「指導」は「注意」「指摘」することではない ~力まずに後輩の指導にチャレンジしよう~

新入部員も入ってきて、この春から先輩になった人も多いかと思います。最高学年として部の中心に立って頑張っている人もたくさんいることでしょう。
その中で、
「先輩として自分はやっていけているのだろうか?」
「○○先輩のようにうまくできない」

と思っている先輩たちや、
「○○先輩怖すぎて嫌だ」
「今年の先輩は、卒業した先輩よりダメ」

と感じている後輩たちはいないでしょうか?
学年が変わってすぐの頃は、何かと前の先輩方と比較したり、できていないところが目立ちやすい時期でもあります。それは当然のこと。なぜなら、「先輩初心者」が頑張って「先輩になろう」ともがいている時期でもあるからです。
もちろん、初めからリーダーシップをとってバリバリ仕事をこなし、後輩たちから一目置かれるようなスーパー先輩もいるかもしれませんが、多くの先輩のヒヨコさんたちは、どうすれば後輩をリードしたりサポートしたりできるのか、悩みながら試行錯誤しているのだと思います。
憧れの先輩を目指してもいい。
自分が後輩の時持ち合わせていた野望を叶えるんだって思ってもいい。
楽器を吹かせたら右に出るものはいないような先輩を目指してもいい。
後輩が悩んでいるときにそっと話を聞いてあげられる先輩を目指してもいい。

どんな先輩を目指すかは人それぞれですし、どんな先輩がよい先輩だと断定することはできません。
あくまで、自分らしくあること。
先輩であると同時に、一人の部員であることを忘れないこと。

そんなことが大切なのかなと思います。
焦らず、ゆっくりと、自分だからこそなれる先輩に育っていけたら、それでいいような気がします。
さて、先輩と後輩の関係について、先日行われたジャパンバンドクリニックでも質問していた方がいらっしゃいました。
その質問は
「先輩が怖くて、後輩が辞めたがっている場合、どうしたらいいか?」
というものだったのですが、少なからずどこの部活でもそのような問題を抱えているような気がします。
私も先輩だから何言ってもいいとは全く思いません。特に人格を否定したりするような暴言は絶対に言ってはいけないと思いますし、先輩の命令が絶対とばかりに無理な注文ばかり言うのはおかしな話です。もしそういう場面があったら、すぐに顧問が出ていって先輩と話をすべきです。
しかし一方で、後輩が仲間の悪口を言っていたり、部活で決められたルールを破っていたり、練習を繰り返しサボったりするようなことがあったら、厳しく向き合う必要もあるような気がします。それらは本来は顧問の仕事であり、生徒にやらせて「プチ先生」をつくるのはどうかというご意見もあるかと思いますし、自分もそう思うところはあります。ただ、先輩に「集団をまとめるためにはどうしたらよいか」を考えさせることは必要なことだと思いますし、そういう経験を通して、生徒たちも成長していく気がします。
先輩と仲良くすることはいいことです。私自身、中高大と先輩方には恵まれましたし、時には本気で意見をぶつけ合ったり、時には冗談を言い合ったりと、今でも付き合いのある先輩もたくさんいます。
しかし、何でもありになってしまうと、後輩の中には甘えが生じてしまうものです。みんなで音楽をするために必要なことを崩すことが続いてしまうと、集団としてのまとまりはなくなっていくような気がします。
その一例として、最近は先輩が後輩に何か物申すのが苦手になってきている印象があります。どうやら「これを言ったら自分がどう思われるか」を心配する傾向が強いようです。互いの意見や存在を大事に関係をつくっていくことは大切ですが、必要な指摘や注意までできなくなってしまうと、なかなか部活もうまく回らないような気もしています。
出欠など生活面での指導なども昔は普通でしたが、最近はいろいろな面で難しくなってきています。本来はそういったことは顧問がやらなくてはいけないことだと思いますし、生徒にどこまで責任を追わせるのかは慎重になる必要があります。
でも、欠席が続いている後輩に声をかけてみたり、練習中遊んでいる後輩に話をしてみたり、技術面で伸び悩んでいる後輩を呼んで一緒に練習してあげたりというようなことは大切なことだと思うのです。
「指導」というと「指摘」「注意」というイメージが強いかもしれませんが、大事なのは、注意することではなくて、みんなで向上していくこと。そのために必要な指摘は先輩であろうが後輩であろうが、先生であろうが生徒であろうがすべきことのようにも思います。それさえ言えずコミュニケーションがとれなくなったら、吹奏楽を続けていくとはできないと思います。
「後輩を指導する」というと堅苦しく聞こえるかもしれませんが、要は「後輩たちと一緒に音楽をつくっていくために必要なことをしていくこと」なのだと思います。そのために自分に何ができるか、それを考えてじっくり取り組んでいけばいい気がします。
吹奏楽は一人で作り出す音楽ではありません。だからこそ、人との関わりや、気配りなどが大事になってくると思います。言われたことに受け身で従うのではなく、自分の思いをちゃんと出せる環境にしていけたらなと思います。それが必ず演奏にも繋がっていくはずです。
難しいことでもありますが、頑張ります。

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