中学生にアレクサンダーテクニークを伝えるとしたら?《その1》

先日、Self Quest Laboの授業の中で、「結局、アレクサンダーテクニークって何ですか?」という問いかけがありました。

これまで、何度となく問いかけられてきたこの問い。
今回はこんな風に答えてみました。

ただ、答えるまでにはいろんなことが頭の中をぐるぐる回って、いろんな言葉が浮かんでは消え…という感じで、なかなか書き表すことができませんでした。

そして、授業が終わった後、改めて自分は今、アレクサンダー・テクニークをどのようなものだと捉えていて、相手にどのように伝えようとしているのだろうと、悶々とした気持ちになりました。

その中で「そういえば最近、中学生にアレクサンダーテクニークを伝えてみようとしたことがあったな」と思い出したので、今日はその振り返りをしながら、自分の考えを整理してみたいと思います。

 

中学生、ボンちゃん(ガイコツ・5歳)に出会う。

私は中高で吹奏楽部の顧問をしています。これまでも生徒に「アレクサンダーテクニークとは何か」を伝える機会は何度となくありましたが、ついつい理科の授業っぽくなって、難しく説明してしまうという反省点がありました。

そこで、今年の新入部員の生徒たち(中学1年生)には、まず少しでも自分の身体や心とのつながりを感じ取る体験をしてほしいなと思い、次のような感じで導入をしてみました。

「今日は、うちのボンちゃん(※名前の由来はboneから)を連れてきました!ボンちゃんが痛がらないようにしてくれたら、いくらでも触っていいですよ!」


↑うちのボンちゃん(ガイコツ・5歳、身長 85 cm)

すると、最初はいきなり登場したガイコツに後ずさりしていた生徒たちも、「ボンちゃん、ボンちゃん」と面白がって、むらがってきました。

そのうち、

「こんなところも動くんだ」
「こんな体勢もとれるんだ」

といった発見をした生徒が出てきて、みんなで散々いじり倒してくれました(それを見て、私はしめしめ・・・と思っていたわけです)。

そんなやり取りをしばらく続けたところで、こう切り出してみました。

「私たちの体も、ボンちゃんみたいな構造をしていて、いろいろ動かすことができるんです。ちょっと実際にやってみましょう」

ボンちゃんを見せながら、腕を上げたり、回したり、しゃがんでみたり・・・

生徒たちも、だいぶ自分の身体の動きに興味を持ってくれたようでした。

 

ボンちゃんは、どんなときに動きやすいのか?

一通り、自分の身体が意外とたくさん動けるのだということを確認したところで、

「わざと、首のあたりにギュッと力を入れてみてから、身体を動かしてみて下さい」

とうながしてみました。

動かすところに力を入れて固めたわけでものに、急に動かしづらくなって、困惑している生徒たち。すかさず、ボンちゃんの背骨たちを見せながら、

「背骨って、たくさんの骨が積み重なってできていて、身体の軸になっているから、背骨のてっぺんのところを動けなくしてしまうと、からだ全体が動きにくくなってしまうんですよ。逆に、背骨のてっぺんが自由に動けるよう状態だと、それに連なっている部分も動けるから、ボンちゃんは自由に動けるようになるんです。」

と伝えてみました。

 

↑青い部分は、ボンちゃんの身体の軸になっている骨たち(軸骨格)

反応は、

「ふ~~ん、そうなのか」

という感じではありましたが、とりあえず、首のあたりをギュッと固めるだけで、全身に影響が表れるのだ、ということが何となく体感できていたらそれでよいかなと。

その上で、

「背骨のてっぺんは、自分だったらどのくらいのところにあると思いますか?」

と聞いてみました。生徒たちは、だいたい首や肩あたりを指さしました。そこで、ボンちゃんの頭蓋骨を分解。

「あ~、ボンちゃんの頭がーー!」
「ボンちゃん、かわいそう」

という悲鳴も上がる中、頭蓋骨が外れたボンちゃんが露になりました。

その上で、

「背骨のてっぺんは、ちょうど耳の穴の高さくらいのところまであります。結構上まであるんだよね。そこから上が頭だと思って、頭を上下左右自由に動かして、周囲を見回してみましょう」

とふってみました。少しきょとんとした感じもありましたが、まず今回は知ってもらうことに徹しようということで、

「もし、これからちょっと身体が動かしづらいな、ちょっと緊張しているな、と思うことがあったら、このあたりが動ける状態にあるか確認してみましょう。」

という提案をして、その日は終わりました。

 

固める動作も、必要だからできること。

・・・で、続きの話をしたいと思っていたのですが。

コンクールの練習や、新型コロナの感染拡大による部活動停止などによって、まだ残念ながら続きはできていません。なので、ここからは今の自分が伝えていけたらなと考えていることです。

[次に伝えたいなと考えていること]

  • 首を固めると、とっさに全身を硬直させて、危険から身を守ることができる。
  • 自分がどうやって動くか、自分の身体をどうやって動かすかは、その都度自分で判断して選ぶことができる。
  • まず、自分が何をやりたいか、どのようにできるようにしたいか、ということを明確にした上で、身体の使い方や、自分の思考について観察してみる。

なぜ、これらのことを伝えたいかというと、私自身がアレクサンダーテクニークを学び始めた頃、「頭が自由に動けて、からだ全体がついていく」という言葉にとらわれて、”常に頭が自由に動けていなくてはいけないんだ”という思考にはまってしまい、結果として首を痛めてしまったことがあるからです。

また、身体をより自由に動かせるようになることでできるようになることも増える半面、身体を緊張させることでできることもあります。「動けることが正解」で、「固めてしまうことは悪」というわけでは決してないはずです。今自分が置かれている状況を把握し、どのように身体を使うのがその状況においてベターなのか、常に考えることも大事なことなのだと思います。

F.M.アレクサンダーさんが発見した「頭と背骨全体の機能を邪魔していなければ、その人全体がうまくはたらく」という原理は、知っていると自分の可能性を広げてくれるものだと思います。しかし、アレクサンダーさんのいう「うまくはたらく」という状態を使って、自分が何をやろうとするのか、というところがはっきりしていないと、『型』のようなものにとらわれてしまいかねません。

だからこそ、授業の中で私は、

というように、「可能性」「選ぶ」という言葉を使うことを選択したような気がします。

最近、これだけ情報が溢れている中ではありますが、逆に限られたコミュニティの中だけの情報を鵜呑みにして、「自分なんかダメだ」と早々に諦めてしまったり、「こうしないといけないのだ」と1つの道に執着したりする生徒も増えてきているような気がします。だからこそ、「誰にでも可能性があるのだ」「いつでも自分の意思で選ぶことができるのだ」ということを伝えたいと思う気持ちが、自分の中で強まっていることも影響しているかもしれません。

このあたりのことを、中学生にどうやって伝えようかということは、またもう少し考えてみたいと思います。(きっと、《その2》につづく)

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