今年もコンクールの季節。本番が終わった後には決まって反省会をするわけですが、いつもパートや学年で反省点を出し合って終わってしまうので、今回はそれが次につなげられるように、ワークショップ形式で日常からの取り組みを振り返り、明日から実行することを可視化して、一人ひとりが前向きに活動するきっかけがつくれたらなと企画をしてみました。
これから反省会をやる、という学校も多いと思いますので、参考までに実施記録をご紹介しておきたいと思います。
|企画書をどのようにデザインしたか?
ワークショップを企画するときには、「ねらい」と「ゴールイメージ」を明確に持ち、それに近づいていくためのワークとして何が相応しいかを考え、流れをつくっていく必要があります。
今回は、自己肯定感の低い子どもたちが少しでも自信をもって、できるだけコミュニケーションをとりながら、仲間で何かを作り上げていくことの達成感を味わって欲しいという思いでデザインをしてみました。
★実施のねらい
悪いところだけに目を向けるのではなく、今後の活動につながるような達成点に注目することで、一人ひとりが前向きに部活に取り組もうとする雰囲気をつくる。
★ゴールイメージ
・一人ひとり、自分が部活にとって必要な一人であるということを認識できている。
・部活で大切にしたいことを全体で共有できている。
★進め方(所要時間90分)
1.じゃんけん大会
→場をほぐす、普段しゃべらない人と関わる (5分)
- 1人5回勝ったら、その場に座る。
2.テンショングラフ
→コンクールまでのモチベーションを振り返る (10分)
- 縦軸をテンション、横軸に時間(出来事)をとり、定演後から本番当日までの自分のテンションをグラフ化してみる。
- グラフを見て特に気になった3点を選び、その時の気持ちを書き込む。
3.テンショングラフの共有
→自分の意識を客観視する (10分)
- 隣に座っている人と2人組をつくり、自分のテンショングラフの説明をし合う。
- 相手のテンショングラフを見て、気になるところのインタビューをする。
- 互いのテンショングラフを見て気づいたことを共有する。
4.マグネットテーブル
→全体で互いの意識を共有し、グループ分けをする(5分)
- 一人ひとりがA4の紙に、「コンクールの活動を通して一番大切だと思ったこと」を大きな字で簡潔に書く。
- 見えやすいように紙を持って、会場をウロウロする。他の部員がどのようなことを書いているのかをざっと観察する。
- 自分が書いたことと近いことを書いている人どうしで、5~6人組をつくる。
5.グループワーク1
→具体的な達成点、課題点をグループ内で共有する(10分)
- なぜ、自分が4.のワードを書いたのかを説明し合う。
- 一人ずつ、コンクールの取り組みについて、運営面、演奏面の両方について、達成点をピンクの付箋に、課題点をブルーの付箋に、気づいたことや新たに発見したこと、挑戦してみたことをイエローの付箋に1枚に付き1項目書いていく(それぞれ2分程度)。
- グループ内で共有し、似たようなものをグルーピングして模造紙にまとめる。
6.グループワーク2
→次の活動へ何を活かし、自分たちに何ができるかを考える (20分)
- 5.でまとめたことを利用して、これからの部活に必要だと思われること、大切にしていくべきだと思うこと(意識、練習方法、生活面など具体的に)を壁新聞にまとめる。レイアウトなどは自由とするが、それを基に発表してもらうこと、具体的にそれを実行することを前提に責任を持つことは伝える。
7.発表会
→各グループであがったアイディアを共有する (20分)
- できあがった壁新聞を、付箋をまとめた模造紙とともに、内容が分かるように全体に対してプレゼンする。
8.グループワーク3
→全体であがっていたことを共有し、振り返る (5分)
- グループワーク2であがっていたことを振り返って、それに対して自分はどのように感じたかなど、学年ごとに分かれて感想を出し合う。
9.感想を書く
→今日取り組んだことを自分の中に落とし込む (5分)
|ワークショップを終えて
実際にこの流れで実施をしてみましたが、初めての試みということもあって、まとめたり、壁新聞をつくる作業に時間がかかり、時間は若干おしてしまいました。ゲーム感覚で「決められた時間の中でやってみる」「完璧なものでなくてもいいから協力してつくりあげてほしい」ということも、初めにもう少し伝えておけばよかったかなと思いました。
しかし全体としては予想以上に盛り上がり、普段はあまり自分の意見が言えない部員や、今回はコンクールに乗らなかった1年生も積極的に参加していて、普段学年やパートの中だけで終わってしまう反省が、全体で共有して1つのチームをつくるきっかけにつなげられたように感じました。書いてもらった感想には次のような声がありました。
- 学年やパートを越えて気持ちが同じ人と集まることで、また新しい考え方が生まれた。
- 普段あまり関わりのなかった先輩や後輩と感想や意見を言い合うことでみんながどんな考え方なのか分かったし、みんなが共通に思っていることもだんだん明確になってきた。
- 自分たちが大切だと思うテーマで集まったけれど、これから何が必要かということをあげてみると、どのテーマのグループも同じような結論に至り、練習への取り組み方やその質、コミュニケーションなど大前提のことばかりだった。
- 今回は頭を使ってコミュニケーションを取りながら自分たちの力でまとめて書いて発表するという形だったので、いつもより有意義な反省会になった。
- いつもより自分の意見が多くの人に伝わったことを実感した。
- 部活の人と、意見をこんなに共有し合ったことがなかったので、すごくたくさんの意見や考えに触れることができて新鮮だった。
- テンショングラフのインタビューの時に、相手と結構違っていて驚いた。でもそういうのが本当は当たり前なんだよなと思い直した。
- いつもと違うことをやっているからか、コンクールよりも反省会の方が盛り上がっていた・・・。
自分から発言するのが苦手な子や文章を書くのが苦手な子も、付箋にキーワードを書き出していく作業は割とハードルが下がるものです。またまとめていく作業も、全員が付箋を出し合うことで誰もが参加できるものになりますし、新聞のタイトルや内容を決めていくときには、どうしてもコミュニケーションをとり、互いに合意をとっていく必要が出てきます。このような経験は、一人ひとりが出した音を、どのようにバランスをとり、一つの音楽に仕上げていくかを考えることにつなげていけると思います。
一方的に反省点をあげるだけになってしまったり、顧問が課題を指摘するだけにならないように、部員一人ひとりが考えていることを全体で共有し、みんなで共有する時間を意識的につくることは、改めて大切だなと思いました。
とはいえ、毎回同じだとまた飽きてしまうと思うので、またその時の部活の状況にあった形で反省会ワークショップをデザインしていけたら良いなと思います。
今回の反省会であがったことが、明日からどう生きてくるか。部員たちを見守りながら、また一緒に頑張っていこうと思います。
|参考資料
今回利用した「テンショングラフ」のエクセルシートをシェアしておきます。
→ダウンロードはこちらから
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