部活をサボりたいと思ったら…

「部活、サボりたいな…」
「部活、サボっちゃおうかな…」

という声を、現実でも耳にしますし、SNS上でも見かけることは多々あります。
中高生の頃の私はとにかく部活大好き人間だったので、「部活をサボりたい」と思う心境になることが信じられなかった部類でしたが、顧問になってからは、さすがに何ヶ月も連続勤務をしたときは体が持たなくて、今日だけはサボらせてくれと思ったこともあります。どんなに好きなことでも、溢れかえってしまうと休みたいと思うのは、本来持ち合わせている自己防衛機能なのかもしれません。
たまには部活をサボりたくなるのは分からなくもないし、どんなに体調が悪くても決して休んではいけないということはないと思います。
ただ顧問として考えた方がよいと思うのは、『なぜ部活をサボりたいと思うのか』というところです。
『サボり』が常習化してくると規律も乱れ、何でもありの雰囲気が漂ってくることがあります。せっかく頑張ってやろうとしているメンバーのやる気が削がれていってしまうこともあります。必要なときに『休む』ことは大事ですが、『サボり』が当たり前になってしまうと、集団としての信頼関係はなくなってしまいます。
だから『サボり』は許されないというのは、最もなことだと思いますし、一人ひとりの信頼を守るという面でも壁になることは必要だと思います。しかし、「サボったら懲罰」のようなことはやはり好ましくない気がします。もちろんサボったことで、全体にも影響があること、自分自身の信頼が揺らぐということは伝えてもよいかと思いますが、懲罰によってサボりを防いだとしても、根本的なことは変わらないし、練習への意欲が増すわけでもありません。
「サボりたい」という心境の奥底には、「やらなきゃいけない」という義務感だったり、「やらされている」という強制感だったりもあると思いますし、本当に忙しくて疲れていて休みたいという生理的欲求もあるような気がします。
サボった部員を追及すること以上に、ただ部活が楽しいから行きたいと思えて、いい演奏したいから練習したいと思えて、みんなでアンサンブルするのが好きだから集まりたいと思える雰囲気づくりも大事だと思います。また、練習が過剰になりすぎて、体力的に厳しいスケジュールや学習などとの両立が物理的に難しい状況になっているとすれば、そこも改善する必要はあるかと思います(もちろん、ただ楽にして甘やかせばいいわけではありませんし、忙しい中で時間をやりくりする力を身に付けることも大切です)。
部活を監督する立場としては、「いかにサボりたくない部活にするか=いかに来たいと思える部活にするか」という視点も必要である気がします。そのためには、部員の気持ちを一人ひとり丁寧に聞くことや、今どんなことに悩んでいたり、どんな欲求があるのかということに日頃から敏感であることも大切です。要はどれだけ部員とコミュニケーションをとり、真の信頼関係を築けるかなのだと思います。
一方で、何となく部活に行きたくない、サボりたいと感じる人がいたら、考えてみてほしいことがあります。
たくさんの人が集まる部活だけに、いつも居心地がいいわけではないかもしれないですし、思うようにいかないことの方が多いかもしれません。それをただ我慢するのも良くないですが、居心地の悪さを何かのせいにして逃げていてはいつまで経っても状況が変わることは残念ながらありません。
「部活を休まないようにする」が目標になっているうちは、まだどこかで居心地の悪さや、強制的にやらされていると感じている面があるような気がします。そこまで頑張って休まないようにしなくては、と自分にプレッシャーをかけないと部活に行くのがキツいのならば、思いきって休んでみて、部活との関わり方を考えてみてもよいかもしれません。
どうしたら「行きたい」と思える部活にできるのか。
やってみて少しでも達成感や充実感を感じられるような経験をすることからなのかなと思います。それは、環境によって与えられるものかもしれませんが、多くの場合は自分でつかみとりにいくこともできるような気もします。
いかに置かれた環境を楽しむか。
いじめとか、理不尽な指導とか、どうしようもないことがある場合は別として、基本的にはその環境を楽しめるか、その環境に不満で終わらせてしまうかは自分の意志で決められるようにも思います。
自分でその日に達成できそうな目標を立てて、それに取り組んでみる。できたら素直に喜ぶ。できなくても、挑戦した自分を褒めてみる。そんな日々のちょっとした積み重ねだけでも、達成感や充実感は味わえると思います。
また少し話はズレてしまうかもしれませんが、面倒くさい練習はしたくないけれど、本番には出ていい思いをしたいという声もたまに耳にします。
しかし残念なことに、本番で悔いなく演奏するためには、時には多少面倒くさいと思う練習とも向き合って、試行錯誤しながらできなかったことをできるようにしていく過程を乗り越えることも必要だと思います。
すぐに結果が出るとは限りません。がむしゃらに時間だけかければいいということではありませんが、物事を成し遂げるにはそれなりに時間も必要になるかと思います。そう思って、すぐに投げ出さずに根気よくやってみることは必要だし、それだけ夢中になるものに出会えたら幸せなのかなと思います。
なかなかできるようにならなかったり、目の前に難題ばかりがあると、そこから逃げたくなるのは自然な気持ちだと思います。でも、もし少しでも「こんな風に演奏したい」「こんな風になりたい」という思いが自分の中にあるのなら、いったん休んで冷静さを取り戻した上で、またアプローチを変えながら頑張っていけたらいい気もします。
それでもサボりたくなったら…。
サボりましょう。
でも、ダラダラとサボるのではなく、日にちを決めて休んでみましょう。その中で自分にとって部活がどんな位置を占めているのかに気づくこともあると思います。そこで少しでも大切だなと思えたらまた頑張ってみればいいし、義務感や強制感でやっていることに気づいたなら思いきって辞めてみて次にやりたいことを見つけていった方がよいかもしれません。
そういう意味で、休んでみること(サボってみること)が大切な意味を持つこともあるように思います。
ここまで書いてみて、小学校時の担任の先生が「やる気、勇気、根気の3本の木を大切に育てていこう」と仰っていたのを思い出しました。努力すること自体が目標になってはいけないけれど、やる気があることには勇気をもって挑戦し、根気強く打ち込んでみることは大切だなと。その結果、自分自身の成長があるような気がします。
根気強くやることと、嫌なことを我慢することは紙一重です。できるだけ自分が成長していくためにはどうすればいいのかを考え、ポジティブに物事をとらえていきたいものです。
とはいえ、ネガティブになることもあるかと思います。そういうときは、無理しないで、ポジティブに考えられない自分を責めずに、休んだり、別のことをして気持ちを休めてあげてください。
指導者の努力と、部員の努力が相乗効果となって、『行きたいと思える部活』にできると思います。どちらかがどちらかのせいにするのではなく、みんなにとって居心地がよく、高め合うことのできる環境づくりをみんなでしていけたらいいなと思います。
自分も頑張ります。

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