先日、中学1年生の個人レッスンをする機会がありました。まだ楽器を初めて間もなく、身体も成長段階であるというこの時期に、無理に力んで音を出す習慣を身につけさせたくないと思って、出てくる音と姿勢に注目をしながら進めていったのですが、傾向として、次の2つの傾向が多くみられるなと感じました。
(1)いわゆる「いい姿勢」を保つために、お腹を前に突きだして背中を反らせ過ぎてしまう人
「いい姿勢」を保とうとし過ぎて、結果として息を取り込むためにラクにしておきたい胸部の筋肉が緊張していたり、息を吐き出すときに助けになる腹筋に力が入ってしまったりで、呼吸には不利益な姿勢になっていることも少なくありません。
(2)息を振り絞って出そうとして、腕に力が入り、前傾姿勢になり過ぎている人
小中学生や楽器を始めたばかりの人に多いように思います。とにかく息を楽器に「吹き込んで」、無理に唇やリードを振動させることで音を出していると、必要以上に息を吐こうとして、腕をギュッと固めてしまうことがあります。ちょうど、くしゃみをする寸前に全身が緊張するような状態がずっと続いていると考えても良いかもしれません。いわゆる「姿勢が悪い」状態とされることが多いので、下手すると「いい姿勢に」と矯正されて、(1)のタイプになっていってしまう恐れがあります(自分はそうでした)。
では、どんな姿勢が理想的なのでしょうか。
それは、「今からすぐに立ち上がれたり、歩き出したりできるような姿勢」ということができるように思います。
姿勢は動的なものであり、「正しい姿勢」という決められたポジションは存在しないものです。このことを意識して、「頭が動けて、からだ全体がついてきて…」と自分に指示を出すと、呼吸がラクになって、結果として力みがとれて音に響きが生まれてくるような気がします。
この「頭が動けて、からだ全体がついてきて…」というのは、なかなかイメージがしにくいかもしれません。今、自分が考えているのは、首をギュッと固めることをやめて、脊椎が蛇のようにクネクネ動けるものだと思って楽器を吹いてみるということです。蛇は手足がありませんから、頭が動けて、それからだ全体(脊椎)がついていくようにして前に進んでいきます。人間は直立二足歩行をしていますから、「前へ」というよりは「上へ」と考えてみると、ちょうど「頭が動けて、からだ全体がついてきて」という状態をつくりだすことができるように思います。
自分のからだの中に自然に取り込まれる空気を使って、振動をつくりだすことで管楽器の音は生まれていきます。だからこそ、呼吸や姿勢は大切なわけですが、何よりも大切なのは「頭が動けて、からだ全体がついてくる」という意識を持ち続けることだと思います。それだけで不思議とからだもラクになるし、姿勢も音も良くなるからです。
アレクサンダーテクニークというと、この「頭が動けて、からだ全体がついてきて…」という言葉が呪文のように広まっている面も否めませんが、魔法でも何でもなくて、自分のからだのことをよく観察して、効率よく使って目標により近づくための一つのプランにすぎません。でも、知っているかどうかで確実に目標までの近道は通れるような気がします。
どんなことにも「こうであらねばならぬ」ということはありません。
もっと自由に自分のからだが動ける可能性があることを信じて、奏でたい音楽のために、思考もからだもより機能的につかっていけるとよいなと思います。
呼吸にやさしい姿勢のはなし
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