「アンサンブル合奏」で、主体的に音楽づくりをする!

世の中の吹奏楽部の多くは、ちょうど吹奏楽コンクールに向けて練習にも熱が入ってきていることかと思います。
かくいう私も例外ではなく、目前に控えた地区大会に向けて、試行錯誤の毎日です。
多くの吹奏楽部の活動は、生徒が主体的に進めていくところもある反面、合奏などでは指揮者である顧問の先生や外部講師の方が練習を進めていくことが多いかと思います。特に中学校はその側面が大きいような気もします。もちろん、経験の豊富な大人が、客観的に演奏を聴いて適切なアドバイスをしながら練習を進めていくことは効率もよいと思います。
しかし、その一方でつい生徒が「受け身」になりがちになってしまうこともあるように思います。もちろん指導者が生徒をのせるのが上手で、生徒の主体性を引き出しながら一緒に音楽づくりを進められている学校もあると思いますが、中には指導者からの指示で一方通行になってしまっている学校もあるかもしれません(ちょっと耳に痛い)。
私は、いわゆる少人数の「アンサンブル」だけではなく、大人数の吹奏楽であっても、“一人一人がアンサンブルを楽しむこと”はとても大切なことだし、それが大人数で奏でる醍醐味だと思っています。
そもそも、アンサンブルとはどういう意味の言葉なのでしょうか?
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説
アンサンブル
あんさんぶる
ensemble
フランス語で統一、調和を意味することばで、服飾では、組み合わせて着ることを意図してデザインされた、二つ以上のものからなる服の一そろいのことをいう。ジャケット、スカート、ズボン、ブラウス、セーター、コートなどが、素材、色柄、形のうえで、それぞれ同質または異質の関連性をもち、それらを組み合わせることによって、初めて全体的調和が生まれるものをいう。服だけではなく、装身具、バッグ、靴、靴下、帽子、手袋などまで含めてデザインされる場合もある。なお、音楽では複数による演奏(重唱、重奏)をさす。
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上記の解説を読んでも分かるように、アンサンブルとは「調和」を指している言葉です。服飾で用いられる意味を拡大解釈して、
組み合わせて奏でることを意図して作曲された、2つ以上の楽器からなる楽曲を奏でること。管楽器、打楽器、弦楽器などが、それぞれ同質または異質の関連性をもち、それらを組み合わせることによって、初めて全体的調和が生まれるものをいう。

と考えてみると、なんだかワクワクしてきます。
そのようなわけで、私はコンクール前になると「アンサンブル合奏」なるものを生徒たちにやってもらうことがあります。普段はなかなかそこまで深いところまで曲を理解して演奏するところまでなかなかいく時間がとれないのですが、コンクールというせっかく一曲に集中して取り組める機会に、「アンサンブルの楽しさ」を感じて欲しいという思いから始めた取り組みです。
やり方はいたって単純です。
① 打楽器も含めて円陣を組んで、互いの顔が全員見えるように並びます。
② 初めと終わりの合図を出すリーダーだけ指名して、指揮なしで合奏をします。

アンサンブル合奏をやってみると、音楽が動くようになってきます。どこに集合するのか、誰がリードしていくのか、奏者が積極的にアプローチすることで、自分たちで音楽をつくりあげる一体感も生まれるようにも思います。テンポの変わり目や、フェルマータなど、合わせるのが難しいと感じる部分も、何回かやっているうちに誰かが目配せをして自分たちで進められるようになってきます。
ただし譜面を配って間もないうちだと、テンポの変わり目などで立ち往生してしまうこともあるので、一人ひとりがある程度曲の構造が理解できたところでやっています。何となく慣れたテンポを「暗記」して、模範演奏のコピーバンドみたいになってしまわないように気をつけるところはあるかと思いますが、この取り組みを通じて、生徒たちの中に「自分たちで音楽をつくる」という責任感と意欲が増していくように感じています。
もちろん指揮者が音楽づくりの軸となって、全体の進行役になる必要はあります。でも「奏者が指揮者についていく」のではなくて、「指揮者と共に音楽をつくりだしていく」くらいで奏でた方が、より聴いている人に届く音楽になる気がします。「どう奏でたいか」を一人ひとりが持っているかは大切です。
特に学校吹奏楽だと、指揮者が先生で奏者が生徒であることが多いために「主従関係」のような感じになってしまうことが少なくない気がします。関係が完全に対等でないとしても、「共に音楽をつくりだしていく存在である」ということには変わりはありません。奏者である生徒たちが主体的につくっていく音楽に、指揮者が味付けをしてみたり、方向性を導いていくと考えてみる。その意識を「アンサンブル合奏」を通して、生徒たちにも感じ取ってもらえたらなと思っています。
また、「アンサンブル合奏」をやってみると、その後の合奏でどこをどのように調理していけばいいのか(いきたいのか)が、指揮者も奏者も分かりやすくなる気がしています。こればかりになってしまっても、実際の配置で演奏するのと感覚が違ってくるのでまずいかはと思いますが、生徒たちにとっても、自分たちでつくりだす面白さや達成感、いつもとは違うことをする緊張感などもあって、いいリフレッシュにもなるようです。
指揮を見て、そこから指揮者の表現したい音楽を読み取ることは大切だと思います。だからといって「指揮者を見る」ことが目的ではありません。みんなで奏でたい音楽を奏でるために、一緒に奏でている仲間や、お客様も含めた空間全体を感じることで、ライブでしか出せない臨場感も生まれると思います。そうした音楽づくりのためにも、いろいろな仕掛けをしながら、また生徒たちと頑張っていきたいと思います。

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