「本当の楽しさ」への道を踏み出していくために…

私が顧問をしている部活の部訓は「吹いて、奏でて、楽しむ」です。
それで「吹奏楽」というわけですが、ここでいう「楽しむ」という意味を追求していくと、ただ楽しいだけではない、心から満たされる楽しさに出会えるような気がしています。幸いにもそんな瞬間に昨日は立ち会うことができました。
昨日の練習は学生指揮の生徒が主体となって進める自由曲の分奏と合奏だったのですが、見ていてとても楽しくなる練習でした。具体的にどのような練習だったかというと、リズムセクションのリズムを手拍子で叩きながらみんなでメロディーを歌っていくというものでした。初めは手拍子も平坦で、歌声も小さかったのですが、ちょっとずつ「強拍はどこかな?」「自分が打楽器だったらどんな風に奏でたい?」とヒントを出していくと、みるみるうちに音楽にノリ始め、歌声も元気良くなっていきました。と同時に、どんどん雰囲気も良くなって、さらにポテンシャルも上がっていきました。当然のことながらその後楽器で出てきた音はガラッと変わっていました。その時の部員たちの充実した顔を見ると、やっぱり良い雰囲気づくりって大切だなと再認識させられた瞬間でもありました。
曲に“ノる”ためには、まず自分がその曲を良く知っている必要があります。さらに聴きながら指揮を振ったり、歌ったり、手拍子をしたり、全身で音楽を体感していく中で、「奏でたい音楽」が生まれていきます。そして、「奏でたい音楽」があるから気持ちも入っていくし、気持ちが入った演奏だから上達もするし、楽しく奏でられるように思います。
楽しいだけではない、本当の音楽の楽しさに出会うためには、時々とことんまでやり抜く練習も必要です。でも、それがやらされているもの、嫌々やっているものであったら、とても悲しいことですし、結果として「楽しむ」ことはできないかもしれません。自分の中から「奏でたい」という気持ちが湧き上がってきたときこそ、「本当の音楽の楽しさ」への道が始まるのだと思います。
「本当の楽しさ」への道を踏み出していくために、指導者はどのような仕掛けをしていけばよいのでしょうか。
それはやはり、誰よりも曲について理解をし、思い切り曲にノって、自らが楽しんでいる姿を見せることではないでしょうか。自分が楽しくないものを部員に強要したところで、部員の「奏でたい」という気持ちを引き出せるはずがありません。その曲の面白さ、その面白さを引き立てるためにはどのような練習が効果的なのか、試行錯誤しながらでもいろいろな可能性に目を向けて、研究していくことで、きっと自然に部員たちの「奏でたい」という思いを引き出せるような気がします。
ベネッセの「表現読解国語辞典」には「楽しむ」について次のように説明されています。
①そのものの良さを味わい、心に満足を感じる。
②好きなことをして、心を満足させる。
③将来に明るい期待をかけ、そうなっていくことを喜ぶ。

部員たちが本当に心に満足を感じられるように、お客様も心に満足を感じられるように、そして、部員たちが音楽的にも人間的にも成長していく姿を共に喜べるように、「楽しむ」吹奏楽をこれからもやっていきたいものです。
(Twitterまとめ)

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