自然の中で学んできたこと ~五感を磨き、表現する力を育てる~

「センス・オブ・ワンダー」

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化学薬品による環境汚染にいち早く警鐘を鳴らした書として、いまも多くの人々に読み継がれている名著『沈黙の春』。その著者レイチェル・カーソンの遺作として、彼女の友人たちによって出版されたのが「センス・オブ・ワンダー」です。レイチェルが最も伝えたかったのは、すべての子どもが生まれながらに持っている「センス・オブ・ワンダー」、つまり「神秘さや不思議さに目を見はる感性」を、いつまでも失わないでほしいという願いだった。そのために必要なことは、「わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる」ことだといいます。(Amazon書評より)
この「センス・オブ・ワンダー」にもあるように、子どもの頃から本物と出会い、感性を磨くこと。好奇心を大切にして冒険すること。今週は学校行事で、自然体験プログラムに参加してきたのですが、自然保護も音楽も、何より生きる力も、そこからみなぎってくるものなのだと再認識させられました。
森林の中を散策したり、自然の中で生物採取をしたり、農業や漁業のお手伝いをしたり、様々な経験をし、たくさんの方からお話を伺いましたが、私が特に心に残ったのは、「ゆで蛙」の話です。
熱湯にいきなりぶちこまれたら、蛙は熱いと思って逃げ出すでしょう。でも、水からゆっくりあたためられていたら、知らぬ間に熱湯になっていて「ゆで蛙」になって死んでしまいます。私たちも最初から恵まれた環境に慣れて、大切なことに気づく感性を失ってしまっていないでしょうか。
例えば、仲間たちと吹奏楽ができることに感謝できているか。
まず、衣食住がそろっていて、生活に少しでもゆとりがなければ音楽をやる余裕などありません。さらに楽器があって、楽譜があって、一緒にやる仲間がいて、練習する場所があって、本番ができる機会がある。多くの吹奏楽部ではこれが当たり前になってしまっているけれど、中には部員が1人になって廃部寸前になってしまったり、体調を崩して部活を辞めなくてはいけなかったり…ということもありえるわけです。それでも、慣れてしまっている環境の中では、なかなかそうした大切なことに気づけなくなってしまうのも仕方のないことです。
でも、今やっていることに対して、何事も疑問に思ったら立ち止まって焦らずゆっくり考えてみることも大切だと思います。何でもすぐに「はいっ!」と答えてしまうのではなく、じっくり考えて分からなかったら聞いてみることも時には必要です。音楽でも何でも「必ずこうなる」という決まった答えはありません。だから、一人ひとりが感じたことを大切にしたいし、想いを持てなかったり、心の中に閉じ込めてしまうような雰囲気はつくりたくないと思うのです。
人の感じ方、考え方は人それぞれです。だからといって自分勝手ではいけないけれど、部活でももっと自由に感じたことを出していける雰囲気が大切なのかなと思います。音楽をぶち壊そうとして音楽をしている人はいないはずです。だからこそ、お互いの思いを出し合ってプラスの相乗効果を出していきたいと思うのです。
思っていること、感じていることを言葉で語ってもらうと、本当に感じ方が全然違うんだってことに改めて気づかされることがあります。だからこそ、表現の仕方にはいろいろあって面白いんだよなと思いつつ、なかなか表現の苦手な子どもたちも増えてきているような気もしています。その背景にあるものは、様々あると思いますが、なかなか難しいなと思っているところです。
「これを言ったら人にどう思われるだろう」「失敗したらどうしよう」
思春期の子どもたちに限らず、大人であっても少なからず感じることです。でも、それがネット文化の普及によって益々強くなってきているような気がします。ネット文化は便利だし、私もこうしてブログを通して自分の考えを発信しているわけですから悪いものだとは思いません。でも、それが現実の生活にまで影響を及ぼし、なかなか自分を出していったり、失敗をすることを極度に恐れる一因になっているとは思います。前にも書きましたが、やはり大人が失敗したり、泥臭く体を動かしたり、心から言いたいことを伝えようとしたりしていくことからしかはじめられないような気もしています。
この他にも、自然保護が大切なのは分かっていても、お金にならないし、自然体験が少ないが故に本当に何を守るべきか分からないから仕事にもならないというお話も聞きました。何事も体をくぐらせて体験して、心から楽しいと感じて、本気で好きだと思わなれば続きません。好きだという気持ちから全てが動き出すのかもしれないなと改めて思いました。
だからこそ、好きなものは好き、いいものはいい、と感じられる感性を自分自身も磨いて生きたいと思います。五感をはたらかせて、自然の中から、人との関わりの中から、想像力と創造力を育んでいきたいと思うのです。そして、それを音楽という形で表現できたら、それほど幸せなことはないなって、そんなことを思った今日この頃なのでした。
素直な心とは、私心なくくもりのない心というか、
一つのことにとらわれずに、物事をあるがままに見ようとする心
といえるでしょう。
そういう心からは、物事の実相をつかむ力も生まれてくるのではないかと思うのです。
松下幸之助

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