荻原明先生のトランペットのレッスンでは「ツボで鳴らす」ということをよく言われます。
この「ツボで鳴らす」という練習が、とても面白いのです。本当に楽器が響いていると、ベルの向きも関係なく空間中が共鳴して響いているかのように聴こえます。聴いていて心地もいいし、吹いていても楽で疲れにくい気がします。
ついラッパ吹きは口先に注目しがちなところがあるように思いますが、音をつくっているのは体全体であり、それを増幅しているのは楽器全体です。一部だけに注目しすぎてしまうと、何かが犠牲になってしまうこともあるように思います。
しかし、自分がしていることは音に表れます。やっぱり音に注目して改善することは多いなぁと。
今日はこの「ツボで鳴らす」ということについて、自分の中で消化できている部分を備忘録としてまとめておきたいと思います。
|「ツボで鳴らす」ためにはどうすればよいのか?
「ツボで鳴らす」と言っても、何が「ツボ」なのかが分からなければ途方に暮れてしまいます。一番いいのは「ツボ」で鳴らせる人のレッスンを受けるなどして、実際に「ツボで鳴っている」状態を間近で聴いて、それに合わせて練習してみることです。
でも、なかなか「ツボ」で鳴らせる人のレッスンを受けることができない環境にある人もいるかもしれません。その場合は、自分の耳に頼って工夫しながら練習することが必要なわけですが、その時、先生に教えて頂いた次の方法がとても役に立つと思います。
- 真ん中のFの音を普通にFの音を吹いてみる
- わざとアパチュアを締めて響きのない細い音にしてみる
- 2.の状態から一気にアパチュアにかけていた力を解放し、息の向かう方向などを工夫しながら、太くて響きのある音がするポイント(=ツボ)を探してみる ※この時、音程は気にしなくてもいい
- ツボが見つかったら、初めからそのツボで吹けるか試してみる
- もし音程が悪かった場合には、口先ではなくて、口の中の容積の変化(舌の高さ)などで調節する
実際に試してみたのが次の動画です。まだ完全にツボで鳴らせていないなとも思うところもありますが、参考になればと思います。
|「楽して吹く」とバテないし、音楽に集中できる
荻原先生が先日、次のようなツイートをされていました。
しかもね、楽して吹いた方がいい音出るしバテないし疲れないから、吹くことじゃなくて音楽することに集中できるんです。
— 荻原明(Ogiwara,AKIRA) (@ogiwara_a) 2017年3月26日
多くの人が、
一生懸命吹こう
頑張って吹こう
しっかり吹こう
ちゃんとしなきゃいけないと思いすぎているように感じます。
間違ってないんだけど、とりあえず楽ちんに吹いてからでいいと思います。— 荻原明(Ogiwara,AKIRA) (@ogiwara_a) 2017年3月26日
鉄の靴を履いて、
一生懸命頑張る!負けない!
じゃなくて、機能性の高いシューズでベストを尽くした方がいい。スポーツの世界は今はもうあたりまえなのに、なんで音楽…吹奏楽…特に学生さんたちはわざわざ苦労する道を選んでしまうのでしょうか。
楽ちんに吹いて楽しみましょう。— 荻原明(Ogiwara,AKIRA) (@ogiwara_a) 2017年3月26日
「楽に」というと、「サボっている」と受け取られて、マイナスのイメージにつながっていくことも少なくありません。でも、必要な「サボり」は必要だし、「楽に」できることをわざわざ「苦しく」やることはないように思います。
努力も練習もしないと問題は解決しませんが、ただ時間だけかけてガムシャラに”こなす”ことだけでも問題は解決しません。大切なのは、「考えて試す実験と考察の時間」です。同じだけ時間をかけるなら、発見したりパズルがはまったりすることを楽しみながら、模索したり工夫したりする時間に費やした方がいいはずです。
トランペットを吹くようになって25年ほど経ちますが、今までずっと調子の乱高下と、バテやすい吹き方に悩まされてきました。特に毎日吹いていた学生の頃は、いったん調子を崩すと這い上がれなくなるほど訳も分からない状態が続くこともありました。でも、社会人になって毎日は吹くことができなくなり、吹けるときには頭を使って工夫して練習するようになってから、徐々にそれらが改善してきました。加えて久々にレッスンを受けるようになったり、アレクサンダーテクニークを学ぶようになって、さらに楽に吹けるものが増えてきた気がします。
工夫をすることは楽しいこと。
実験をすることは好奇心を掻き立てること。
目の前にある曲がたくさんあったり、本番が近かったりすると、「曲をこなす」ことに精一杯で、なかなか「音」や「音楽」にまで意識が回らなくなってしまうこともあるような気がします。自分自身もそういうところはありますし、生徒を見ていてもそう感じることがたくさんあります。そういう時こそ、「工夫」と「実験」を楽しんで、「音」や「音楽」に集中できる時間をつくれるような練習を考えていきたいものです。
|おわりに
先日、ブランクはありますが学生の頃から参加させて頂いているSuperband 2017の演奏会がありました。Superbandは、様々な大学の吹奏楽団、管弦楽団出身の方が中心になり、ビッグバンドやプロ奏者として活躍されている方も含めたメンバーで構成されている吹奏楽団です。一人ひとりが上手な方が多いので、ついていくのは大変ですし、足を引っ張ってばかりですが、いつも刺激を受けています。
上手い集団の中で吹いていると自分まで上手くなった気になるものです。でもそれは本当で、いい音、いい響きの中で、それに合わせようと吹いていると、自分も自然と響きの心地よい音で吹こうとするようになり、いい響きで楽器を鳴らす習慣が身に付くのだと思います。こうしてプラスの連鎖が生まれます。まさにSuperbandでの経験はそのような経験だと思っています。
いい音、いい響きはプラスの連鎖を生む。だからこそ、自分が素敵だなと思っている先生のレッスンに行って先生の音に囲まれがて吹いてみたり、ちょっと背伸びして上手い人たちがたくさんいる楽団の門を叩いてみると、成長も早まるのだと思います。自分はまだまだだけど、生徒と一緒に吹くときは、少しでもいい響きでいい音楽をするようにしたいところです。
また明日からも頑張ります。
荻原明のトランペットレッスンであなたもツボに当てる吹き方をマスターしませんか?
東京都文京区にあるプレスト音楽教室では無料体験レッスンも実施しています。https://t.co/vUcqBWsQnz— ラッパの吹き方bot (@Rappa_fukikata) 2017年4月14日