限られた時間の中で、楽しく上達していくためには?

顧問をしている部活は5月の定期演奏会に向けての練習が本格化してきました。今日は部員向けに配布した通信から「限られた時間をどのように使って活動していくか」ということについて書いたものをご紹介したいと思います。
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春休みには合宿もあり、新学期が始まるとそれぞれ学年も上がり、新しいクラスになって慌ただしい毎日になるかと思います。同時に、すでに学校からも連絡があったように、4月からは平日の活動日数が減ることもあり、今までよりも限られた時間の中で曲を仕上げていくことになります。合奏の中でも少しお話をしましたが、これからどのように練習に取り組んでいけばいいのか、今日は少しつぶやいていこうと思います。
時間があっても効率の悪い練習はある

これまで、いろいろな学校の練習を見学したり、指導している先生方や生徒たちから話を聞いたりする機会がありました。コンクールで全国大会に出るような学校から、コンクールには出ずに地道に活動を続けている学校、生徒だけで運営や練習をしている学校など様々でしたが、そこで感じたことは「一人ひとりが意識的に練習に取り組んでいるかで音は変わる」ということでした。
楽器が上達するには時間がかかるものです。中には譜面を見ただけでパッと吹けてしまう人もいますが、時間をかけて何度も何度もくり返してようやくできるようになる人もいます。音楽に完璧はありませんし、もっと上達したいと思ったり、一つの曲でも完成度を高めようと思ったら、いくら時間があっても足りないものだと思います。
確かに全国大会に出るような学校は、練習時間も長いですし、本番も多いです。ある高校の例ですが、平日は15時~21時まで練習(日によっては22時まで)、土日はほぼ毎週本番という学校がありました。さすがにそれだけの本番をこなし、そのための練習を重ねていたら必然的に上手になる面はあると思います。
ただ実際に練習を見学してみると、限られた時間を上手に使っている学校と、練習効率があまり良くないなと思う学校もありました。実際、時間がたっぷりとれる学校の中には、集中する時は集中して、時々息抜きしながら練習していていいなと思う反面、パート練習中にだらだら携帯を使っていたり、おしゃべりが長かったりと、この時間を短くすれば、もっと全体の活動時間は短くても大丈夫なのになと感じるところもありました。
一方で、練習時間が短くても集中して練習に取り組み、成果をあげている学校もあります。例えば定時制(夜間)がある高校なら下校時間は18時くらいの学校も多いですし、キリスト教系の学校であれば日曜日に練習がないのが基本です。特進コースで朝に「0時間目」があるような学校では朝練もすることができません。しかし、そのような学校の演奏が上手ではないかといえば、必ずしもそうとは限りません。時間をたっぷりかけられる学校よりは不利な面もあるかもしれませんが、「ダラダラしていては時間が足りなくなる」という意識がより強くなり、短い時間でも集中して取り組むことで、練習の成果が出やすくなるということもあります。中には活動時間が多かった時は、サボる部員が少なくなかったけれども、活動時間が絞られたことで出席率が上がり、それまでよりも合奏の効率が上がったという話も聞いたことがあります。
練習時間に対する考え方は様々ですから、どのやり方が一番いいのかを決めつけることはできません。単純に長ければいいというものでもないし、短くすればいいという単純な話でもないと思います。ただこれからみなさんが置かれる環境を考えると、「いかに短い時間に集中して効率よく練習ができるか」というところが今までよりも一人ひとりに問われてくるのかなという気がしています。
「楽しませてもらう」練習から、「自ら楽しみを見出す」練習への転換

みなさんに限った話ではありませんが、話し合いをしていたりすると「先輩が○○してくれないから楽しくない」「先生が△△だから楽しくない」という声を耳にすることがあります。確かにそれも一理あると思いますし、特に合奏の時には前に立つ人が雰囲気をつくり出す面も多いですから、自分も反省しなければなと思うことも多々あります。
しかし、いつまでも「楽しくない」のを何かのせいにしていても、楽しくなることはないようにも思います。「楽しい」という感情は自分の心の中にあるもので、自分自身の中で自然に湧き上がってくる感情でもあります。誰かが強制的に楽しませるということは、本来はできないことなのだと思います。誰かに楽しませてもらうのは楽なことかもしれません。でも、本当に楽しい瞬間というものは、誰かに与えられた楽しさではなく、自分の手でつかみとった楽しさであるような気がします。
そのように考えてみると、誰かに楽しませてもらうより、自分で楽しさを見つけにいったほうが手っ取り早いし、結果として充実感も得ることができるようになるようにも思います。確かに、自分で楽しさを見つけて頑張ってみるというのは、少し面倒かも知れないし、大変なこともあるかもしれません。でも、せっかく吹奏楽部に入ることを選んで、忙しい中でも時間を使って頑張って練習しているわけですから、できれば楽しく活動して欲しいと思いますし、充実感・達成感を一人ひとりに味わって欲しいなと思っています。
では、どうすれば「自ら楽しみを見出す」練習に転換していくことができるのでしょうか。
「楽しい」という感情がどんなときに湧いてくるのかは、一人ひとり少しずつ違っているかと思います。まず、自分が「楽しい」と感じるのはどんな時かを考えてみて下さい。そして、その「楽しい」を生み出すために必要な条件をあげてみましょう。吹奏楽は大人数で音楽をつくりだすものですから、どうしても人にしてもらわないといけないことも出てくるかもしれません。
でもよくよく考えてみると、まず自分自身が「もっと吹けるようになりたい」「もっとこんな音楽をやってみたい」というように、『音楽を楽しむこと』に集中してみると、自分にできることは意外とたくさんあることに気づくと思います。
楽しむことを見つけられたら、こっちのものです。
あとは思いきり自分が楽しむために、目の前にあることに向かっていけばいいわけですから。
人は楽しいことのためだったら、何かを一生懸命やることはあまり苦痛にならないものです。逆にどうしても人に言われて「やらされている」感じがしてしまうと、どんなに好きなことでも嫌気がさしてしまうこともあるような気がします。
ですから、部活に来たときに「今日は何をしたいか」という自分の望みがあれば、それを実現するためにどうすればよいのかも見えてくると思いますし、それが達成できたときには喜びを感じられるように思います。
効率よく練習するためには、一人ひとりがその日何をすればよいのか明確にわかっていることが大切です。どんなに小さな目標でもいいので、自分の中で目標を決めて、少しでもできるようになったらできるようになった自分を褒めてあげながら、少しずつできることを増やしていけるといいのかなと思います。
下に示すのは以前音楽室にも掲示していた「上達のためのサイクル」です。こうした「目標」→「方法を決める」→「実験」→「振り返り」というサイクルを自分でも考えられると、上達のスピードは格段にあがると思います。ぜひ練習をするときには、いつも意識していて欲しいです。

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人が揃った状態で練習することは大事なこと
これは何度となく言われてきていることだと思いますが、吹奏楽など大人数で音楽をつくりあげるためには、人が揃った状態で練習することは重要です。それは、どんな一人ひとりにも合奏の中での役割というものがあり、一人でも欠けてしまったら、そのバンドの音ではなくなってしまうからです。
例えばハーモニーがどうなっているのかを確認するとします。この時、どこかの音が欠けていたらどのような和音なのか分からないことも生じますし、音が揃っていたとしても人が揃っていなかったらバランスが変わってしまうこともあります。また、せっかく前回までに確認できたところであっても、人が増減することで1から確認し直さなくてはいけないことも生じてきます。
人が揃っていない状態での練習をくり返すと、いつも同じようなところで引っかかってしまい、なかなか練習自体が前に進んでいかないことが多くなります。その結果、毎回出席している人にとっては新しくできるようになったことが見えづらくなって、練習がマンネリ化してやる気を無くしてしまうという状態に陥ることさえあります。
もちろん人間ですから、体調が悪くなることもありますし、どうしてもはずせない用事ができることもあるでしょう。高熱がある時に這ってでも練習に来いとは全く思いません。休むことが必要な時もあると思います。ただ忘れないでいて欲しいのは、「自分はこの部活になくてはならない大切な一人なのだ」ということです。「自分一人くらいいなくてもいいや」という思いは、全体に迷惑をかけることにもつながりますが、何よりも“自分の存在を否定している”ということにもなります。この部活にいなくなってもいい人など誰もいません。ぜひ、自分という存在を大切にするためにも、練習がある時にはきちんと出席して欲しいと思います。
人に与えられた時間は1日24時間、1年365日と決まっています。残念ながら時間は無限にあるものではありません。「時間をかければもっとできるようになる」ということもあるかもしれませんが、勉強でも部活でも、決められた時間の中で力を発揮することが求められることがほとんどです。様々な考え方があるとは思いますが、その中で自分のベストを尽くすことができるかどうか、やれることは精一杯やれた状態で本番を迎えられるかということは、自分自身の力を高めていくためにも、自信をつけていくためにも大事なことだと思います。
私は部活を通して、音楽を奏でる喜びを味わって欲しいということはもちろんですが、自分に自信を持って、なりたい自分に向かって歩いていくための土台をつくっていって欲しいと思っています。一人ひとりにとって部活で過ごす時間が充実したものになるよう、一緒に頑張っていきましょう。
(部内通信より)

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