一人ひとりが、かけがえのない「仲間」になるために…

吹奏楽は集団でつくりあげていく音楽です。
決して一人だけで奏でることはできません。
それだけに、一緒にやっていこうとする仲間のことは気になるところだと思います。特に毎日顔を合わせるような中高の部活動などでは、仲間とどうやっていくかという関係づくりは、音楽づくりと同じくらいのウェイトを占めることもあるのではないでしょうか。
もし仲間のことなど気にならなくて、「自分だけ楽器を吹いて楽しんでいればいいや」と思うのであれば、一人で音楽教室に通うのでもよい気もします。「みんなでいい音楽をつくっていこう」と思うからこそ、仲間の行動や言動が気になったりするのだと思いますし、そうやって相手のことを「知りたい」と思う気持ちは、生徒たちには大事にしていって欲しいなと思っています。
しかし当然のことながら、たくさんの人数がいたら、どうしても気が合わなかったり、苦手に感じたりする人がいると思います。みんなが仲の良い部活を目指すことはとてもいいことだと思いますが、だからといってみんなが同じ方向を向いていて、同じことを考えていて、けんかをすることもなく、いつも全員がべったり一緒にいて、みんなのすべてが大好きでたまらない!という関係でなくてもいいと思います。一人ひとり考え方や感じ方が違って、その中で一つの方向を目指していくからこそ、様々なアイディアが湧いてきて、より良いものがつくれると思うからです。
大事なのは、「一人ひとりの良いところ、頑張っているところを知っていること」だと思います。それを知っているだけでも、ちょっとその子の嫌な面が見えた時に「あの子はこんないいところがあったな」「この間、こんなことを頑張ってやっていたな」と思うことで、その子の存在自体を否定してしまうような思考にはならないで済むように思います。
誰にでも短所はありますし、考えが合わないところがあります。「あの子とは合わない」「話しても分かってくれるはずがない」と決めつけてしまったら、関係は平行線をたどってしまいます。悪いところばかりに注目して“ダメ出し”ばかりするのではなくて、互いに“ヨイ出し”をしていくことで雰囲気も柔らかいものになるでしょうし、その上で「もっと○○したら、もっと良くなる」というような前に進んでいくためのアドバイスをしていけるようになると思います。
音楽には心の状態が表れやすいものです。
悲しい気持ち、辛い気持ちを抱えながらだと、なかなか音にも元気が出ませんし、集中力もなくなります。イライラしているときは、どこか攻撃的な音になりますし、周りの音をじっくり聴くことができません。逆に楽しかったり、嬉しかったりするときには、心の状態も落ち着いて、周りの音を聴くゆとりが生まれたり、自分に自信を持って音を出すことができるようにも思います。
毎日生活をしていたら、常に楽しかったり嬉しかったりという感情でいられることは残念ながらないかもしれません。どうしてもマイナスの感情というものは湧いて出てくるものだと思いますし、その気持ちを無理やりに抑え込もうとするのも、また疲れてしまってあまり良くないことのようにも思います。
大切なのは、マイナスの感情が湧いてきたときに、どのようにしてプラスの行動に変えていけばいいか、自分なりの方法を見つけていくことのように思います。すぐにできるようにならないかもしれませんが、そうした思考のサイクルをつくっていく訓練ができるといいかなと思います。
どうしても気持ちのやり場がない時というのは、誰かに聞いてもらって、できたら自分の気持ちに賛同してもらいいたくなったりするかと思いますが、友達やSNSに愚痴をこぼしたりすると、意図しないところで噂が広まったり、誤解を招いたりして、より問題が複雑化することもあると思います。誰かにSOSを出せることはとても大切なことですが、その前に一歩自分で考えてみる時間も大事だと思います。
やり方は単純です。真っ白なノートに、とにかく思いの丈を書いていきます。文章として適当でも、つじつまがあっていなくても、順番がめちゃくちゃでもいいから、自分が今思っていることをとにかく気持ちのおさまるまで書いていきます。書いていると、自分はこんなことも思っていたのだと気づくこともあったりします。
気が済むまでかきなぐった後は、何度か読み返してみます。その上で、何が自分の中で問題となっているのか、箇条書きで書き出してみます。そこまででも、気持ちを落ち着けるためにはとても効果があると思います。そして、できることならば、その問題はどうすれば解決していけるのか、自分で解決するためにはどのような行動につなげていけないいのかを考え、書き出してみます。ここまでくると、かなり気持ちを落ち着けることができるようになると思います。
意外と解決策は自分自身の中にあることも多いような気がします。
仲間とうまくやっていくためにも、自分が相手にとってかけがえのない仲間でいられるためにも、まずは自分が何を思い、どんなことを大切にしていて、そのためにどのような行動ができているのかを振り返ってみることは必要なことのように思います。その上で、相手にどうはたらきかけることができるのか、一緒にどう頑張っていけるのかというアイディアが浮かんでくるような気がします。
誰かのせいにする前に、自分ができることを見つけてみる。
そうやって、自分自身がやりたい、なりたいと思うことを少しずつ実現していくことで、活動にも前向きな気持ちになれると思います。一人ひとりがそうやって自分の役割を見つけながら、音楽と真剣に向き合える環境を整えていきたいものです。

iQiPlus

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。