今度、部活の定期演奏会でギリングハムの「ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス」を演奏することになり、譜面を見た生徒から「この拍子、どう読んでいいのか分かりません!」と質問をされました。
確かにこの「ウィズ・ハート・アンド・ヴォイス」、かなり拍子がコロコロ変わる部分があり、変拍子に慣れていないと面喰ってしまうこともあると思います。以前、コンクールで演奏し、指揮を振った時にも、拍子感を出すところでかなり苦戦しました。
吹奏楽をやっていると、かなりの割合で変拍子のある譜面に出会うかと思います。
私が中高生の頃では、課題曲の「饗応夫人」「交響的譚詩~吹奏楽のための~」や、リードの「アルメニアン・ダンス・パートⅠ」などで登場して、譜読みに苦戦した記憶があります。
でも、できるとカッコいいのも変拍子。
今日は、改めて変拍子の譜面に出会ったとき、どうやって読み進めていくのかを考えてみたいと思います。
|まずはカウントの基準となる音符が何かを考えてみる!
拍子記号はそもそも、
- 分母:基準となる音符の種類
- 分子:1小節に入る音符の数
を表しています。
変拍子が出てきたとき、まず注目すべきは「分母」です。
もし分母に同じ種類の音符が並んでいるであれば、1拍をその音符でとらえます。例えば、「4分の4」→「4分の5」→「4分の2」→「4分の3」のように拍子記号が並んでいたとしたら、すべて「4分の●」なので、4分音符を基準としてとらえればいいわけです。
難しいのは、分母の数字が変化する場合です。この場合は、より短い長さの音符を仮に1拍として考えます。例えば、「4分の4」→「8分の3」のように拍子記号が並んでいたとしたら、4分音符と8分音符では8分音符の方が短いですので、8分音符を基準として考えてみます。つまり、「4分の4」は「8分の8」としてとらえるということになります。
|「タト」「タトト」ゲームで変拍子の感覚を養う!
カウントの基準となる音符が何かが分かったら、次はその音符で小節を満たした上で、どこに拍を置くかを考えて、拍子のノリをつかんでいきます。下に、いくつか具体例をあげてみたいと思います。
① 「4分の●」と「8分の●」の組み合わせのとき
この組み合わせは、8分音符を基準にして考えます。
下に、1小節中に含まれる8分音符の数が少ないものから多いものへ順番に、拍子記号を並べてみました。譜面の上に書いてある図形は一般的な指揮の図形、下に書いてあるのがカウントするときの読み方(あくまで私が数えるときのものですが)です。
この読み方を基準にして、譜面にある変拍子の箇所を、右手で指揮を振りながら、「タト」「タトト」と歌ってみます。このとき、「タ」を大きめにはっきり、「ト」を軽く歌うのがポイントです。最初はとにかくお経のようにひらすら唱えてみましょう。そのうちだんだんと、ノリが体でつかめてくると思います。
ちなみに指揮の図形を見てみると、「4分の2」と「8分の6」は2拍子の形、「4分の3」と「8分の9」は3拍子の形、「4分の4」と「8分の12」は4拍子の形になっていますね。実際に指揮に合わせて演奏するときには、「4分の●」は4分音符1つ(8分音符×2)が1拍、「8分の●」は付点4分音符1つ(8分音符×3)が1拍になっています。これが、歌でいう「タト」と「タトト」の違いです。
②「16分の6」と「4分の2」の組み合わせのとき
この組み合わせは、基本的に16分音符でカウントします。
これも「タト」「タトト」「タトトト」などの言葉を当てはめて歌ってみましょう。
ただし指揮については、上図のように、「16分の6」が8分音符1つ(16分音符×2)が1拍、「4分の2」が4分音符1つ(16分音符×4)が1拍で振ることが多いです。
曲中では1小節おきにこの拍子の入れ替えが起こっていたりもしますので、まずはゲーム感覚で、みんなで「タト」「タトト」ゲームを楽しみながら“ノリ”を体に吸収していくのがいいかなと思います。デモ音源を聴きながらやってみると、かなり感じがつかみやすいかもしれません。
|自分の譜面のリズムを読み解いていく
「タト」「タトト」ゲームで変拍子の感覚を養うことができたら、実際に自分の譜面にあるリズムがどのようになっているかを考えてみます。
このとき、基準となる音符に分けて考えてみたり、指揮を振ったときの1拍が基準となる音符何個分に相当するのかということを考えてみたりして、1拍ごとに区切りの線をいれてみたり、指揮の図形を譜面に書き込んでみたりすると、読み解きやすいかなと思います。
どの曲でもそうですが、特に変拍子の曲は、どこに強拍がくるかを理解して演奏できるかで、カッコよさが決まってきます。わざわざ作曲者が様々な拍子を登場させているのは、「ただ頭の中にあるフレーズを譜面に書き起こしたら数が合わなくて拍子を変えた」というだけではなく、「拍子を変える=強拍と弱拍の位置が変わる」ことによるリズムの活性化、さらには音楽の活性化を期待して使っているのだと思います。
ぜひ、そこに面白さを見つけて、練習していって欲しいなと思います。
(部内通信より)