釈も一致した演奏」を目指すのであれば、コンピューターに打ち込んだり、一人の人間が録音したものを何重にも重ねていって一つの音楽をつくり出すという方法が最もよいかもしれません。でも、それでは吹奏楽やオーケストラのライブで得られる臨場感は得られないと思います。一人ひとり違う人間が、それぞれの持ち味を出して演奏するからこそ生み出せる音楽のオモシロサがそこにはあるのだと思います。

このように、誰もがかけがえのない唯一の存在で、それぞれ大事な役割を持っています

一人ひとりが自分の存在を大事なものだと認識して、自分を出していくことは悪いことではなく、みんなで良いものをつくっていくために必要なことなのだと自信をもって欲しいし、決して自分自身を卑下して、誰かに従うだけの音楽になって欲しくないなと思います。

必要以上にぶつかり合って互いを傷つけ合うことは避けるべきですが、一人ひとりが自分の思いを出し合って、様々な意見を受け止めながら、皆の力で良いものを目指していけたらと思います。

一筋縄ではいかないことも多いですが、それを忘れずにチームづくりをしていきたいものです。

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