自分自身も生徒に思われていそうですが、Twitterのフォロワーさんやブログを読んで下さっている中高生から「顧問の先生と上手くいかないのですが…」という相談を受けることがあります。
「部活の雰囲気や実力は顧問次第」と言われることも多々あります。個人的にはいろいろ思うところもありますが、確かにそのような面があるのも事実だと思います。それだけに、子どもたちにとって「顧問の先生と上手くいかない」ということは死活問題なのかもしれません。
難しい問題ではあるかと思いますが、今日は「顧問と部員との関係」について少し考えてみたいと思います。
|音楽の前では、顧問も生徒も「共に音楽をつくり出す仲間」である
多くの場合、顧問は指導・監督をする立場であったり、部活以外の場面では成績をつける立場であったりするため、生徒より上の立場にあると考えられることがほとんどだと思います。
もちろん完全に対等な立場にはなりえませんし、「お友達感覚」で馴れ合いのようになってしまっては、いざという時に成長のための壁になることもできませんから、けじめのある関係を維持することは絶対に必要です。
また、何か物事を決めていくときには、リーダーもしくは進行役がいなければ、どこでどのように判断すればいいのか、全体が迷ってしまうこともあります。限られた時間の中で効率よく練習を進めていくには、ある程度方向性を決めて、取り仕切っていく存在は必要だと思います。
しかし、部活動の主役はあくまで生徒です。顧問は、そのサポート役に過ぎません。
指導力のある先生が顧問である場合、「顧問の言うことを聞いて、言われたとおりにやっていればできるようになる」という構図もあるように思いますし、顧問にとっても生徒にとってもその方が楽で良いと感じることもあるかと思いますが、それがエスカレートし過ぎてしまい、「顧問の言うことは絶対」のような絶対君主制になってしまうのも問題です。ましてや、顧問がすべての権力を掌握し、やりたい放題になってしまうのは言語道断なのだと思います。
経験や知識の差はあるでしょうし、立場の違いもあります。でも、音楽を目の前にしたときには、あくまで「音楽を共につくりだす仲間」であるのだと思います。部員が50人いたとしたら、顧問は51人目の部員として、一人ひとりの生徒たちとコミュニケーションをとりながら、より居心地の良い部活づくり、より人の心に響く音楽づくりを共にしていくことが求められる気がしています。
と書いてみたところで、「うちの顧問はそんな風に思ってくれない」と思う人もいるかもしれません。残念なことに、中には権力を主張して生徒を従わせるような顧問もいるかもしれませんが、多くの先生方は本気で「生徒たちと音楽を共につくっていこう」と頑張っておられると思います。
それでも「うちの顧問は分かってくれない」と思うことがあるのは、当然のことです。
それは、顧問も人間であり、一人ひとり違った考え方や性格をしているからです。親・兄弟や友達に対しても「○○は分かってくれない」と思うことはあると思います。他人である以上、分かり合えないと感じることはあって当たり前です。
ただ、その思いが原因で部活を続けることが苦しくなったり、生きていることさえ辛くなってしまったとしたら…。それはとても残念なことですし、避けるべく何とかしなければいけない問題だとも思います。
|顧問がなぜそのように言っているのかを考えてみる
「顧問が分かってくれない」
「顧問の言っていることが理解できない」
そのように思った時、なぜ顧問がそのように言っているのかを考えてみることも大事だともいます。
例えば、下級生にはあまり厳しく言わないのに、上級生ばかりが注意をされる時を考えてみます。
もしかしたら、上級生に下級生を引っ張る力があるということを期待していて、「もう少し、ここを考えて取り組んでみたら、もっとチームとしてまとまるに違いない」という意味で厳しく言っているのかもしれません。
もしかしたら、それまで上級生に頼ってばかりいた生徒に、「もう少し上級生としての自覚を持って頑張ることで、もっと成長してほしい」とエールを送っているのかもしれません。
もちろん、言っている本人ではありませんから、その真意が分からずに悩むこともあるかと思います。でも、余程でない限りは、言葉は受け取り手の解釈によってはプラスに受け取ることもできるものです。
本来は、顧問が一人ひとりの生徒に合わせて、その生徒が一番前向きになっていけるような声掛けをすることが理想です。でも、同じ言葉でも受け取り手の受け取り方で意味が大きく変わってしまうこともあります。日本人はつい謙遜して、相手の言葉をマイナスに受け取りやすいと言われていますが、少しずつでも、相手に言われたことを自分にとってのプラスの言葉に解釈してみたり、「そういう考え方もある」と受け止めながらもスルーしてみることも、うまくやっていくためには必要だとも思います。
|本当に納得のいかないこと、理不尽なことに従う必要はない
それでも、どうしても納得のいかないことであったり、理不尽な暴言に従う必要はありません。我慢する必要もありません。どうしてもマイナスに言葉を受け止めてしまう自分のことを卑下することもありません。
顧問の言葉に従わなかったりすると、「何で分からないんだ!」と威圧的に迫ってくることもあるかもしれません。でも、どうしても分からなかったら、なぜ理解できないのか、なぜ先生はそんなことをいうのか、徹底的に思いをぶつけてみるのも一つの方法であるかと思います。意外と、顧問も生徒がどう感じているのか、誤解をしていることもあるように思います。
中には成績や内申書を持ち出して黙らせようとする教員もいるようですが、それは同業者として本当に悲しいこと、情けないことだと思います。でも多くの教員は、実際に生徒がどのように感じているのかというところに耳を傾けることができるはずです。
自分の思っていることが必ずしも通るとは限りませんし、何でもかんでも先生に要求をすれば何でもしてくれるわけではありません。でも、生徒の言っていることを真っ向から否定しようとしているわけでもないと思います。本当に良いものをつくり出そうとしたら、従うだけではなく、とことん話し合ってみることも大切だと思います。
それでも「顧問は分かってくれない」と思ったら、周りの仲間がどう感じているかを聞いてみてもいいと思います。先輩や担任の先生に相談してみるのもよいかもしれません。その中で顧問の先生との間に入ってくれる人が現れるかもしれませんし、本当に誰から見ても理不尽な顧問だったら、みんなで話に行ってもいいくらいだと思います。
私自身、生徒だった時に、顧問の先生がやろうとしていることが理解できなくて、「何でそんなことをするのだ!部員はこう思っているのだ!」と署名を集めて持っていったことがあります。結局、大人の事情というやつで、私たちの思いは届きませんでしたが、先生も私たちが思っていることを汲み取って、丁寧に事情を話をしてくださいました。これは互いの関係を考えたときにはプラスになったと思っています。
|部活のあり方、顧問のあり方もいろいろあっていいもの
部活に熱心だったり、無関心だったり、いろいろな顧問がいると思います。「他の学校はこうなのに」と思ったところで、隣の芝が青く見えるだけかもしれないですし、それぞれの学校によっていろいろな部活のあり方があっていいものだとも思います。大切なのは、全国画一的にやることでもなく、顧問に部活をつくってもらうことでもなくて、自分たちがやりたいと思うことを、自分たちの手でやっていこうとすることだと思います。
「先生」という立場だけに、物を申すのは難しいことかもしれません。でも、自分たちが本当に音楽を楽しんで、目的を持ってやっていこうとしたら、自分たちがどう考えているのかを伝えてみることは必要なことです。
熱心な先生なら、「こうすべき」という思いも強いかもしれません。そう言うときには、言われたことを実際にきちんとやってみた上で、もしもっと自分たちが「こうしたい」ということがあれば、「○○にも挑戦してみたいのですが…」という相談を持ちかけてみてもいいかと思います。
逆に部活にあまり関心のない先生なら、無理に先生の力を借りようとするのではなくて、「自分たちで運営をやりきってやる」くらいの気持ちで、運営面も楽しんでやってみて、先生には報告する形をとってみるのもありかもしれません。
大切なのは、我慢して溜め込まないことです。どうしても辛くなったら、部活を休んだり、辞めたりすることも「逃げ」ではありません。「耐えて頑張る」ことだけが、上達への道でもありません。
いったん、自分の考えも、顧問の考えも客観的に見たときにどう見えるのか、第三者に聞いてみるのも方法の一つです。溢れかえって爆発してしまう前に、誰かに相談をしてみてください。
|まとめ
「顧問が分かってくれない」と生徒が思っている時は、意外と顧問も「生徒が分かってくれない」と感じていたりするものです。そうやって、お互いに気持ちがすれ違っていても、もったいないことです。
「分かってくれない」という思いは、「分かってほしい」という気持ちの裏返しです。
「分かってほしい」という気持ちは、そのことに対して本気だからこそ生まれるものです。
自分も正直なところ、生徒たちにどのように話したら分かってもらえるのか悩むこともたくさんあります。自分が意図したこととは違うように受け止められてしまい、誤解を解くのが大変だったこともあります。逆に生徒には、「先生は分かってくれてない」と思われていることも多々あります。
想いがあるところには、向上心がある。
そう思って、顧問も部員もそれぞれの立場でやれることを頑張っていけたらなと思います。
音楽は心。音楽はコミュニケーション。
だからこそ、ぶつかることもすれ違うことがあっても、顧問と生徒という立場であっても、互いにじっくり向き合うことを大切に考えていきたいものです。