当たり前のように毎日使っている腕。あまりにも使うことが当たり前になりすぎて、どのようなしくみになっているのか、どのように動ける可能性があるのかは、なかなか考えることも多くはないかと思います。
しかし、動ける可能性を知らないことで、本来持っている「腕」の動きが窮屈になっていることも少なからずあることです。もちろん、知ったからといって何かがすぐにできるようになるわけでもないと思いますが、知っていることで、できるようになることも広がるような気がします。
|「腕」とはどこのことだろう?
私たち脊椎動物は、背骨を中心として体が動くしくみになっています。
この動きの根幹ともいえる「軸骨格」は、頭蓋骨、肋骨、胸骨、脊柱(頚椎、胸椎、腰椎、仙骨、尾骨)あわせて80個の骨からなっています(図1上の青い部分)。
そして、いわゆる「腕」と呼ばれる部分は、この軸骨格につながる形で存在しています(図1下の青い部分)。
図1.軸骨格と腕
つまり、腕が単独で動いているわけではなく、腕も身体の根幹となっている「軸骨格」と連動して動くということが言えるわけです。
その証拠に、頭と首をギュッと固めてから腕を動かそうとすると、非常に動きがぎこちなくなります。腕を動かす時にも、軸骨格が自由に動ける状態にしておく(=プライマリーコントロールがはたらいている)状態にしておくことはとても大切なことなのだと思います。
|「腕」と軸骨格はどこでつながっているのか?
腕に含まれるものは、鎖骨、肩甲骨、上腕骨、尺骨、橈骨(とうこつ)、手根骨、中手骨、指骨と考えられます(下図。鎖骨が抜けていますが…)。
上で書いたように、腕の動きは軸骨格と連動しています。では、「腕」と軸骨格つないでいるのはどこなのでしょうか?
それは、「胸鎖関節」と呼ばれる、胸骨(軸骨格)と鎖骨(腕)をつなぐ関節です。
実際、肩鎖関節にあたる部分を手で触りながら腕を動かしてみると、実にダイナミックな動きをすることに気づくことができます。
また背中側では、胸郭の表面を肩甲骨がスライドするように動いています。胸郭と肩甲骨は、筋肉や鎖骨を介して連結しているため、肩甲骨、胸鎖関節、肩鎖関節(肩甲骨と鎖骨をつなぐ関節)は常に連動して動きます。2人組になって、一人が相手の肩甲骨を触り、もう一人が腕や肩を大きく動かしてみると、肩甲骨がどれだけダイナミックにたくさん動くかを確認することができます。
ですから、腕の機能をより最大限まで引き出そうとするならば、
- 腕は胸鎖関節からはじまっている(鎖骨が含まれる)
- 肩甲骨はダイナミックにたくさん動くことができる
ということを意識してみることが大切だなと思っています。
動けると認識している部分が増えれば、それだけ実際に動くことができる部分(可動域)も広がりますから、できることの可能性も広がります。ヒトは、せっかく直立二足歩行をはじめ、前足を「腕」として物をつかんだり、道具を使ったりすることができるように進化したわけですから、本来持ち合わせているはずの腕の機能を知って、最大限に使えるようにしておけると、お得なのかなと思います。
|楽器を構えるまでの動きを観察・分析してみる
最終的に楽器を構えるまでの流れは様々だと思いますし、実際には同時に行っていることも多いので、必ずしも手順通りとは言えませんが、まず私が今意識してやっている流れを書き残しておきます。
[トランペットを構えるときの動き] ※座奏を想定
① 頭が動けて、からだ全体がついてきて、(プライマリーコントロールの確認)
② 股関節を少し屈曲させ、楽器がある高さまで上体を少し倒して、
③ 楽器に手が触れたら、右手と左手ではさむように持って、
④ 股関節を少し伸展させ、椅子の座面に座骨で座れるところまで上体を起こして、
⑤ 肘関節を屈曲させ、楽器を胸の正面の高さまで持ち上げて、
⑥ 肩甲上腕関節(肩関節)を屈曲させ、楽器を顔の高さまで持ち上げて、
⑦ 肘関節をさらに屈曲させ、マウスピースを口のところにもってきて、
⑧ 手首の撓屈と尺屈を使って吹きやすい角度に調整する
このようにいったん自分のしていることを分析してみると、「楽器を構える」という行為だけでも、身体の様々な部分が多様な動きをしていることが分かります。また、自分のしていることを順を追って理解できていると、再現度も高く、調子を崩した時などに、何がうまくいっていないのかを確認するポイントとしても使えるような気がしています。
また練習をしていくうちに、自分と楽器の関係性も変わってきたり、もっと自分のしていることを細かく観察できるようになって、今意識してやっていることとは変わっていくこともあると思いますが、現時点ではしばらくこのルーティーンでやっていけたらと考えています。
ーーーー以前のブログ記事からーーーー