全国の吹奏楽部はまだまだコンクールシーズン真っ只中のことと思います。毎年この時気になると、Twitterでフォローしてくれている中高生から「吹きすぎて音が出ないんですけど、どうすればいいですか?」という質問を結構受けることがあります。
私自身も高校生の時、コンクール直前に野球応援と合宿で無理に吹きすぎたせいか、音が全く出なくなったことがありました。
幸い、指揮者がプロのトランペット奏者の方だったので、「いいからお前は休め、吹くな!それが仕事だ!」と言って頂けたので、当日は何とか吹くことができるくらいまでに回復しましたが、練習をやりきれなかったことにも、本番で力を発揮しきれなかったのも悔しかった記憶があります。
コンクール前に、練習で吹かない時間ができるのは、不安になるものだと思います。でも調子を崩してしまっても、不安になると思います。
大事なのは、調子を崩す前に休むこと。そして、根性で練習を続けるのではなく、考えながら練習すること。楽器を吹かなくてもイメージしたり、声で歌ってみたりすることで上達することはできます。むしろ、やみくもに楽器を吹き続けるよりも、一回一回これからやろうとすることを確認して、何のために楽器を吹くのかを考えて練習した方が、効率良く上達していけると感じます。
学生の頃は1年が365日あったら、360日は楽器を吹いていた私ですが、就職してからは1週間に1度、ひどいときは2週間に1度くらいしか楽器を吹くことができないこともあります。しかし、毎日上達を信じて長時間ひたすら決められた練習をしていた頃よりも、短時間でも吹けない日があっても自分の調子に合わせて練習の意味を考えながら練習するようになってからの方が、調子を崩すことも少なくなり、楽に吹けるし、やりたいことができるようになってきました。今は時間よりも、本当に自分の頭で考えて練習することが大切だなと心から思います。
練習できる時間がたくさんとれるに越したことはないと思います。でも、集中力が無くなってきたり、バテてきて無理が生じ始めた時は、根性で何とかしようとせず、しっかり休んでリフレッシュすることも大事です。そのまま続けるとできない自分を責め始めたり、体にも負担がかかり、悪循環になることもあるように思います。
熱中して頑張れることは素敵なことですが、「上手くなりたい」「いい演奏をしたい」からこそ、休む勇気を持つことも時には必要です。だらだら練習を続けるのではなく、きちんと計画的に休みを挟んで、練習する時に集中して、意味を考えながらできる環境をつくることも練習のうちだと思います。
このことは、奏者自身はもちろんのことですが、学校の部活動においては、指導者である顧問がしっかり意識していくことも必要だと思います。教員は『生徒のためになるならどんな犠牲を払ってでも頑張る』という意志を持っている人が多いかと思います。『時間をかけてできるようになるなら、どこまでもやらせてできるようにさせてあげたい』というのは教員の性というやつかもしれません。
確かにそのような教員の気持ちが効を奏し、生徒たちもそれに必死に食らいついて、かけがえのない経験であったり、大きな成長につなげることができることもあるかと思います。しかし一方で、適切ではない負荷のかけ方をするあまり、大量の脱落者を生み出したり、生徒の自己肯定感を損なったりすることも残念ながらあるように思います。
全国大会に出ている学校がそうしているからとか、とにかく根性で鍛えれば何とかなるという話ではなく、目の前にいる生徒が何を求めていて、どんな状況にあって、どのくらいの負荷をかけたら潰さずに力を伸ばすことができるのかを考えること。それも指導者の力のようにも思います。
Twitterのタイムラインで、次のようなツイートを見かけました。
毎週水曜日…「家庭の日」自治体に強制させられて部活禁止
毎週日曜日…原則部活なし
これで昨年全国行った吹部がいる、かつては全国3金も達成した
これをバンジャで読んでから、俺も考えが変わりました。— ぷにさん@流浪の民 (@oimopuni) 2016年8月4日
拘束時間より、
与えられた時間で
どれだけ「しつこい」練習をするかの方がずっとずっと大事。
これは現場に出て本当に思った。
出来ないから怒鳴るとか頭わりーなーって思う。いや、割と真剣に。
出来ないもんは出来るまで見放さない。しつこく、どこまでも。— ぷにさん@流浪の民 (@oimopuni) 2016年8月4日
要はやりようなのだと思います。練習時間神話に捕らわれ過ぎず、休むときは思いきって休んで、また目標に向かって意欲的に取り組んでいけたら、結果にも結び付くはずです。
音楽に休符がなかったら、聴いていても息苦しくなるような気がします。休符は「ただの休み」ではなく、音符を引き立たせて、音楽の魅力を増すための名脇役。休符をきちんと演奏できることも表現のうちです。
そんな風に考え、練習の組み方などもメリハリをつけて、効率良く、そして生徒が自己肯定感を持ちながら前向きに音楽に取り組めるような環境づくりをしていきたいものです。
こんな感じで「休め」とばかり言っていて、「サボることがいいことだと言っている」という誤解を受けることもあるのですが、決してそうではありません。頑張る人は自分では気付かないういに無理してやりすぎてしまうものです。頑張ることも大切ですが、自分あっての音楽。そこを大事にして欲しいなと思っています。
自分は楽しんでやっているし、負担ではないし、絶対潰れることはないと思っていても、長い間無理を重ね続けると、自分自身が崩壊してしまうこともあります。これは自分が経験済みです。
末長く音楽を楽しみ、心から打ち込み、奏でたい音楽を追究していくためにも、根性で何とかするのではなく、バランスをとってやりたいものです。
一連の記事、深く頷きながら読みました。中学生の子供の部活動を見ていて、練習の内容より拘束時間が長ければ長いほど良いと思われているような、他の好きなことを犠牲にしないと吹奏楽部にいてはいけないような、勉強との両立で体を壊すほど無理な生活をしている子が良い部員だと思われているような、違和感をずっと感じてきました。
「練習は時間よりも集中力」「休むことも練習のうち」という考え方が吹奏楽部指導者の間に広まってくれればと思います。
>のの様
コメントありがとうございます。
矛盾するかもしれませんが、まずはこのような考え方のもとに指導をされている先生方がコンクールなどで「見える結果」を出していくことなのかなと感じています。「理想を語っても、結果が出なければ仕方がない」という論調は非常に根強いように思います。自分自身、もっと指導力を磨いて、限られた練習時間の中でも、生徒たちに達成感を味わえる活動を目指して頑張りたいと思います。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。