長時間チューニング地獄から抜け出すには?

ここのところ、Twitter上でチューニングについていろいろな論議がされていたので、自分なりの考えを呟いていこうと思います。
私は小学校で金管バンド、中高で吹奏楽部、大学でオーケストラ部に所属していました。
小学校は今思うと恐ろしいのですが、チューニングを全くしないバンドだったので、チューニング管が抜けなくなることもしばしばでした。
中高の吹奏楽部は、いずれも一人ずつチューニングをして、その後パート、全体で合わせるという、吹奏楽の世界ではポピュラーな方法でチューニングをしていました。
中高でとにかく一人ずつB♭の音を出して「高い」「低い」と言われ続けてきた私にとって、大学でオーケストラに入ったとき、チューニングがAの音なのに慣れるのも時間がかかったし、セクションごとになんとなく合わせてすぐに合奏が始まる、というのも非常に新鮮でした。
でも、よくよく考えてみると、楽器によって、個人によって、音によって音程の癖はあるし、基準になる音を確認することはとても大切だけれど、一つの音ばかり一生懸命合わせていても、曲の中で出てくる音がすべて合うかと言えば、そうでもありません。
チューニングをすること自体に意味はあると思います。
でも、徹底的に長い時間をかけて1つの音を合わせにいくのには少々疑問を感じることもあります。
それよりも個々でやった方がいいことがあります。
それは、「自分の音程の癖を知る」ということです。
個人練の時に、曲を使って、ピッチの合いにくいところを、曲に出てくる音の順番でチューナーで音程を確認してみます。すると、「この音からこの音に飛ぶときに自分は高く(低く)なりやすい」という感覚がつかめてくると思うのです。これがつかめるようになってくると、『音程=音の幅の感覚』を身に付けることができます。
チューナーに合わせるのではなく、チューナーで出てくる音を確認する。
そして、自分の音程の癖を知り、気を付けて演奏する。

これだけのことを一人ひとりがやるだけでも、格段にバンド全体の音程は良くなると思います。
さらに大切なことは、合奏中『耳を使うこと』です。
『耳を使う』という表現はよく使われると思いますが、実際にはどう使っていいのか分からないケースも多いかもしれません。その時には、ぜひ「倍音を聴き取る」練習をしてみてください。
一番倍音が分かりやすいのは、クラリネット2人に下のFの音を吹いてもらって音程が合うと、五度上のCの音が聴こえてくるというものです。
一度、「鳴らしている音の五度上の倍音を聴き取る」ことができるようになると、合奏の中でも自然と倍音を聴き取る習慣が生まれます。
すると、音階練習であっても、曲の練習であっても、耳を使って、出てくる音を合わせていく力が自然と身に付いてくると思うのです。
一人ひとりチューニングをすることに全く意味がないとは思いませんが、「吹奏楽」という音楽形態は、大人数で合わせることに醍醐味があります。だからできれば、基礎合奏や曲の合奏を上手く使ってチューニングをしていければ一番いいような気がしています。
ハーモニーが合わないのは、音程の問題だけでなく、バランスの問題であることも多いと思います。指揮者はもちろんのこと、それぞれの和音がどのようなコードになっていて、どのようなバランスで吹けば良いのかを把握しているだけでも、気にならない程度には落ち着くはずです。
チューナー至上主義になってしまうと、たしかに物理的な音程はそろうかもしれないけれど、吹奏楽ならではの純正律の美しいハーモニーを失ってしまいかねません。個々の音程の癖を知るためのチューナーは便利だけど、最後は人間が音楽を奏でていることを忘れないようにしたいところです。
これからの時期、コンクールで審査で音程を注意されることが多いため、チューニング地獄に陥ることが増えてくるかと思います。でも、チューナーという機械に支配されることなく、音楽優先で、出てくる音を人の耳で合わせていく感覚をどのバンドにも養っていってほしいと思うし、日本の吹奏楽界全体が、そういう方向にシフトしていくことを心から願うばかりです。
<参考資料>
音程チェック表(Tp用)
→各音階で自分の音程をチェックするための譜面。
音程が高い場合には音符の横に↑を、低い場合は↓を書き入れて、自分の音程の癖を表にしていく。

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長時間チューニング地獄から抜け出すには?” への3件のコメント

  1. 長時間チューニング地獄から抜け出すには?② ~スケールチューニングの導入~

    以前も「長時間チューニング地獄から抜け出すには?」というタイトルでブログを書きました(http://rapparapa.at.webry.info/201404/article_17.html)が、今日はその続編です。

    • 1つの音でも倍音は聴こえますよ。特に聴こえやすいのがクラリネットのLow Fを二本で重ねたときです。

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