「心は熱く、頭は冷静に」本番のステージを迎える!

明日(=令和最初の日)は部活の定期演奏会。今日は平成最後の練習日でした。

平成最後のつぶやきは「本番をどのような気持ちで迎えてほしいか」というテーマで生徒に配布した部内通信からです。

 

本番を迎えるその時まで、力は伸びてい

本番までの日数が限られてくると、「あと〇日しかない」と焦りを感じてくることもあると思います。

「もう〇日しかないから無理だ~~」と思う気持ちも分からなくないですし、それまで一生懸命練習してきたのに目に見えるような上達が見えてこなかった場合は尚更「もう無理かもしれない」という思いも強くなるかもしれません。

下の図は以前のブログにも使わせて頂いたものですが、練習の時間と成果についての相関をグラフにしたものです。

トランペット上達ネットより)

よく青矢印で表されるように「頑張ったら頑張っただけ比例して上手くなる」と言われますが、実際には赤矢印で示されるように「停滞期と加速期」があって、それが何回も何回も繰り返されていく中で少しずつ上達が見えてくるものなのだと思います。

頑張ってもすぐに報われなかったら、悩んだり、つらくなったり、諦めたくなったりすると思います。でも、そこで努力することを辞めてしまったら、本当に上達はそこで終わってしまいます。逆に、努力を辞めなかったら、最後の最後まで上達する可能性は残されるということになります。

本番のその時まで、自分の可能性を信じて、いろいろ工夫を重ねながら実験を積み重ねていくいくことで、必ずできるようになることは増えていきます。そして、本番はお客様という心強い味方を迎えて、さらに力も発揮できる可能性を秘めています。

諦めたらそこで終わりですし、諦めた状態でお客様に何かを伝えることはできません。「自分たちはまだまだできることがある」「お客様に伝えたいことがたくさんある」という気持ちを持ち合わせて本番に臨むことで、本番でベストのパフォーマンスを引き出せるのではないでしょうか。

 

本番まで、何を思って過ごすか

では、本番までの残された時間が本当に限られているとき、私たちには何ができるのでしょうか。

それは「演奏が終わって舞台から下りるその瞬間まで、『お客様にどんな音楽を伝えたいか』を考え続けること」だと思います。

そのためには、「一人ひとりが曲のことをよく理解していること(流れがきちんと分かっていること)」「自信をもって自分の演奏をお届けできるようになるまで、諦めずに練習すること」が必要です。

一方で「お客様にどんな音楽を伝えたいか」と言われても、漠然とし過ぎていて、何を伝えればいいのか、どうやって伝えればいいのか分からないという人も多いかもしれませんが、私はそんなにかしこまって難しいことを考える必要はないと思います。

確かに丁寧に楽曲分析をし、曲の背景を調べ、作曲者がどんな思いでこの曲を作ったのかを知り、それをどのように表現すればよいのかを徹底して考えてみることも大事なことですし、本来はすべきことです。でも、そこまでしなくとも、お客様に私たちの音楽を伝えていくことができる方法があります。

それは、「本番で演奏する曲一曲一曲について、好きなところを思い返してみる」ということです。

恐らくこれまで、それぞれの曲を演奏するためにたくさんの練習を重ねてきたことでしょう。もしかしたら目の前にある譜面をこなすことだけに精一杯になって、そこまで考える余裕がない人もいるかもしれません。でも、これだけ時間をかけて練習してきた曲です。「この曲はこういうところがかっこいいな」「この曲のここはすごくいい響きがする」とか、「このハーモニーがバッチリ合うと、ゾクッとするな」「ここはあのパートと一体感が持てて楽しいな」とか、「ここは難しかったから頑張って練習して出来るようにしたから聴いて欲しいな」など、何かしら曲に対しての思い入れは出てくるものではないかなと思います。

譜面を見ながら、音源を聴きながら、今までの練習をゆっくり思い返してみます。もしかしたら、もうこの曲は一生演奏することがないかもしれません。少なくとも、同じメンバーで演奏することは二度とないでしょう。そんな風に考えてみると、急に今まで仲良しだった友達がいきなり離れていってしまうような寂しさを感じたりしないでしょうか。せっかくこれまで練習を重ねてきた曲。一人ひとりが演奏する1曲1曲を愛おしく思って、ていねいに、大切に演奏してあげること。それだけでも、お客様に伝わるものはたくさんあるのだと思います。

 

「共感」することを大切に本番を迎える

とは言っても、本番だけ頑張ろうとしても、土台が固まっていないのに本番だけいい格好をしようとしても、空回りしてしまうだけです(経験者は語る)。「本番で力を尽くして頑張る」ためには、本番までのところで、演奏面だけでなく、行動面についても見通しを持ち、どれだけ自信をつけられるかも重要なことです。

もちろん、技術的にタイムオーバーになってしまうところもあると思います。ただ直前であっても、自分の譜面だけでなく、「曲の全体像」をつかんで演奏するようにはできるはずです。頭の中でいいから、曲の頭から一曲通して音楽が流れるかを確認してみて下さい。あいまいなところがあるようなら、音源を何度も聞いてみることです。それだけでも、音楽にノって、お客様に伝えようとする心が熱くなってくるはずです。そして、一人ひとりがその熱い気持ちを持って演奏することで、演奏会全体の仕上がりは変わってくるものですし、お客様に伝わるものも断然増えてくるはずです。そして、たくさんのお客様の拍手に包まれて、充実感や達成感として自分たちにプラスになることが返ってくることでしょう。

今年度の部活の目標は「共感」というものでした。毎年生徒たちは素敵な目標を立てるなと思っているのですが、今年度も今の部活に求められていることを上手に表現した目標だったなと思います。

「共感」は「共に感じる」と書きますから、絶対に共感する相手が必要なことです。吹奏楽は、一人では奏でることができない音楽形態です。音色も音域も異なるたくさんの種類の楽器があって、それぞれの楽器の特性を生かしながら、「吹奏楽」という形態でしか出すことのできない響きをつくり出すことができます。しかし、その異なる楽器を、考え方や性格も異なる一人ひとりが演奏するわけですから、どこかに共通点を見出して、「共感すること」を大切にしながら、みんなで音楽作りをしていく必要があります。

「共感」は決して、一人ひとりが個性をつぶして、何かに従うことではありません。一人ひとりの意見をぶつけ合うこともせずに、表面上いつも仲良しを装うことでもありません。

一人ひとりが自分で感じていること、思っていること、やりたいこと、伝えたいことを積極的に出していく中で、お互いのいいところ、素敵なところを認め合って、集団全体を見渡した時に、どんな風に行動するのがベストか、どのような音楽を作っていきたいと思えるのか、みんなで一致できるところを探しながら活動していくことで、初めて「共感」することができるような気がします。そしてその「共感」の思いがお客様と「共感」できたとき、本番の何とも言えない充実感につながっていくのだと思います。

 

「心は熱く、頭は冷静に」本番を迎える

最後になりますが、本番は「心は熱く、頭は冷静に」ということが大事のことのように思います。

「お客様に伝えたい!」「音楽をすることってこんなに楽しい!」という熱い心は大切にしながら、ただ自分の感情任せに演奏するのではなく、今まで自分がやってきたこと、人から教えていただいたことを思い返し、客観的に曲を表現しようとするだけの冷静さは頭の中に持ち合わせていたいものです。

演奏者一人ひとりが、客席のお客様一人ひとりとつながっています。お客様一人ひとりに何を伝えたいのか。自分だけで頑張ろうとせず、同じ音楽を作り出していく仲間として何を伝えていくのか。そのために今の自分の役割は何なのか。こうした冷静な思考力も持っていなければ、「あ~今日も楽器吹いて気持ちよかった~」だけで終わってしまいます。それだったら、無観客のホールで練習した方がマシだと思います。

お客様は敵ではありません。だって、私たちの演奏を聴きに、わざわざ足を運んで来てくださっているのですから。だから音を外そうが、ミスをしようが、それを気にして音楽の流れを止めてしまうのではなく、とにかく音楽の流れを優先して演奏するだけでも、聴き手には自然と心地よく聴こえる音楽になり、伝わるものも多い演奏になるような気がします。

私も、生徒たち一人ひとりが「この本番の舞台を踏めて幸せだな」と思えたり、足を運んで下さったお客様が「今日はいい時間を過ごしたな」と思って頂ける演奏会にできるように、本番に向けて頑張っていこうと思います。

 

今日で平成が終わります。

私事ですが、自分が小学校の部活でコルネットを吹き始めたのが平成元年4月でした。つまり、平成という時代を通して、自分のラッパ人生の土台が築かれたといっても過言ではありません。確かに時代が変わる日と言われても、1日1日を積み重ねていく中の一つの通過点に過ぎないわけで、明日急に何かが変わるわけではないですが、何だか感慨深さもあります。

青山学院大学陸上競技部の原晋監督が次のようなツイートをされていました。

教育界も音楽界も、原監督がおっしゃるように”令和は『本質の追求』の時代”になっていけたらいいなと思います。 体罰や暴言のない、そして一人ひとりが本当にやりたいことをやるために本気で考えて努力できるような環境づくりを自分もしていきたいものです。

明日は令和最初の本番。令和もまたラッパと共にかけ抜けたいと思います。

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