限られた時間でも上達することはできる!

毎日朝から晩までみっちり練習をしていることが問題になっている部活もあれば、活動日が制限されていて、なかなか練習時間を確保することができない部活もあります。

今日は、練習時間があまりない部活において、どのように練習を進めていったらよいのかを考えてみました。

 

いいものをつくるには時間がかかる…でも時間をかけたらいいものができるわけでもない

「職人」と呼ばれる人は、時間をかけて丁寧にモノづくりをしたり、自分自身の腕を磨いたりと日々努力されています。それだけ“ホンモノ”といわれるものを生み出していくには時間がかかるのだと思います。

勉強だって、英語を習い始めて1時間後に5000語以上の英単語をマスターして、大学入試レベルの長文が読める人はそうそういないはずです。

音楽も同じこと。楽器を始めた翌日に、協奏曲を演奏できるような天才音楽家はまずいません。どんなに才能のあるプレイヤーでも、人並みならぬ努力をして表舞台に出ています。

このように、何かをある程度できるようにするためには、時間がかかるものです。

ましてや、音楽に「完成された音楽」というものはありません。究極を言ってしまえば、音楽はどこまでも追求していけるものですし、より良いものを目指そうとしたら、それは一生かかる作業だともいえます。だからこそ時間があるに越したことはないわけですが、残念ながら人の命に限りがあるように、私たちが音楽に費やすことのできる時間も、本番までに与えられた時間も限られています。それだけに、ただやみくもに時間を使うのはもったいない話なのです。

また一方で、時間をかければ必ずしもいいものが生み出せるのかといえば、そうでもありません。毎日2時間練習をしていたとしても、意味も分からず言われたことだけを繰り返しているだけではできるようになることも限られてきますし、逆に毎日30分だけでも目的意識を持って練習していたら、発見することも得るものも多いかと思います。

勉強も、授業をぼーっとしながらノートをとるだけの6時間よりも、家に帰ってから集中して問題を解いた2時間の方が、成果が上がることもあります。

このように「どれだけ意識的に物事に向き合えるか」次第で、少ない時間でも結果に結びついていくことは大いにあることです。

いつも効率よく練習するのは難しいことでもありますが、子どもたちが練習している様子を見ていると、一生懸命やろうとしているのは伝わってくるのですが、まだまだ時間を無駄にしてしまっているところがたくさんあるように思うことがあります(もちろん責任は指導者にあるわけですが)。

例えば、セッティングの時間、移動時間、チューニングの時間、目的が明確でない練習 など…。もっと時間を意識的に使うことでやれることはたくさんあるように思います。

みなさんにも、せっかく頑張ってやっているのに、それが思うように成果に結びつかなくて、自分や周りのことを責めてしまったり、なかなか面白さを感じられなかったりする経験はないでしょうか。

もちろん練習は楽しいことばかりではないし、時にはちょっとキツいことにも取り組んでいく必要はあります。でも、少なくとも自分が頑張ったことがちょっとでも報われたなと感じられたり、楽器を演奏することや仲間と音楽をやることが楽しいなと感じられたりするような活動であってほしいと私は思っています。

そのためには、言われた通りにやるという受け身の姿勢を捨てて、自分で必要だと思うこと、やりたいと思うことを積極的にやっていく姿勢というものが必要になってきます。

でもそれは決して「自主練を増やせ」と言っているわけではありません。「自主練」とは、本来やりたい人が意欲的にやるはずのものです。

それが「やる気があるならやって当然」「できないところがあるならやれ」という風潮が強くなるあまり、「練習日以外に強制されてやる練習」に変わり、結果としてもっとやりたいと思う人の活動も制限しなくてはならなかったり、いつも部活が「やらされるもの」になってしまったりすると、全体のモチベーションが低下したり、雰囲気が悪くなったりする原因にもなります。

自主練は悪いことではありませんが、まずは本来の活動日である時間に、みんなが集まって、その時間だけでも集中して練習に打ち込むことができたならば、それだけでもできるようになることは今よりももっと増えるだろうなと思うし、決められた時間内でやれることを見つけるのも大切だと思います。
吹奏楽は集団でつくりだしていく音楽なだけに、一人ひとりが自分勝手では成り立ちません。でも一人ひとりの感じ方や考え方の違いがあるからこそ、表現に幅が生まれたりもします。

ただ規則や義務感で縛るのではなくて、一人ひとりが考えて行動する余白のようなゆとりをもった活動のあり方を考えられたらいいなと思うのです。

それは受け身でやることよりも面倒なことかもしれません。でも結果として、自分の時間を自分でコントロールする力を養うことは教育的にも意味のあることだと思います。

 

 

|どうやって練習を進めていけばいいのだろう?…「吹けない」にもいろんな要素がある!

私もたまに言ってしまいますが、生徒だけで練習を進めている時によく耳にするのが「○○ができていないので、気を付けてください」という指示です。

確かにできていないことに気付くことはとても大切なことですし、気づけることは素晴らしいことだと思います。でも、「できていない」ということが分かっても、それをどうすれば「できる」という状態にすることができるのかが分からなければ改善の余地がありません。

いつも話すことではありますが、誰もわざとタテをずらしたり、ピッチを合わせなかったりしているわけではないですよね?

合わせたいのに、できるようになりたいのに、なぜできないのか。

それには、いろいろな原因があります。それさえクリアすれば、できるようになることもある。そうやって考えてみれば、できない自分(相手)を責めることもなくなるでしょうし、やるべきことも見えてきて、早くできるようになることも増えると思いますし、その分練習ももっと楽しくやれると思います。では、どんな点に気を付けてみればいいのでしょうか。

① 譜読みはできているか?

まず、楽譜に書いてあるリズムや音、アーティキュレーションや強弱、拍子感などがつかめていないがために吹けないことはよくあることです。

私も譜読みは苦手なので偉そうなことは全然言えませんが、そんな譜読みが苦手な私からコツを一つ。それは、「音源を聴くこと」です。

音源の耳コピだけになってしまってはいけませんが、やっぱり知っている曲、耳になじんでいる曲というのは乗りやすいし、吹きやすいものです。それにいい演奏からは学ぶこともたくさんあります。

例えば、好きな歌手の曲は意識的に何度も聴くから自然に歌えるようになっていると思いますし、流行している歌なども、テレビなどで耳にするうちに自然に歌えるようになっていたということはありませんか?

まずは自分が演奏しようとする曲を知らなければ始まりません。なかなか時間を取るのは難しいかもしれませんし、上に書いたことと少し矛盾するかもしれませんが、自分がやる曲の音源は聴きこんだ方がいいかなと思います。

できれば聴きながら自分のパートを歌ってみると、曲の理解は早まると思います。今はスマホなどでも手軽に音楽を聴くことができる時代です。本当は譜面を見ながら聴くのが理想ですが、ちょっとした移動時間とか、スキマの時間に、BGMは自分が演奏する曲にして、繰り返し聴いてみるだけでも、曲の流れが体にしみこんできて、「よく知っている曲」として演奏できるようになると思います。


② 表現するために必要な技術が身に付いているか? とりあえず実践する!

譜読みを一通りして、目の前にある譜面をどのように演奏すればよいのかイメージすることができたとしても、それを実際やってみるのに必要なことは何か、特にそれを表現するために自分に不足している技術は何なのかを把握して、練習につなげていくのが次の段階です。

一番多いのは「指が回らない」「タンギングが追い付かない」ということのように思います。金管楽器であればそれに加えて「高い音が出ない」という要素も加わるかもしれません。

それぞれを改善していく方法はいろいろありますし、できたら専門家に教えてもらったり、実際に演奏しているのを聴いて(見て)頂いて、助言を頂くことが一番近道だと思います。

とりあえずここでは、「ヴェニスの謝肉祭」という曲の譜面の一部を使って、個人でどうやって練習を進めていけばよいのか、一例を書いておきたいと思います。

一見面倒に見えるかもしれませんが、ただ何となくインテンポで通してさらうのではなく、部分を区切りながら、完璧にできるテンポ設定からじっくり練習していくことが「急がば回れ」で上手くいくことはたくさんあります。

いろいろ悩んだら、まずはやってみることなのかなと思います。
その中で、自分がやりたいことをやるために何をすればよいか、自分で選択して試してみること。その試行錯誤の過程を積み重ねていくことが、結果として時間を上手に使っていくことにもつながる気がします。

それでできるようになったことがあったら嬉しいだろうし、「もっとやりたい」という気持ちも生まれてくるような気がします。

時間をどうつかっていくかは永遠の課題かもしれませんが、少なくとも時間をかけなければできないところと、無駄な時間のメリハリをつけて、ダラダラと練習を続けないですむ方法を考えていきたいものです。

(部内通信を一部改変)

 

 

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限られた時間でも上達することはできる!” への2件のコメント

  1. ピンバック: 練習時間に合わせたやり方を考える | とあるラッパ吹きのつぶやき

  2. ピンバック: 学習と部活に求められる力の共通性とは? | とあるラッパ吹きのつぶやき

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