昨日は、新大久保で開催されたアンソニー・プログ先生のトランペットマスタークラスを聴講してきました。
特に、基礎とウォームアップは先日のレッスンのよい復習になりました。客観的に聴いていても、深いブレスをするだけで段違いに音が変わるものだなと思い知らされた気がします。
先日のレッスンは頭にメモで、圧倒されて抜け落ちてしまったところも多かったので、今日のブログでは改めて気づいたことなどをまとめておきたいと思います。
1.シンプルな基礎の意味と重要性
★Wind and Songs
・できる限り自然でリラックスした状態で吹くことが大切
→リラックスした音=いい状態で吹けているということ
ストレスのかかった音=無理のかかった状態になっているということ
⇒”wind and songs”がまさに大切なことである。
★ブレスの練習
次の①②の練習を1日10回くらい楽器を吹く前にやってみる。
①親指と人差し指で輪をつくって口元に持っていき、あくびをするようにリラックスして、思い切り深く吸う
②マウスピースを外した楽器に息を吹き込む(強さは10段階、日によって変える)
③短い時間でたっぷりブレスを取るためのアイディア
・わざと2小節ごとに息を吸って速くブレスをとれる練習をしておくと、音楽的な流れの中で素早く吸うことができる。
→速く吸ってもリラックスして深く吸えるように練習する。
★マウスピースでのウォームアップ
・マウスピースは利き手と逆の手で、親指と人差し指(あるいは薬指)2本で端を軽く持ち、圧力をできるだけかけずに吹く
→圧力をかけすぎていると、うまく鳴らせない
※唇のみのバズイングも、マウスピースでのバズイングも、唇が心地よくなり、血液が循環し、リラックスしてよい音が出る状態にするためにやる。あまり高い音ではやらない。いずれにしても、「~しなくてはいけない」ではなく、自身にとって良い方法を採用すればいい。
★スタンプの教本「BASIC Warm-up」3番
・できる限り美しく吹くと考える。
・無理やり押し出すように吹くのではなく、自然にすべての音がリラックスした状態になるように心がける。
・音楽を歌うつもりで、きれいなラインを描くように演奏する。
→まず、美しいメロディだと思ってオペラ歌手(例えばパバロッティ)のように、できるだけ美しく、ヴィヴラートもかけて声に出して歌ってみる。そして、楽器を通して歌ってみるように吹いてみるといい。
・音が上ずってしまう時は、アパチュアを締めている傾向があるので気を付ける。
・一番下の音までしっかり響かせるようにする。
→グリッサンドになっても良いので、スムーズに流れるように。決して音を押し出そうとしないようにする。
→一番下の音の指を ①そのままの指、②半音上の指、③全部押す で試してみる。
・マウスピースをくわえて、ブレスは何回とってもいいので、とにかく深くブレスをとり、楽器の中にできるだけ息を吹き入れる(指は動かしてそのフレーズを吹いているように)。このように深くていいブレスを取る練習を5~6回(めまいがしない程度に)やり、その後で楽器で吹いてみると鳴りがとてもよくなる。
→ベンツのような高級車は軽くアクセルを踏んだだけでもよく走ってくれる。深いブレスをとることができれば、軽く吹いてもよく鳴ってくれる。軽自動車のような浅いブレスでは、楽器は鳴ってくれない。
・ウォームアップのときからより美しく音楽的にすることで、唇の柔軟性を生み出すことができる。
★曲の出だしでのタンギング
・ランダムに音を選んで、ノータンギングで音を出してみる。
→出だしのタイミングはいつでもいいので、押し込んで出すのではなく、自然に鳴るタイミングでやる。
→無理に音にせず、自然に唇が振動してくれるポイントで鳴ればいい。
→繰り返していくうちに、その音に対する適切な位置を筋肉が覚えてくれる。 ⇒muscle memory
⇒これができるようになれば、あとは軽くタンギングをするだけでOK。
・マウスピースの穴に対して真っ直ぐ息が入るように吹く
→息はスロートの真ん中を通過するのだけど、斜め上や斜め下など、息の方向性はいろいろ試してみて、一番自分にとってよい方法を採用するようにする。
2.プログ先生作曲「ポストカード」
★第1楽章
・散歩しているような気楽な曲であり、決してアグレッシブなものではない。
・A.ジェイコブスの言葉「体は呼吸マシンのように」「体は長く」を意識する。
・メンタル面の強化=上のリーグで活躍するか、下のリーグで活躍するかは自分の決心次第
→15秒間だけで良いので、人に聞いてもらう習慣をつけるといい。
・音量は小さくても大きくても「攻めの姿勢」で行く。
→A.ハーセスの言葉「オケの中でミスを犯すなら堂々と犯せ!」
・指は伸ばし過ぎても、縮めすぎてもテンションがかかりうまく回らないので、ちょうどよい構え方を探してみる。
→いいポジションで、まずは3番がからまない楽なところから、クラークのテクニカルスタディーズのSECOND STUDYをさらってみる。
★第2楽章
・音のカラーとフレーズにこだわる。
→先生のはじめての彼女であるフルート奏者から言われた言葉。
・跳躍が外れる場合は、飛ぶ先の音を半音上にしたり、半音下にしたりして位置を探す。
→自分に適した方のイメージを採用すればいい。
・ディクレッシェンドで下降形の時は、「地下に行ったときに電気をつける」(byヴァッキャーノ)ようなイメージで吹く。
★第3楽章
・フォルテとピアノのところは、2人で会話しているようにコントラストをつける。
→実際に2人で吹き分けてやってみると分かりやすい。
・リズムは正確に演奏する。
→「リズムを感じる」のではなく、「リズムをカウントする」
→「感じる」というくらいのあいまいな感じではなくて、きちんとカウントして正確に吹く。
・大きく吹くのと、強くはっきり吹くのとでは違う。
全体の流れはこういった感じでしょうか。
今回のレッスンの中でプログ先生がおっしゃった言葉で一番心に残ったのは、「練習には忍耐強さと根気強さが必要」ということです。それはただ我慢しろということではなく、「すぐに結果を求めて無理な奏法をするよりも、すぐ結果に結び付かなくても、よいと思うアプローチを続けること」を意味しており、何だかATのエンドゲイニングの考え方と似ているように感じました。
最近は時の流れが速くて、つい安易に結果が出ることを求める傾向が強くなっている気がします。便利になったのはよいことだけれど、それだけ創意工夫して、試行錯誤しながらものづくりを楽しんでいく余裕がなくなっている陽にも思います。本当はその回り道が大切だったりすることもあるように思うのですが…。
時間や結果に追われるのではなく、でも地道に上達する道を選んで、自分にとって良いアプローチを選んで、それをやり続けること。言葉にするのは簡単だけれど実際は自分との戦いだったりもします。でも、少しずつでも自分の「こうなりたい」に近づいていけるように、学び続けることを大切にしていきたいと思います。
Wind and Songs ~アンソニー・プログ先生のマスタークラスを聴講して~
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