小さな変化や上達を認めて伸ばすこと ~教育の悪循環を断ち切るためにできること~

今日のブログもTwitterでのやり取りをもとに書いていこうと思います。
きっかけとなったのは、トランペット奏者の高垣 智さん(@SatoshiTakagaki)さんの次のツイートでした。
愚痴めいた事ばかりになってすみません。ただ、部活の管楽器指導では、小さな変化や小さな上達を大事にする視点がなさすぎではないでしょうか。小さな上達がどれだけ貴重なもので且つどれだけ容易く潰され得るものか…。コンクールに間に合わせる事だけが教育ではないと僕は考えます。部活も教育なら。
罵倒し怒鳴りつけ、教育「のような事」をしながら音楽「のようなもの」によってコンクールに勝ち名声(と金)を得る(一昔前の日本の典型的有名)指導者たちは、今後は淘汰されていくだろう事にそろそろ気づくべきだ。大人も学生も何かがおかしいと気づき始めている事に、気づくべきだ。以上です。

確かに色々な方とお話すると、教育と見せかけた「軍事訓練」のような音楽指導の在り方をおかしいと感じている人は増えていると感じます。機械的一方的に叩き込むのではなく、音楽を通じてどう人の心を育てていくか。それが最終的に技術にもつながっていくように思います。
小さなミスを細かいところまで突き詰めて追いつめてしまうことの方が、小さな変化や上達を認めて伸ばすことよりも実際には多い気がします。指導者がそうだから、生徒たちも同じような思考になり、自己肯定感を失っていく。これが教育の悪循環になっている気がしてなりません。
例えば、「音量が足りない!」と言って何度も繰り返させるよりも、「さっきより鳴るようになってきたね。その調子でもう少し深いブレスを意識しよう」「深くブレスをとるには何に気をつければいいんだっけ?」などと進めていった方が、結果として響きのある音で求める音量を出せるようになると思います。
「注意」や「指摘」は緊張を生み、心も身体も硬直させます。一方で、「受容」や「認知」は安心感を生み、心も体も自由になれます。その上で必要な助言をすること。でもそれを受け入れるかどうか、相手の自由は残しておくこと。相手に即した言い方で、時には問いかけながら、相手が持っている力を発揮できるように促していくことが大切なことのように思います。

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昔「分かるまでは教えません」と銘打った塾がありました。言われてみれば、分かるまで手とり足とり教えていたら、人は考えることをしなくなってしまいます。自分の頭で考えなかったら、いっこうに自分の力でできるようにはなりません。ヒントは出しても、答えまでは教えない。本当に生徒を育てようとしていたのだなと今では思います。
ヒントも出さずに放置するのはまた違う次元の話だけど、「教える」と「教えないで待つ」のバランスとりが指導者の腕の見せ所なのかもしれないと思います。コンクールでも入試でも期限があるからついつい「教え込む」「叩き込む」になりがちだけど、その先にあるものを見失わずに教育と向き合っていきたいところです。
これにたいして、トロンボーン奏者の福見吉朗さん(@fukurou293)が次のようなコメントを下さいました。
コンクール,『期限があることの大変さ』というのを痛感しますが,『結果を要求する』ではなく『道を示す』ことは忘れないでいたいなと思います。はたしてできているか疑問ですが…。そして音楽には終わりがない。期限までにどこまで行けるのか,それは神のみぞ知ること。
一方で,ピンポイントの目標に向かって全力を尽くすこともまた,とても意味のあることなのですよね。要はやはりやり方なのだと思います。そして見据えるもの。『賞』なのか『成長』なのか…。もちろん賞も大切なのですが,それをめざす過程でなにを得るかが,やはり大切。

『目指す過程でなにを得るか』本当に大切だと思います。明確な目標を持って努力することは大事だけれど、それが叶わなかったとしても、成長を自分自身で実感できるような取り組みが必要なのかと。そのあたりはアプローチの仕方次第でいかようにもなるものです。
音楽には終わりがないからこそ、目の先の結果に惑わされずに、目の前の道を着実に歩んでいけるためのコンパス的な役割ができたらいいなとも思います。つい期限が見えて焦る自分と上手に付き合っていきたいものです。
すぐに結果は出ないかもしれないし、手も余計にかかるかもしれません。初めは手とり足とり教えることも必要かもしれない。でも、一人ひとりが持っている力を信じて、その力を出し合って音楽をつくっていくこと。その過程を通じて成長を後押ししていくこと。それが今の指導者に求められているように思います。

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今の自分にそれができているか尋ねられたら、自信を持ってYesとは答えられないけれど、音楽をやっている限り、教育に携わっている限り、子どもたちが心から音楽を楽しんでいけるように力を尽くしていきたいという気持ちは嘘ではありません。
時々折れそうにもなるけれど、ゆっくりじっくりやっていこうと思います。

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