アーノルド・ジェイコブスはかく語りき④ 力は敵、弱さは味方

今日もアーノルド・ジェイコブスの本から、感想を書いていこうと思います。
「1-4 力は敵、弱さは味方」
どんな人にでも、金管演奏に必要な力は充分過ぎるほど備わっている。
しかし必要なのは「強さ」ではなく、「弱さ」なのだ。
陸上競技と同様に、金管楽器を効率よく吹くという点に関しては、「最小限度の動力」さえあればよい。
つまり、仕事に必要とされる数だけの筋繊維を使って望み通りの成果を挙げればよい。
楽にできることに力を使いすぎるのは無駄である。
必要もないのに力めば硬くなる。
殆どの金管プレイヤーは筋肉を、それも拮抗筋を使い過ぎるので、身体は硬くなり演奏の能力は落ち、緊張した力任せの音が出てしまう。
あまりに多くの筋肉に刺激を与えると生の粗雑な音が出てしまう。
硬い筋肉でもちゃんと演奏できるだろうが、不必要な力みがなければもっとうまく演奏できる。
「最小限の動力」で吹けば耐久力がつき、楽に吹け、演奏も洗練されたものになる。


確かに、がむしゃらに気合で音を出そうとしても、音は出る。
でも、その音は無我夢中で出しただけで、「音楽」が詰まった音ではない。
心のうちに熱いものを持ちながらも、演奏は常に冷静である必要がある。
昔、源三先生に「ラッパを吹くこととスキーは似ている」という話を伺ったことがある。
スキーの板というものは、力を抜くと坂の真下を向くようになっている。
カーブしたり、スピードアップしたりしたいときに、必要なだけ体重移動をすれば、楽に疲れずに滑ることができる。
その話を伺ってから、それまですぐに膝や太ももが痛くなっていたのが、とても楽に滑れるようになった。
ラッパを吹くことも同じで、アンブシュアを保つためや、楽器を支えるため、呼吸をするために加えなくてはいけない力もあるけれど、必要以上に不必要なところに力を加える必要はないわけだ。
しかし、気をつけなくてはいけないのは、「必要なところに必要なだけの力は使う」ということである。
アレクサンダーテクニークのレッスンでも言われたことだが、必要なところに必要なだけの力を使わないと、逆に不必要なところに力が入ってしまい、体に余計な負担をかけてしまうことになる。
かといって、不必要なところの力を抜こうとすると、「力を抜く」という意識から逆に力んでしまうこともあって、そこが難しいところ。
「必要なところに必要なだけの力を使う意識を持つけれど、それ以外のところは意識しない」

もしかしたらそれが「最小限の動力」で吹くことであり、楽に、音楽のことだけを考えて表現することにつながるのだと思う。
そうやって演奏できるように、自分の体の使い方を少しずつ覚えていきたい。

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