吹きたい音のイメージを持つことから始めてみる

先日、ホルンの卒業生がトランペットを始めたということで、一緒に練習する機会がありました。その中で、「もっとトランペットらしいパリッとした音で吹けるようになりたい」とのことで相談を受けました。
ちょっと吹いてみてもらうと、柔らかくてきれいな音なのですが、確かにどこかこもった感じの音がしていました。
そこで、吹いている姿と出てきた音を聴いて、次のようなアドバイスをしてみました。
・口をマウスピースに近づけていくのではなくて、自分は自然に前を向いたまま、マウスピースが口のところにやってくると思って構える
→どうしてもホルンを構えるとき下向きになる癖があるようで、トランペットを構えるときにも首がしまって苦しそうな印象がありました。
→このアドバイスをしたら、自然にリラックスした状態で見た目にもとてもきれいに構えるようになっていました。
・まず上唇をマウスピースに密着させて、下唇は自然に触れるくらいでいいやと思う
→下唇で全て支えているように見えたのと、低音が出にくそうな感じがしました。
→上唇をくっつけて、下顎を自由にしてあげることで、唇が自由に振動し始め、音の勢いが変わりました。
・息が下から上に向かって体の中を上昇していき、音になってからも流れが動き続けるようなイメージをもつ
→息を一生懸命吹き込もうとしていて、息が口元から漏れるくらい余っている感じがしました。
→息の流れを意識したことで、音の響き方が大きく変わりました。
初めはホルンとの吹奏感の違いで、どうやって息を送り込めばツボに当たるのか戸惑っている様子でしたが、今までのホルンの経験に加えて、頭の中に具体的な音のイメージがある分、上に書いたように少しアドバイスしただけで、みるみるうちに音色も音程感も響きも良くなっていきました。
数時間一緒に吹いていましたが、「どんな風に吹きたいか」というイメージがあれば、自分自身で工夫しながらどんどん上達していけるものなのだなと。
自分だけで行き詰まったら誰かの助けを借りることも時には必要だと思いますが、まずは能動的に探究する気持ちを持つことは大事なように思います。
そのためにも、生の演奏会を聴きに行ったり、ホンモノを追究されているプロ奏者のレッスンを受けてみたりして、「響く音」を知っておくこと、吹きたい音のイメージを明確にすることは改めて大切だなと思います。それだけでも、上達の度合いは大きく変わってくるような気がします。
面白かったのは「ホルンは音が手元にあるようで安心だけど、トランペットは音が遠くに飛んでいってしまって不安」と言っていたので、その言葉を利用して「大丈夫!もっと息の流れにのせて、どんどん音を遠くまで運んでいってしまおう!」と返したら、音がビーンと鳴るようになったことです。
一人ひとりがどんな音のイメージや吹いている感覚を持っているのかを把握するようにして、その人に合った方法を共に考えながら試してみることが、指導をする上でも大事なのだと思います。自分自身、つい一斉指導の場だと抽象的なことを言いがちなので、それを再考するきっかけをもらえた気がします。
何だか楽器を初めて持ったときのワクワク感と、だんだん吹けるようになっていく喜びみたいなのを一緒に味わうことができて、自分も楽器を吹くのがとても楽しかったなと。こういう楽しさがあるから、やめられない。初心に返って楽しませてもらいました。
Kさん、ありがとうございました!

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