顎が自由に動けると、演奏が楽になる!

昔から、少し長いフレーズを吹き続けていると、息が詰まって唇の横から空気が漏れ出す現象に悩まされてきました。一度マウスピースから唇を離すと普通に直るので、そこに注目して観察していたら、吹いていると顎が固まって、上下の歯を食いしばる感じになっていくのが原因かも、と最近感じています。

トランペットのレッスンでは、「もっと顎を動かして大丈夫」ということを先生によく言われます。これを意識して練習を続けていったところ、だいぶバテの問題も解消されてきましたし、以前よりも柔軟性も音域も広がったように思います。

今日は、今自分が顎やマウスピースの当て方について感じていることを、備忘録代わりにつぶやいていきたいと思います。

 

歯並びがきっかけでできあがった習慣

私の歯並びは、下の写真のように上の歯がほぼ完全に下の歯を覆っているような状態です。

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このままマウスピースをあてると、必然的にベルは下を向きます。しかし、鼓笛隊出身で「ベルを上げろ」と言われてきたことや、「マウスピースは真ん中に当てるのが良い」と教えられてきたこともあって、下顎を前に突き出して、上下の歯をそろえることで、自分の歯並びをカバーしたセッティングをするようになりました。

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また、小学生・中学生の頃はずっと吹いていると上の前歯ががたつくように感じるくらいの強いプレスをして吹いていたので、知らず知らずのうちに上の歯をかばうような吹き方になっていた気がします。

そのためか、長い間吹いていると、ちょうど下唇の下側のあたりがヒリヒリと痛くなるほど、下唇にウェイトをかけて吹く習慣ができていました。そして、それまで順調に鳴っていたとしても、突然「プスっ」といって全く音が出なくなる経験をたくさんしてきて、「自分はスタミナがないな。もっと鍛えなきゃ」という思考で練習を重ねてきました。

しかし、具体的にどうすればいいかというプランはなかったので、ひたすらリップスラーをやってみるとか、バテテも吹き続けてみるなど、「筋肉壊し」のような練習をしていたため、稀に調子が良い時があったとしても長くは続かず、自分はこのままスタミナのない奏者として一生を過ごすのかなとだんだんと悲観的に思うようになりました。

 

上唇がぺったりくっついていて、顎は自由に動ける

そこで出会ったのが、荻原先生のレッスンで教えていただいた「まず上唇が貼りついていること。下唇は固定しなくていい。顎はもっと自由に動ける」というアドバイスでした。

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《参考記事》
バテずに吹き続けるために 2(マウスピース位置探しの旅)
http://trp-presto.jugem.jp/?search=%BE%E5%BF%B0

 

初めは頭で理解できても体が言うことを聞いてくれなかったのですが、それをずっと意識して練習しているうちに、少しずつ感覚がつかめるようになってきました。

それまでいろいろな人に言われてきた「アンブシュアをつくる」「口の周りを動かさない」という言葉が、知らず知らずのうちに「顎を固定する」という行動につながっていったのかもしれません。

顎も自由に動くことができる、息も自然に流れていく、息が流れれば唇も振動してくれるということを意識して吹いてみると、状況は少しずつ改善していきました。それに加えて、吹く前にこれから吹こうとするフレーズを頭の中でじっくり歌ってみるようにすると、無駄な動きが減って割と楽に吹けるようになってきました。

バテの問題だけではありません。下顎を解放してあげて、いつでも動けるようにしよう、としただけで音域は上にも下にも広がるし、タンギングもしやすくなるで、目からウロコでした。

身体がどう動けるのか、自分の身体の可動域を知った上で、「動ける」可能性も「動かさない」可能性もあるんだと思って、奏でたい音をイメージして、自分自身に自由に身体を使ってもらう。固まっていたら動ける可能性を教えてあげる。そんな感じで、決められた型にはまらずに奏でられたらなと思う出来事でした。

まだまだ自分は顎を固めてしまう習慣から抜け切れていないので、最近は楽器を吹く前に、ホルン奏者でアレクサンダー・テクニークを学ばれている手塚由美さんのブログ記事を読んで知ったエクササイズをするようにしています。だいぶ効果があるので、試してみてもいいかもしれませんよ。

《参考記事》
顎関節をゆるめたい
http://ameblo.jp/yhr-764-yumi/entry-12203708416.html

 

 

アンブシュアタイプとの関連性

昨年バジル先生が、David Wilken氏のウェブサイトにある「The Three Basic Brass Embouchure Types」という記事を翻訳されました。

《参考記事》
金管楽器の3つの基本アンブシュアタイプ
http://basilkritzer.jp/archives/4855.html

その後自分でも探究してみたり、バジル先生にレッスンでみて頂いたりする中で、自分は恐らく「中高位置タイプ」ではないかという結論に今のところ落ち着いています。

《参考動画》
リップスラーを吹いてみた時のアンブシュア

というのも、あまりも「真ん中で」というのを意識したせいか、もともとなのかは分かりませんが、下の写真のように私はほぼ「上唇:下唇=1:1」の割合である上に、息の流れる方向も若干下ではあるのですが、ほぼ水平に出るので、「低位置タイプ」と見分けがつきにくいということがあったのです。

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実は自分自身はずっといわゆる「低位置タイプ」だと思ってきました。もちろん昔からこのタイプ分けを知っていたわけではありませんが、マウスピースを当てたとき、外から見ると若干下唇の割合の方が多いように見えていましたし、それでアンブシュアを固定して吹くのがいいことだと思ってきたからです。今思うと、知らず知らずのうちに「低位置タイプ」のような吹き方になって、自分の本来のタイプと異なるアプローチで練習を重ねてきたように思います。

私の勝手な解釈で間違っているかもしれませんが、「中高位置タイプ」は息の流れる向きが下向き、つまり上唇が若干下唇よりも上に被さっているのだと思います。逆に「低位置タイプ」は息の流れる向きが上向き、つまり下唇が若干上唇よりも上に被さっていると考えられます。私は「中高位置タイプ」なのに、下唇を支点にしていたために、息の流れを阻害する方向にプレスをかけていたのかもしれないなと思いました。
「低位置タイプ」の支点が下唇であると言っているわけではありません。念のため。

とにかく自分の場合、「中高位置タイプ」だと認識することで、「上唇に貼りつく」というイメージがより具体的になりましたし、このタイプに多い「柔軟性がある」という特徴も、顎が自由に動けるようになることで、発揮できるようになってきた気がしています。もともと跳躍やスラーの練習は嫌いでもなかったし、そこまで苦手意識はなかったので、恐らく「中高位置タイプ」であったのに「低位置タイプ」の練習法を導入してしまっていたのかなと思ったりもします。

この3つのアンブシュアタイプについては、いろいろなご意見がある方もいらっしゃるかとは思いますが、少なくとも自分はこの考え方を知ったことで、今まで教えていただいてきたことがつながり始めて、だいぶ吹くのが楽になったし、練習すると吹けるようになる実感もあるので、楽器を吹くことが今までよりももっと楽しくなってきています。本当に感謝です。

 

まとめ

自分が今習慣としてやっていることは、どこかで聞いた言葉を自分の思い込みで解釈して築かれていったことも多いのかもしれないなと思います。

顎については、これまで顎をどれだけ固めてきたのかというくらい、緩めたことできるようになったことが増えてビックリしています。確かに音色もちゃんとツボに当たるようになるし、余計な力を使わないからバテにくくなっています。

このように、体の可動域を知っていると、体の使い方が自然に変わってくるような気もしています。もちろん演奏中に「どこどこの筋肉を動かして」とか「ここはこんな骨があるから」などと考えることは難しいと思いますし、それならもっと出てくる音楽のことを考えた方がいいと思いますが、基本的な奏法のアプローチをする時には、自分の体がどうなっていて、どのくらい動くことができるのか、どのような動きが可能なのかをしっていることで、使える動作も広がるし、その分技術的にもできるようになることが増える気がしています。

アンブシュアについても、「上唇:下唇=1:1」がいいとか、トランペットは「上唇:下唇=1:2」でホルンは「上唇:下唇=2:1」がいいとか、いろいろな話がありますが、どんなアンブシュアであっても、その人が吹きやすく、かつ技術的に困難ではない状態で吹ければいいはずですし、必ずしも「こうでなければいけない」ということはないと思います。むしろ、この3つのアンブシュアタイプを知った上で、自分の特徴を理解しながら、出てくる音に集中して練習していけたら、その人の持ち味を生かした演奏ができるような気もします。

これからも、自分の体と上手く付き合いながら、楽しくラッパを吹いていけるように練習を重ねていきたいと思います。

 

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