先日、BodyChanceの特別ワークショップ「先生のためのアレクサンダーテクニーク」に参加してきました。そこでは、授業での話し方や生徒との接し方など、普段の仕事に直接役立つアクティビティをたくさん学ぶことができました。その中でも一番心に残ったのは、「伝えようとする相手の頭の中のことに集中する」ということです。
相手が考えていることを読み取ることができるなんて、おこがましいことかもしれません。でも、「何を考えているのだろう」「自分の言葉は届いているだろうか」ということを思い浮かべながら、相手の頭の中に向けて一つ一つ言葉を発してみると、声の響きや大きさも変わってくるし、何より言葉の中身が押しつけがましくなく、でもはっきりと聴き手の意識の中に入ってくるということを、このワークショップで体感することができました。
そして、「伝える」という意味では、学校での生徒とのかかわりはもちろんですが、普段の人間関係でも同じことだと感じましたし、音楽をやる上でも共通していることだなと思いました。
音楽でも言葉でも、ただ伝えたいという自分の気持ちを押し売りするのではなく、伝えようとする相手を含めた空間全体を意識してみることは大切です。相手とどうつながりを持ち、相手がどう受け止めているかを感じ取ろうとしてみるだけで、相手が受けとる印象はだいぶ変わるものです。
どんなに説得力のある言葉であっても、どんなに上手な演奏であっても、発信側が受信側とつながりを持とうとしていなかったら、相手の心に響くものにはなりません。発信者と受信者が同じ空間に存在し、同じ時間を共有していることを常に意識することを忘れずにいたいものです。
発信者は発信すると同時に受信もしている。
受信者は受信すると同時に発信もしている。
だからこそ生の演奏というものはその時にしか生み出せない特別なパワーに背中を押されているような気もします。せっかく聴いてくれる相手がいるのなら、相手が持っているパワーを演奏の糧にしない手はありません。
よく緊張を和らげる言葉として、「お客さんはじゃがいもだと思ってやればいい」と言われることがあります。私も本番でとても緊張する方なので、その言葉を自分に言い聞かせてきたところはあります。でも、「お客さんはじゃがいも」ではありません。緊張を助長する悪者でも敵でもありません。お客様がいるからこそ、いつもはできないようなパフォーマンスをすることができることもあります。お客様が盛り上げてくれるからこそ、気持ちが高揚して自分でもよくわからないうちにその場の雰囲気でできてしまうことも意外と多いような気がします。
緊張して上手くいかないのは、「自分をより良く見せよう」という潜在意識だと思います。失敗しない完璧な自分を演じようとするのではなくて、それまでに頑張ってきたことをただありのままに出そうとすること。自分をよりよく見せる必要もありません。素の自分を素直に出していった方が、聴き手にも伝わるのだと思います。
これは普段の人間関係でも言えることです。自分が自分の殻に閉じ籠って、どうせ分かってもらえないだろうと諦めたり、自分を必要以上に大きく見せようとしたりしても、相手に本当の自分が伝わることはありません。素の自分を出すことで、安心して繋がりをつくることができるようになると思います。
そんな柔らかい繋がりをつくりながら、授業も、部活も、音楽活動も楽しんでいきたいものです。
相手とつながって発信すること ~「お客さんはじゃがいも」じゃない~
iQiPlus
聴衆を意識して演奏することは、演奏の上達過程でかなり大きなステップの一つですね。
演奏の上達過程では、まず楽器との対話、楽譜との対話、聴衆との対話、自分との対話の順に意識が広がっていくように思います。
その中で、楽譜との対話から聴衆との対話への壁は大きいだけに、超えると風景が変わり演奏も変わりますね。
面白いのは、視野が広がった結果、結局自分は何を表現したいのかに戻ってくるところですね。
コメントありがとうございます。
聴衆との対話まで持っていくのはなかなか大変だなと思いつつ、そこが楽しめると本当に感じ方が違ってくるなと思います。自分も少しでもそういう世界に身をおけるように頑張りたいところです。